2023年6月、コロナが第5類に移行して1ヵ月ほどが経過し、徐々に当たり前にあった日常が取り戻されています。しかし感染症の種類はさまざまで、季節外れのインフルエンザが流行したり、下痢や嘔吐などの症状が多くの方に見られたりといったことも、身の回りで起こっています。
これからの時期は例年、子どもたちのあいだで「RSウイルス」が流行することをご存じでしょうか。
筆者も友人のお子さんが感染したことがあり名前は聞いていたものの、実際に子どもがかかったのは昨年が初めてで、保育園に登園するまでに長い時間を要しました。今年は今のところ大丈夫そうですが、既に友人家族が感染したとの連絡もありますし、これから徐々に広まっていくことが予想されるので油断はできません。
今回は、RSウイルスの症状や予防法、感染時の対処法を解説します。また、昨年次男がRSウイルスに感染した際の体験談も最後に記載していますので、症状が続く期間などを判断する目安になれば幸いです。
RSウイルスとは「乳幼児を中心に流行しやすい病気」
「RSウイルス」という言葉は、子どものいない家庭ではあまり馴染みがないかもしれません。RSウイルスは小さな子どもを中心に流行しやすい病気です。感染経路や症状などを解説します。
RSウイルスの感染経路
RSウイルスは、飛沫感染や濃厚接触、間接的な接触感染により、すでにRSウイルスにかかっている人からうつります。どれも新型コロナウイルスと似たような感染経路なので、ご存じの方も多いかもしれませんが、飛沫感染とはくしゃみや咳、会話時などに飛び散る唾液のことです。接触感染はウイルスがついたものや手指を触る、なめるなど、濃厚接触は感染者と同じ空間に長時間いることなどを指します。
RSウイルスが空気感染するといった報告はこれまでなく、ウイルスのついた人やものに接触することが、感染源となっていることがわかりますね。
RSウイルスの流行時期
これまでは毎年9月頃から初春まで、特に冬のあいだに流行する病気とされていましたが、2011年以降は7月頃から感染者が増加することが多い傾向です。感染力が強く、保育園や幼稚園などでの施設内感染も多く報告されています。
RSウイルスの診断方法
インフルエンザなどの検査と同様に、鼻に細い綿棒を入れて行う検査キットが主流です。RSウイルスにかかりやすい乳幼児は、まだうまく言葉を発することもできず、症状だけでどのような病気か判断するのは難しいことも多くあります。
この診断方法は鼻の奥の方まで綿棒を入れるので子どもが泣いてしまうことも。しかし、すぐに検査結果が出て医師の説明を聞くことができ、有効な対処法を教えてもらうことができるので、保護者の方の安心にもつながります。
RSウイルスの主な症状
RSウイルスの主な症状は咳や鼻水、発熱などで、ほぼ風邪と同じです。多くは1~2週間ほどで回復しますが、症状が酷いと気管支炎を発症したり、咳のしすぎで嘔吐したりするほか、中耳炎を合併することもあり、入院が必要なことも。
肺炎や無呼吸などの症状を起こすと命に関わる危険もあるため注意が必要です。
繰り返しかかり、大人も感染するため注意!
