「地震酔い」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。実際には地震が起こっていないのに、なんだか揺れているような感覚を覚えるという方は、地震酔いの可能性があります。
地震酔いには原因や対処法があるので、もし症状が当てはまる場合には正しい方法で改善していくことが大切です。今回は、そんな地震酔いに関する情報をまとめました。
地震酔いとは実際に起こっていない揺れを感じる症状
地震酔いとは、実際には起こっていない揺れを感じたり、その揺れによりめまいや吐き気を感じることです。地震酔いのほか、「地震後めまい症候群」「後揺れ症候群」とも呼ばれます。
大きな地震のあとに余震が何度も続くと地震酔いになる方が多く、もともとめまいなどの症状を持っている方は、地震後に悪化することもあるので注意が必要です。地震酔いの原因や具体的な症状を見てみましょう。
地震酔いの原因は三半規管とメンタル?
地震酔いの主な原因は、三半規管とメンタルです。車酔いや船酔いと同様、地震酔いも三半規管での平衡感覚と視覚情報のあいだに生じた「ずれ」が、本来起こっていない揺れを感じさせます。
大きな地震のあとに起こる余震は、多い場合100回を超えることも。何度も揺れに遭遇するなかで感覚などの機能が低下し、揺れていないのに揺れを感じるそうです。
これに加え、メンタル面にかかる強い負荷も、地震酔いの原因となります。余震が何度も続けば、人は「また大きな地震が起こるのではないか」という不安を抱えるでしょう。また、強い揺れがフラッシュバックすることもあります。
こうしたストレスが自律神経の乱れを生み、地震酔いの症状を悪化させることもあるようです。
具体的な症状
地震酔いの主な症状は「揺れ」や「めまい」「吐き気」、そしてこれらからくる「不眠」などです。震災のあとに地震酔いを感じた人の多くは、体が揺れる感覚に陥る程度に留まっていますが、症状がひどい場合にはひどいめまいや吐き気といった症状も現れます。
これらの症状はじっと座っているときや横になっているときなどに感じられることが多く、歩いているとき、動いているときにはあまり感じられません。
地震酔いは通常、1ヶ月から2ヶ月くらいで自然に症状が改善していくことが多い傾向です。しかし、なかには1年ほど地震酔いが続くケースもあります。症状が長期的に続く方には運動をあまりしない、不安になりやすいといった特徴も見られるので、もし地震酔いになってしまった場合には、正しい対処法やストレス解消法を実践しながら、早期の改善を試みましょう。
地震酔いの対処法
ここからは、具体的な地震酔いの対処法、改善方法をご紹介します。地震酔いを改善するのに最も有効なのは、ストレスの緩和です。大きな地震を経験したことによるショックや不安などは大きいでしょうが、ストレスを感じない、発散させる方法を見つけることで、地震酔いからも早く解放されるのではないでしょうか。
景色を見る
広い場所へ行って景色を眺める、いつもと違う景色を見ることで、揺れを感じていた感覚をリセットすることが可能です。また、広々とした場所でゆったりと景色を眺めることは緊張を和らげることにもつながり、ストレスを緩和することにも役立つでしょう。
体を動かす
揺れを感じて不調を訴えている場合、安静にしているのがベストだと思われがちです。しかし、地震酔いはじっとしているときに感じられることが多いので、体を動かして揺れを感じない感覚を取り戻すことも必要だといえます。
ウォーキングやストレッチなどの軽い運動を繰り返すことで、通常の感覚を徐々に取り戻していきましょう。ただし、ひどいめまいや吐き気がある場合には無理をしてはいけません。
水分補給
震災後は生活リズムが乱れ、避難所などでじゅうぶんな食事や睡眠がとれないことも多いでしょう。そうした生活のなかで、水分不足になることも少なくありません。水分が不足すると体の電解質バランスが崩れ、三半規管に異常を来し、地震酔いを悪化させることもあります。
