災害が発生すると、帰宅困難者・帰宅難民が多く発生することもあります。首都圏にも被害を及ぼした東日本大震災では、東京都を中心に500万人を超える帰宅困難者が発生しました。
いつ、どこで起こるか分からない災害への備えとして、帰宅困難者になってしまった場合の行動や日頃からの備えを知っておくと安心です。そこで今回は、帰宅困難者とは何か、帰宅困難者となった際にどのような行動を取ればよいのかなどを解説します。
帰宅困難者とは「発災時、徒歩での帰宅が困難な人」のこと
帰宅困難者とは、災害が起こった際に徒歩で帰宅することが難しい人のことです。「帰宅難民」と呼ばれることもあります。
首都直下型地震を想定した場合、自宅までの距離が10㎞以内の人は「帰宅可能」とされ、10~20㎞は距離が延びるごとに帰宅が徐々に困難に。さらに20㎞以上の人は、全員が帰宅困難者と認定されるようです。
帰宅困難者・帰宅難民が発生する原因
帰宅困難者が出る原因は、災害発生による公共交通機関の運航停止や道路の損壊などです。2011年の東日本大震災の際には、首都圏でも多くの公共交通機関が運行を停止。
道路が混みあい、タクシーや運行しているバスも渋滞に巻き込まれ、帰宅困難者が多数発生しました。
帰宅困難者・帰宅難民が発生するとどうなる?
帰宅困難者のなかには「徒歩で行けるところまで行こう」と思う人もいます。そういった人が一斉に帰宅を始めようとすることで、道路が混雑することもあります。
また、電車などの運転再開を待つ帰宅困難者が駅周辺に大勢待機することで、混雑から混乱を生む可能性、救命活動や緊急車両通行の妨げになる可能性もあるので注意が必要です。
東日本大震災が起こったとき、筆者は東京の「吉祥寺」という街にいましたが、電車やバスが止まっており、駅周辺には人が大勢いました。噂で聞いた話ではありますが、吉祥寺からかろうじて動いていた「中野駅」行きのバスには大行列ができ、5時間待ちともいわれたほどです。
災害時、帰宅困難者・帰宅難民となった場合の行動
災害は避けることが難しく、公共交通機関を利用して通勤・通学をしている人はもちろん、マイカー通勤の方もいつ帰宅困難者となるかわかりません。
もし帰宅困難者となってしまった場合、どういった行動を取ればよいのでしょうか。
安否確認や情報収集手段の確保
災害が発生すると大勢の人が安否を確認するために電話を使おうとするため、繋がりにくくなることもあります。ですから、電話はもちろん、それ以外の安否確認手段もいくつか用意し、家族や身近な相手と共有しておくとよいでしょう。
相手へ直接電話をかける以外には、災害時伝言ダイヤルやSNSの利用、職場や学校の電話に連絡を取るといった方法があります。定期的に連絡手段を確認し、訓練を実施するといざというときも安心です。
72時間は安全な場所で待機する
帰宅困難者となったのがどういったシチュエーションかにもよりますが、政府は企業に対し、「人命救助のタイムリミットとされている72時間以内は、オフィスなどの安全な場所で待機する」ことを推奨しています。
これには帰宅困難者の安全を守るためだけではなく、帰宅困難者の一斉帰宅により救助に支障がでないようにするという目的も。帰宅困難者となったシチュエーション別に、どういった行動を取ればよいのか確認しましょう。
通勤・通学時
通勤・通学時に帰宅困難者となった場合は、自宅に近い場所ならば自宅へ戻って待機をしましょう。すでに学校や職場の近くまで来ている場合は、そちらに向かい待機をします。
とはいえ、災害の種類や規模によっては自宅にいても危険な場合や、その場から動けないこともありますので、臨機応変に対応するようにしてください。
学校や職場にいる場合
学校や職場にいるときに災害が起こったら、校舎やオフィスのなかで待機をします。外出中、外仕事の方の場合は近くの安全な場所まで避難して、待機をするようにしましょう。
帰宅時
自宅に戻る途中で災害が起こった場合、学校や職場に近いなら引き返し、安全を確保しながら待機をします。自宅の近くまで来ている場合は自宅周辺が安全かどうか、正しい情報を得たうえで帰宅し、自宅で待機をしてください。
帰宅途中に避難場所があれば、そういった場所を利用するのも1つの方法です。
「災害時帰宅支援ステーション」を活用する
災害時帰宅支援ステーションとは、災害が発生した場合に徒歩で帰宅する人を支援するため、コンビニエンスストアやファミレスなどがトイレや水道水の提供、道路情報などを教えてくれるものです。
この支援サービスをおこなっている店舗は特定のステッカーを提示していたり、自治体のホームページの災害に関するページに店舗名が並んでいたりするので、近くの災害時帰宅支援ステーションを調べておくことをおすすめします。
帰宅困難になることを想定した備え
誰しもが帰宅困難者になるリスクを背負って日々生活をしていることを忘れず、「いつそうなるかわからない」という気持ちで過ごすことも大切です。
帰宅困難者となった場合は自宅に備えてある防災セットを持ち出したりすることも難しいですが、以下の点を日頃からチェック、練習しておくといざというときにも落ち着いて行動できるのではないでしょうか。
学校や職場の防災設備の確認
学校や職場にある防災に関する設備を、日頃からチェックしておきましょう。非常口はもちろん、防災セットの置き場所や防災セットの中身なども把握し、「備え」をしていないときには提案する、ということもできるとよいです。
帰宅支援ステーションの場所の把握
前述の災害時帰宅支援ステーションが自宅や職場、学校の近くにはどれだけの数あるのか、どこにあるのかをあらかじめ調べて、把握しておくことも重要です。
もし徒歩で帰宅するとなった場合にも、災害時帰宅支援ステーションの場所がわかっていればそこを目標として歩いていけるため、精神面での支えにもなります。
徒歩帰宅の訓練をしておく
職場や学校と自宅が歩けなくはない距離の方は、気候のよい日に一度歩いて帰る訓練をしてみてください。災害時を想定し、どこにどういった設備、施設があるのかを確認しながら歩いていけば、いざというときにも役立ちます。
職場や学校が遠すぎるという方も、中間地点などからの徒歩帰宅をしてみて「歩いて帰る」ということの大変さを一度理解しておくと、非常時にも落ち着いて行動できるでしょう。
帰宅困難者は他人事ではない!日常的な備えも忘れずに
首都圏や地方都市では特に、災害時の帰宅困難者・帰宅難民が多く発生します。もし帰宅困難者になってしまった場合は、
- 安否確認と情報収集
- 安全な場所での72時間待機
- 災害時帰宅支援ステーションの活用
などを実践しましょう。また、通勤・通学中などに災害に見舞われることも想定し、徒歩帰宅の訓練や学校・職場の防災設備チェックなども日頃からしておくと安心です。「自分は車通勤だから大丈夫」と思っている方も、大渋滞に巻き込まれて身動きが取れなくなる可能性があります。車のなかにも防災グッズを備えておくと、いざというときに重宝するでしょう。
無理に帰宅しようとしないという選択は、自分自身だけでなく多くの人の命を救うことにもつながります。災害時には冷静な判断で、帰宅のタイミングを見計らってください。