RSウイルスは一度かかったらもうかからない、ということはありません。ウイルスに感染すれば何度でも繰り返しかかりますし、乳幼児の頃にかかったとしても大人になってから感染する可能性は大いにあります。
保育園などの施設で流行して子どもが感染し、保護者に感染が広がる「家庭内感染」の事例も多いので、大人も注意が必要です。大人は子どもより症状が軽いことも多いですが、発熱や咳などの風邪症状に悩まされると仕事や家事などに支障が出るので、できうる限りの対策で、感染を防止しましょう。
重症化のリスクが高いのは…
2歳までにほとんどの子どもが感染し、その多くは風邪症状で済むRSウイルスですが、肺炎や酷い気管支炎など、重症化する可能性もあります。重症化のリスクが高いのは、次のような方です。
・新生児
・生後3ヵ月未満の乳児
・早産、低出生体重の乳児
・ダウン症の方
・先天性疾患がある方
・慢性肺疾患がある方
・免疫不全症の方
・高齢者
RSウイルスにかかった場合の対処法
RSウイルスを発症する中心年齢は、0~1歳ですが、子どもから大人まで誰でもかかる可能性があります。もしRSウイルスにかかってしまったら、どのように対処すればよいのでしょうか。
早めに病院を受診する
熱や咳、鼻水などの症状が見られたら、早めに病院を受診しましょう。保護者の方も何かと忙しいでしょうが、「仕事が終わったら連れて行こう」などと思い保育園などに預けると、施設内感染の原因になることもあります。
RSウイルスは感染後、4~5日の潜伏期間があるので、症状が出る頃には検査でかかっているかどうかを調べることが可能です。RSウイルスではない深刻な病気の可能性も加味し、まずは医師の診断を煽ぐようにしましょう。
RSウイルスのための薬はない
RSウイルスを治療する薬というものはなく、対処療法といって症状を和らげるための治療がされます。咳や発熱などの症状に合わせた薬が処方されるので、決められた回数、分量で飲むようにしましょう。
RSウイルスだけでなく、細菌感染の合併があると診断された場合は、抗菌薬が処方されます。
感染者の看病のポイント
子どもがRSウイルスにかかったら、看病をする保護者が注意したいポイントがいくつかあります。咳や熱で食欲がないと、脱水症状を起こすこともあるので、こまめに水分補給をしてあげましょう。また、鼻がつまって苦しそうなら鼻水を吸い取る、咳が続くときには加湿器などで湿度を調整し、少しでも楽に呼吸ができるようにするなどの工夫をしてください。
感染者と接するときはマスクをする、鼻を吸ったりしたあとは手洗いうがいを忘れないなど、自分の身を守ることも大切です。
感染拡大防止に努めることも忘れずに
RSウイルスの感染拡大防止のためにできることは、以下のように新型コロナウイルスの感染対策と似ているものが多いです。
・うがい、手洗い
・マスクの着用(感染者、感染者と接触した人、感染していない人も)
・消毒(多くの人が接触する部分)
飛沫感染、接触感染を防ぐ3つの対策で、感染を避けましょう。また、RSウイルスは非常に感染力が強いので、感染が判明したら医師の指示が出るまで登園などはもちろん、外出を控えることも忘れてはいけません。
RSウイルス予防のためには決断も必要!
RSウイルスは保育園や幼稚園で定期的に流行します。マスクができない年齢の子どもを中心に感染するウイルスですので、施設内で感染を食い止めることは極めて難しいため、「感染が流行したら登園しない」という決断もときには必要です。
新型コロナウイルスの感染者が増えた際も、自己判断で登校や登園を自粛した方がいましたが、自分の身を守るために、「行かない」という決断をすることは間違いではありません。とはいえ、保育園に通っている子どもの保護者の方は仕事が忙しく、簡単に休ませることはできないでしょう。
祖父母などの協力が得られる、幼稚園に通っていて保護者が在宅しているなど、子どもを自宅で見られる環境がある場合の1つの方法として、「一定期間自主的に欠席する」ということも、選択肢に入れておいてはいかがでしょうか。
2022年、次男がRSウイルスに!我が家の体験記
幸いなことに筆者の息子たちは極めて健康で、これまで高熱というものを数えるほどしか出したことがありません。新型コロナウイルス流行前に家族で胃腸をやられるタイプの風邪でダウンして以来、大きな病気のなかった息子たちですが、2022年7月、遂に次男がRSウイルスに感染しました。
