災害時に捜索・救助活動をおこなう災害救助犬には、警察犬とくらべると訓練環境などに課題があることを、以前お伝えしました(記事は、こちらからご覧になれます)。
筆者は警察犬と聞くと、ジャーマン・シェパードを思い浮かべるのですが、今回警察犬の犬種について調べたところ、さまざまな犬種があることがわかりました。
さらに、一般家庭で飼っている愛犬にも警察犬になるチャンスがあることを知ったのです。
意外にも身近な存在の警察犬、その犬種と種類について、ぜひ一緒に学んでみませんか。
警察犬指定犬種は7種類だが限定されるわけではない
では早速、どのような犬種が警察犬になっているのか見てみましょう。
警察犬にふさわしい7つの犬種
警察犬の普及啓発などに取り組んでいる公的機関として、公益社団法人日本警察犬協会(以下、日本警察犬協会)があります。日本警察犬協会では、次の7つの犬種を「警察犬指定犬種」としています。
◆日本警察犬協会の「警察犬指定犬種」
1.エアデール・テリア
2.ボクサー
3.コリー
4.ドーベルマン
5.ゴールデン・リトリーバー
6.ラブラドール・リトリーバー
7.ドイツ・シェパード
お馴染みの犬種もあれば、「この犬種でも警察犬になれるの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。また、大型犬だけではなくコリーのように中型犬もいるようです。
しかし、警察犬はこれら7つの犬種に限らないといいます。
警察犬にはトイプードルもいる
茨城県警察のホームページには、警察犬としてイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルやトイプードルが紹介されています。これらの警察犬は、茨城県警察における「令和4年の嘱託警察犬(足跡追及犬)」です。
この「嘱託警察犬」というのが、警察犬の犬種を知るうえでポイントになります。
そこで次に、この嘱託警察犬とは何かをふくめ、警察犬の2つのタイプについて解説しましょう
警察犬は「直轄警察犬」と「嘱託警察犬」に分けられる
警察犬は、次の2つに分けられます。
直轄(ちょっかつ)警察犬:警察が飼育訓練している犬
一つ目は、各都道府県の警察で飼育訓練されている警察犬であり「直轄警察犬」といいます。
災害救助犬の課題の一つに訓練する場所が整っていないことがあります。この背景として、災害救助犬の多くが民間団体に属しており、訓練する人材や資金面が十分に確保できないことがあげられています。
一方で、直轄警察犬は各警察に属して警察官が飼育訓練しており、いつでも捜査活動に参加できるようになっています。
嘱託(しょくたく)警察犬:一般の人が飼育管理している犬
警察犬2つ目のタイプとして「嘱託警察犬」がいます。
嘱託警察犬とは、ふだんは一般家庭や民間の訓練所で飼育訓練されており、要請に応じて警察犬として活動している犬のことです。たとえば、青森県警察では44頭(令和4年度)が嘱託されています。
一般家庭で飼っている犬が警察犬になれる可能性として、この「嘱託警察犬」になる方法があるのです。
嘱託警察犬になるには審査会に合格すること
嘱託警察犬になるためには、各警察が実施する審査会(年1回)に合格しなければなりません。
警察によっては犬種を限定していたり、所定の訓練を受けていることを条件にしている場合もあります。ご興味のある方は各警察に問い合わせる、または「○○県 嘱託警察犬」などと検索するとよいでしょう。
嘱託警察犬だけの競技会がある
日本警察犬協会では「全日本嘱託警察犬競技大会」を開催しています。各地区の予選を勝ちあがってきた嘱託警察犬たちが、足跡(そくせき)追求と臭気(しゅうき)選別の2科目を競い合います。
自分の愛犬が嘱託警察犬になることを目標としている方は、次のステップとして、このような競技会があることも頭に入れておくとよいですね。
ここまで、警察犬の犬種と、警察犬には直轄警察犬と嘱託警察犬があることをお伝えしました。
次に、警察犬にはどのような能力がもとめられるのか、そしてその活動現場について、ご紹介します。
警察犬にもとめられる能力は服従から臭気選別までさまざま
犬には人間の3,000倍から10,000倍の臭覚があるといわれていますが、警察犬にはそれだけでなく、さまざまな能力がもとめられます。
その能力ごとに各訓練・競技会などがおこなわれ、いざというときにそなえています。
服従(警戒)
服従は警察犬にかぎらずペットとして飼われる犬にも大切であり、指導者(飼い主)の指示にしたがった動きをする能力です。
「おすわり」や「待て」といった日常的なものから、障害物の乗り越えや動作の休止など、幅広い内容がもとめられます。また、隠れている犯人の発見や襲ってくる犯人を想定して襲撃させるといったこともあります。
足跡追及・臭気選別
犯人や行方不明者の捜索活動に必要な能力に足跡追及があります。警察犬は臭いを手がかりとして、対象者がどのルートをとおって移動し、どこにいるのか捜索します。
また、移動経路で対象者が何か落としたときを想定し、それを適切に見つけ出す能力ももとめられます。
警視庁のホームページには「警察犬が一人前になるまで」として、訓練の概要が写真と動画で紹介されています。また同じく「警察犬の一日」でも、6時の起床から21時に就寝するまでの流れを見ることができます。ご興味のある方は、ぜひチェックしてみてはいかがでしょう。
警察犬が行方不明になった人を見つけ出す
警察犬が活躍するのは、犯罪捜査だけではありません。行方不明になってしまった高齢者や子どもの捜索活動でも活躍しています。
先述の嘱託警察犬は、ふだん一般の家庭で飼育され、要請に応じて活動をおこないます。活動現場によっては、直轄警察犬より嘱託警察犬のいる場所のほうが近いこともあるでしょう。言うまでもなく、行方不明者を発見するためには、一刻も早い捜索活動がもとめられます。
大型犬を飼う人が以前より少なくなっていることもあり、嘱託警察犬として中型犬・小型犬が活躍するケースがでています。警察犬に興味のある方は、ぜひ各警察に問い合わせ、警察犬への一歩をふみだしてはいかがでしょう。
【参考文献】
公益社団法人 日本警察犬協会
(以上)