児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」は、児童相談所につながる緊急ダイヤルです。増加する児童虐待への対応としてスタートしました。
今回は、虐待とはどんな行為か確認しながら、児童相談所虐待対応ダイヤル「189番」はどんなときにかけて良いのか、また児童相談所に相談できる内容についてお伝えします。
虐待は体だけでなく心への暴力もふくまれる
はじめに、虐待について確認しましょう。(すぐに「189番」について知りたい方は、こちらからご覧ください)
虐待と聞くと、顔など体を傷つける行為を思い浮かべる方も多いかもしれません。ですが、虐待はそればかりではありません。
児童虐待4つのパターン~虐待は見つけにくいものもある
児童虐待防止法では、虐待を次の4種類に分類しています。
◆児童虐待の種類
➀身体的虐待
叩く、蹴る、タバコの火を体に押し付ける、熱湯や冷水をあびせる、など
➁心理的虐待
子どもを言葉や凶器で脅す、自尊心を傷つける言葉をくり返す、DVを見せる、など
③ネグレクト
衣服や体を不潔な状態のままにする、適切に食事を与えない、受診の必要があるのに病院へ連れて行かない、など
④性的虐待
性的行為を強要したり見せる、性器を触らせる、性的な目的で写真を撮る、など
虐待されていることがパッと見てわかりそうなものから、傍目にはまったくわからないものもあります。たとえば、身体的虐待であっても、傷が顔にあれば目立ちますが、洋服で隠れている部分のものは見つけにくいでしょう。
心を傷つける行為(心理的虐待)がもっとも多い
さらに、心理的虐待も周囲からはわかりにくいパターンだといえます。しかし、厚生労働省によると、令和3年度に児童相談所が対応したケースのなかで、もっとも多かったのは心理的虐待となっています。
◆令和3年度に児童相談所で対応した種類別虐待相談
厚生労働省「令和3年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数(速報値)4頁」より
・心理的虐待(60.1%)
・身体的虐待(23.7%)
・ネグレクト(15.1%)
・性的虐待 (1.1%)
これには、心理的虐待には子どもがDV(ドメスティック・バイオレンス)を目撃することが含まれることも、関係しているのかもしれません。実際に、令和3年度に児童相談所によせられた虐待相談のうち、約半数(49.7%)が「警察等」からともっとも多くなっています。(参考)厚生労働省「令和3年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数(速報値)5頁」
ここまで、虐待について確認してきました。次に児童相談所虐待対応ダイヤル「189番」についてみていきましょう。
189番は「虐待かわからないけど気になる」でもかけていい
児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」は文字通り、児童相談所が虐待に対応するためにあります。しかし、『虐待かハッキリはわからない』や『何となく気になる子どもがいる』という段階でも、電話をかけて良い番号です。
たとえば、「子どもが家の外でずっと泣いている」「小さい子どもだけで留守番しているようだ」のように、周囲が客観的に感じる『なんか気になる様子』は、子どもからのSOSかもしれないのです。
189番は「虐待してしまいそう」な人がかけてもいい
児童相談所虐待対応ダイヤル「189番」は、虐待を通報するためだけの番号ではありません。子育て中の方が「虐待してしまいそう・・」「自分では虐待をとめられない・・」といった状況で電話をかけてもいいのです。
児童相談所は子育ての総合的な相談窓口~相談専用ダイヤルがある
児童相談所は18歳未満の子どもについて、市町村や保育所・幼稚園・学校などあらゆる機関と連携しながら、業務をすすめています。
児童相談所が対応する相談内容は幅広く、次のようになっています。
◆児童相談所で対応する相談内容
・養護(虐待、保護者の家出・死亡・入院、迷子など)
・障害(視聴覚、知的、自閉症など)
・非行(家出、乱暴、飲酒、喫煙など)
・保健(未熟児、虚弱児、小児喘息など)
・性格行動(落ち着きがない、友だちと遊べない、家庭内暴力など)
・不登校(学校・幼稚園・保育所の在籍児)
・適正(就学適正、学業不振など)
・育児・しつけ(家庭内の幼児のしつけ、遊びなど)
・その他
(参考)厚生労働省「児童相談所の運営指針について:図表」表-2 受け付ける相談の種類及び主な内容
そして、児童相談所には子育ての悩みを相談できる専用ダイヤルもあります。
◆児童相談所 相談専用ダイヤル
「0120-189(いちはやく)-783(おなやみを) 」通話料無料
虐待とまではいかなくとも、子育てで悩んでいる方がいたときには、児童相談所に相談できることを教えてあげるとよいでしょう。
児童相談所虐待対応ダイヤル「189番」にかけるとどうなる?
では、実際「189番」へ電話をかけると、どのような流れになるのかみてみましょう。
下のフローのとおり、「189番」は最寄りの児童相談所につながり、直接担当者と話をすることができます。
携帯電話・スマホから「189番」へ電話をした場合
固定電話からかけた場合は、➀のあと直接③、または電話のボタン操作(アナウンスに従って1番か2番を押す)によって③につながります。
緊急時には110番でもよい
このように「189番」は直接、児童相談所の担当者に虐待を知らせることができる反面、自動音声対応など一定の時間を要します。
そのため、緊急性が高い状況を目撃したときには、189番ではなく110番でも良いのです。たとえば、子どもが暴力を受けているのを目の当たりにしたり、夜遅くに一人で歩いているといった場合には、一刻も早い対応が求められるでしょう。
もちろん警察も、児童相談所や市町村など、子どもを守る関係機関と連携しているので、安心して通報しましょう。
たたかれていい子どもはいない~子どもがもつ4つの権利
2016年(平成28年)に改正された児童福祉法では、子どもの権利がハッキリと示されました。
◆子供が持っている4つの権利
厚生労働省「たたかれていいこどもなんていないんだよ」より
1. たたかれたり、ひどいことを言われない
2. 元気に・健康に毎日をすごして成長する
3. 保護者の人から育てられる・守ってもらえる
4. 自分の意見を言う・話を聞いてもらえる
2020年(令和2年)4月1日から2021年(令和3年)3月31日までに、虐待で亡くなった子どもの数は77人、5日に1人の割合で亡くなっていることになります。
子どもは大人から守られるべき存在です。その大人とは家族だけでなく、子どもがいる地域にいる大人たちも含まれるでしょう。
「虐待している(虐待かもしれない)」という通報は、子どもの命を守るスタートラインになるかもしれません。決して迷うことなく、児童相談所虐待対応ダイヤル「189番」に電話をしましょう。
【参考文献】
(以上)