天気に関する警報・注意報は耳にする機会も多いでしょう。最近は「電力需給ひっ迫警報」「電力需給ひっ迫注意報」など、「電力」に関する警報・注意報も存在します。電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報はなぜ誕生か、発令基準や発令された場合に私たちは何をするべきなのかを理解しておくと、耳慣れない警報・注意報が発令されたときも安心です。
今回は、電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報に関する情報をまとめました!節電のヒントも後半で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報の誕生経緯
電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報は、名前からもわかる通り、電力需給に関する注意報・警報です。ひっ迫とは「さしせまること」、つまり電力需給が困難になった場合に発令されるものだと説明できます。
そんな電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報は、昔からあったものではありません。誕生のきっかけは、2011年の東日本大震災でした。
東日本大震災後に誕生した注意報・警報
記憶に強く残る大災害となった東日本大震災。2011年の発災後は、電力危機による電力需給バランスの乱れが起こる可能性も危惧されました。電力需給バランスが崩れてしまうと、大規模停電が起こる、計画停電を強いられるなど、私たちの生活に大きな影響を及ぼします。
こうしたトラブルを未然に防ぐことを目的としたのが、電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報です。電力需給の見通しなどを踏まえ、事前に節電に協力するよう呼びかけを行います。
「電力需給ひっ迫」の意味
電力の需給が難しくなってしまう「電力需給ひっ迫」が起こると、大規模停電のリスクが高まります。では、こうした事態が起こる前にさまざまな方法で電力を貯めておけばよいと思われるかもしれませんが、電気エネルギーを大量に貯めておくことはできません。安定した品質を保つには、需要と供給を同じにする必要があります。
需要と供給のバランスは電力会社が予測し、適切な量を供給するよう調整していますが、このバランスが崩れてしまうと、安定した電力を送ることが困難になり、大規模停電の可能性が高まるのです。
初の発令は2022年3月
2012年から運用を開始した電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報ですが、実際に発令されたのは、2022年3月。およそ10年間、1度も発令されなかったことになります。とはいえ、電力需給がこの10年滞りなく行われていたというわけではありません。
2018年9月には地震の影響により、北海道全域で大規模停電が起こりました。複数の発電所が停止したことで、需要と供給のバランスが崩れて起こった大規模停電ですが、この際、電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報は発令されていません。
2022年3月に初めて電力需給ひっ迫警報が発令された理由も、地震の影響によります。火力発電停止、3月に見合わない寒さなどが原因で電気の需要と供給のバランスが崩れ、大規模停電のリスクが高まったようです。
電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報の発令基準
大規模停電のリスク回避のために、電力需給のバランスが崩れそうな場合に、資源エネルギー庁より発令される電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報。具体的にはどういった基準で発令されるのでしょうか。
電力需給ひっ迫警報の発令基準
電力需給ひっ迫警報は、電力供給予備率が3%以下の見込みになった場合に発令されます。発令時期は、見込み予想の前日16時頃。さらにその前日18時頃には、経済産業省エネルギー庁のホームページなどで、「電力需給ひっ迫情報」を公表するそうです。
電力需給ひっ迫注意報の発令基準
電力需給ひっ迫注意報は、電力需給予備率5%以下の見込みの場合に発令されます。発令時期は警報と同じく前日の16時頃。電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報ともに、電力需給ひっ迫の心配なしと判断され次第、解除となります。
ちなみに、電力需給ひっ迫注意報から電力需給ひっ迫警報へと切り替わっても、電力需給予備率に改善が見られない場合にはどうなるのでしょうか。予備率が1%以下になってしまうと、対象エリアでは計画停電が実施されます。計画停電の前には、対象エリアに居住する方々の持つ携帯電話・スマートフォンに緊急速報メールで計画停電の旨が通達される仕組みです。
東日本大震災の際は、福島にある原子力発電所の事故による影響で、1と8県でグループごとに計画停電が実施されました。計画停電は2011年3月14日~28日まで行われ、指定時間ごとに停電。筆者は当時東京都に住んでおり、計画停電の対象エリアとされていましたが、結局計画停電を経験することはありませんでした。理由は定かではありませんが、当時、駅から徒歩3分の場所に住んでいたことが、計画停電の対象から外れた理由だったと聞いています。
電力需給ひっ迫警報・注意報発令時の行動