「2歳までにほとんどの乳幼児が感染する」といわれているので、もしかしたら無症状、軽い風邪程度でかかっていた可能性もありますが…。次男は症状がとても酷く、筆者も初めてRSウイルスについて詳しく知ろうと思う機会となりました。
最後に、次男のRSウイルス発症から自宅待機終了までの状況をご紹介します。
始まりは「空咳」
次男にRSウイルスの症状が出たのは7月9日。その日は土曜で、朝起きていくと子どもたちと3人で寝ていた夫が「次男が咳をしている、エアコンの下で寝たから寝冷えしたかもしれない」と言いました。
そのときは時々「コンコン」と咳をする程度で発熱もなかったため、「普段と違うエアコンの当たりやすい部屋で寝ていたから、乾燥や寝冷えによるものなのかな」などと軽く考え、市販の咳止めを飲ませていました。
3日間続いた「高熱」
土日は乾いた咳をするなか市販の咳止めを飲ませることでしのいでいましたが、症状が改善することはありませんでした。仕事があるのに困ったなぁと思いながら迎えた月曜日、夜通し次男と寝ていた夫が「ずっと咳をしている、熱もありそうだ」と言ってきたので計ってみると37.5度ほど熱があったのですぐに小児科を予約。
病院では「風邪でしょう、症状がよくならなかったらまた来てください」と、解熱剤や抗生剤、咳や痰のお薬などが処方されました。
その日の夜から3日間、次男は37.5~39度くらいの熱を出しました。座薬を入れれば熱が下がり、切れるとまた上がる、の繰り返しで再度病院を受診したところ、新型コロナウイルスとRSウイルスの検査をすることに。
結果、コロナは「陰性」、RSウイルスは「陽性」で、保育園をもう少し休むよう言われました。
「咳」と「鼻水」は長期間続いた
最初の症状だった咳は徐々に酷くなり、咳のしすぎで夜中に嘔吐するほどでした。息を吸うたびに咳が出ているような印象で、咳のしすぎで喉から血が出るのでは、と夫と心配するほどでした。
2度目の受診でぜんそくの薬を処方されてからは、夜は咳が治まってよく眠れるようになっていましたが、それまではほとんど眠れないような状態だったように思います。日中は咳をしながらも元気にテレビを見て過ごしていましたが、「ラーメンが食べたい」「うどんが食べたい」と言う割に作ってだすと3口くらいで食べられない、という状況も続き、もともと体の小さい次男ですが、咳と食欲減退でますます小さくなったように感じました。
痰の絡むような咳に変わってからは、鼻水も出てくるように。鼻水を吸う機械も持ってはいるのですが非常に嫌がるので、ティッシュで鼻を拭くことしかできませんでした。
登園許可が下りたのは発症から12日後
7月9日に咳が出始め、病院に行ったのが11日、再度受診した13日にRSウイルスと判明し、15日、20日と4回病院へ行きました。最終的には肺の音も良好、症状もよくなっているということで「明日から保育園に行っていいですよ」と小児科の先生から登園の許可を頂くことができましたが、一時は「肺の音があまりよくないので、このままだと大きい病院を紹介することになる」などとも言われとても心配しました。
久しぶりに登園してみると、次男のお友達も何人かRSウイルスで長期間欠席をしていたようでした。次男は辛い思いをしましたし、高熱で夜中じゅううなされる子どもの看病をし、昼間はテレビに頼りながらも1日じゅう病児と引きこもるというのは心身共に負担でした。
ただ長男にうつらなかったこと、次男が重症化しなかったことは幸いだったように思います。長男にうつらないよう、食事やお風呂、寝室を別にする、長男には自宅内でもマスクをさせるなどの対策を取ったのがよかったのかもしれません(それでも家庭内感染する方もいらっしゃいます…)。
また、我が家は近距離に両親と祖母がいるのですが、発熱してから医師の許可がおりるまでは接触を避けました。同居ではないので対策も簡単でしたが、高齢者も重症化のリスクがあるため、ご高齢の方と同居している場合はしっかりと家庭内感染を防ぐための対策をすることをおすすめします。
感染対策を徹底し、RSウイルスから身を守ろう
RSウイルスは風邪と似たような症状を引き起こすウイルスで、重症化すると肺炎などの危険があります。小さな子どもが感染しやすいですが、大人も感染の可能性はあるので注意が必要です。
今回、次男が感染したことによりRSウイルスについて調べようと思いましたし、どういった対処をすればよいのか学ぶこともできました。改善の兆しが見えないときは不安にもなりましたが、元気に保育園へ行く次男を見て、「もう大丈夫だな」と安心しています。
毎年流行するRSウイルス。今回の記事でのまとめや我が家の体験談が、少しでもお役に立てば幸いです。