避難所で通常通りの水分摂取を実践するのは難しいかもしれませんが、水分不足にならないようこまめに水を飲む、スポーツドリンクや経口補水液などを積極的に口にするなどすると、地震酔いを緩和させられるかもしれません。
睡眠や休息も忘れずに
地震酔いの原因の1つはストレスですので、睡眠や休息をじゅうぶんに取り、心と体の疲れを解消することも忘れないようにしましょう。強い不安感からよく眠れない、という場合には適度に体を動かして気分転換をすると、ほどよい疲労感でぐっすりと眠ることもできます。
心や体が健康になれば、地震酔いの症状も徐々に改善していくことが多いです。
もしかして地震酔いじゃない?こんな症状にも注意
地震酔いの症状が続き改善の傾向が見られない、症状がひどいという場合は、以下に提示する病気である可能性もあります。
前庭神経炎
前庭神経炎は、耳の前庭から脳へと情報を伝達する「前庭神経」というところに、ウイルスが入り込み感染して起こるものです。地震酔いは地震のような横に揺れる症状である一方、前庭神経炎はぐるぐると回るようなめまいを感じます。
こうしためまいが1週間以上続く場合には、病院で検査をし、抗ウイルス薬を服用することで症状の改善が可能です。
メニエール病
肩こりがひどい、血圧が低いという女性が地震後に耳鳴りやぐるぐる回るようなめまいを感じる場合には、メニエール病の可能性があります。メニエール病の場合、どちらかの耳が詰まった感じがする、どちらかの耳をしたにすると症状がひどくなるが、反対の耳をしたにすると楽になる、天気が悪いと症状が悪化するといった特徴も見られるでしょう。
メニエール病はストレスや生活リズムの乱れが発症の原因ですので、休息をしっかりと取ること、早めに耳鼻科を受診することが大切です。
起立性低血圧
震災後の慣れない避難所生活のなかで、食生活や生活リズムが乱れると、起き上がったり立ち上がったりしたときにめまいや頭痛を覚えることがあります。これを起立性低血圧といいますが、症状の原因は起きる、立つ際に血圧が下がり脳にじゅうぶんな血液を送ることができないことです。
座る、横になるなど安静にすると症状が落ち着くのが特徴で、疲労回復と共に症状の改善も見られますが、薬剤療法を用いることもできるので症状がひどい場合には病院へいくことをおすすめします。
脳梗塞
震災後に水分がじゅうぶんに摂取できないと、動脈硬化や不整脈などもともと持っていた持病から脳梗塞を引き起こす可能性が高まります。
脳梗塞の場合はめまいだけでなく手足の麻痺や言語障害、激しい頭痛などの症状が見られることが多いです。こうした症状がある場合には、ただちに救急車を呼び、医師の診断を仰ぎましょう。
症状がひどい場合には受診も検討して
地震酔いは症状が軽ければ適度な運動や休息で徐々に改善していきますが、嘔吐してしまうほどの揺れを感じる方もいます。めまいや吐き気といった症状を抑える「酔い止め」を処方してもらうことで症状を和らげることもできますので、「これくらいで」と思わずひどい場合には医療機関を受診しましょう。
また、地震酔いだと思っていたら前述のような深刻な病気だったという可能性もゼロではありません。少しでも気になる症状があるときには、一刻も早く病院へいくことが大切です。
災害が起こったあとは、慣れない避難所生活によるストレスや二次災害への不安などから自分のことで精一杯という方も少なくありません。自分の体のことは自分で判断し、健康管理を怠らないことも、災害現場では重要です。
心身の健康で地震酔いを克服しよう
ストレスや体調不良などが起因となる地震酔いは、心身の健康を取り戻すことで症状を少しずつ感じなくなります。しかし無理をすれば症状が悪化する、メニエール病など別の病気を引き起こす原因となるので注意が必要です。
災害のあとには、知らず知らずのうちにストレスをため込んでしまう方も少なくありません。決して無理をせず、医師やカウンセラー、災害ボランティアなど、さまざまな方の手を借りながら深刻な状況を切り抜けていきましょう。