電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報が発令されることがわかったら、私たちはどういった行動を取ればよいのでしょうか。3段階に分けて解説します。
対象エリアの確認
ニュースなどで電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報が行われることを知ったら、まずはどのエリアが対象となっているのかを確認しましょう。対象エリアは都道府県ごとではなく、電力供給エリアによって指定されます。供給エリアは以下の通りです。
・北海道電力エリア
・東北電力エリア
・東京電力エリア
・中部電力エリア
・北陸電力エリア
・関西電力エリア
・中国電力エリア
・四国電力エリア
・九州電力エリア
・沖縄電力エリア
対象エリアもニュースで知れるほか、経済産業省や首相官邸のホームページ、SNSなどでも確認できます。
電力需給状況の把握
対象エリアに該当する場合は、電力需給ひっ迫の見込みがどれくらいなのかも知っておきましょう。需給状況は「でんき予報」「電力需給のお知らせ」などのページで確認できます。これは、一般送配電事業者が提供しているWebサイトです。以下リンクより、対象エリアの電力需給状況をご確認ください。
電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報発令時以外にも、日常的な電力需給状況を見ることができます。
節電の実施
発令時は、節電への協力が必要です。1人ひとりのちょっとした意識で、電力需給予備率は改善します。夏や冬は、電力を多く消費するエアコンをつけないことが、最も大きな節電になるのでおすすめです。このほか、すぐに実践できる節電方法については次の章でご紹介します。
具体的な電力節約方法
電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報発令時の節電といっても、具体的にどういった行動を取ればよいのかわからない、という方もいらっしゃるでしょう。節電は徹底的にやるとなると大変ですが、日常的なちょっとした意識でも、電力供給予備率の回復に貢献できます。
簡単にできる節電の方法は、大きく4つです。
冷蔵庫の節電
冷蔵庫には常温では保存できないものや冷凍保存が求められるものも多く入っているので、電源を切ることはできません。しかし、大きくて多機能であるほど、節電に向けた設定が可能です。1人暮らし用の冷蔵庫など、細かな設定ができない場合も、ちょっとした工夫で節電ができます。
・設定は「強」でなく「中」に
・入れるものは容量の7割程度のとどめる
・ドアの開閉時間を短縮する
・何度も開け閉めしない
・冷蔵庫の上にはものを置かない
・放熱のために壁にぴったりつけず、適度な隙間を作る
・庫内のカーテンなどをつける
・冷気の吹き出し口をふさがない
エアコンの節電
エアコンは「つけない」ことが最大の節電につながります。冬は寒ければ着こむことでしのげますが、夏場はあまりの暑さのなかで我慢をしていると、熱中症などのリスクが高まり危険です。電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報発令時にもやむを得ずエアコンをつける場合には、次の点を意識しましょう。
・冷房の温度は28度を目安に
・電源のオン・オフを繰り返さない
・カーテンやすだれを活用し、外からの日差しや熱を遮断する
・フィルターをこまめに掃除する(2週間に1回が理想)
・室外機は風通しのよい場所に置き、日よけなどで熱くならないようにする
・なるべく1部屋に集まり、使用台数を減らす
照明器具やトイレの節電
大きな家電は電力も多く使用するため、工夫による節電効果が高いことがわかります。このほか、照明器具やトイレなどでもちょっとした意識で節電ができるので、覚えておきましょう。
・不要な照明は消す
・LEDライトを使用する
・温水洗浄便座は水温を下げる、オフにする
・節電モードがある場合は活用する
・便座の温度も下げる、オフにする
・使用しないときにはコンセントを抜く
待機電力の削減も
待機電力とは、コンセントにプラグを差しっぱなしにしておくだけで発生する電力です。たとえばスマートフォンの充電器などを、充電しないときにもコンセントにさしておくと、それだけで微量ながら電力を消費します。
1つひとつは微々たる待機電力ですが、蓄積により家庭の消費電力のおよそ5%を占めるといわれているため、侮れません。これは1カ月の電気代を10,000円とした場合、1カ月500円、1年間で6,000円が待機電力にかかる計算です。
待機電力は、本体の主電源から切ること、使わないプラグはコンセントから抜くことで削減できます。昨今はコンセントを抜かなくても、スイッチ1つで節電できるたこ足配線が人気です。抜き差しの手間を省き、節電に貢献できるこうした商品も、ぜひ活用してみてください。
日常的な節電で、電力需給ひっ迫を防ごう
電力需給ひっ迫警報・電力需給ひっ迫注意報は、電力供給予備率がそれぞれ3%、5%を下回ることが予想された場合に発令されるものです。1%を下回ると計画停電が実施されるので、電力供給予備率の回復のためにも、発令がわかったら積極的な節電が求められます。
電力需給がひっ迫してからの節電はもちろん必要ですが、日ごろから節電を心掛けることは、二酸化炭素削減など、環境改善によい影響をもたらすのでぜひ実践したいところです。自宅の電気代を安くすることにもつながるので、ご自身のため、そして私たちが住む地球のためにも、日常的に節電を意識しましょう。