南岸低気圧は「関東地方に大雪を降らせる低気圧」として知られています。ですが、必ずしも雪が降るとは限らず、雨になることもあります。予報が難しいとされるのですが、雪が降った場合の被害はできるだけ少なくしたいところです。
そこで、今回は南岸低気圧の特徴を解説しながら「雪道を歩くとき・運転するときの注意点」「雪解け時に気をつけたい点」をお伝えします。
本格的な春をむかえるまで必要な「雪へ備える方法」ぜひ最後までご覧ください。
南岸低気圧がもたらすのは雪とは限らない
気象庁では、南岸低気圧を「日本の南海上を主として東から北東に進む低気圧」と定義しています。急速に発達して暴風雪をもたらす爆弾低気圧になったり、「関東地方に大雪を降らせる低気圧」としても知られています。
ですが、南岸低気圧が通るからと言って必ずしも雪とは限らず、雨が降ることもあります。雨か雪どちらになるかは、南岸低気圧が通るコースだけではなく、雲域の広がり方や気温・湿度といったことも関係するのです。
八丈島の北側を通過しても雪になることがある
南岸低気圧と「八丈島」との位置関係によって、雨か雪かが変わるとする見方があります。具体的には「南岸低気圧が八丈島の北側を通ると雨になり、南側では雪になる」というものです。
ですが、必ずしもそうとは言い切れない状況があります。気象庁気象研究所の荒木健太郎さんの調べによると、都心で1㎝以上の雪が降った41事例のうち、半数以上の28事例が八丈島の北側を通過していたのです。(参考元:NHK“南岸低気圧”で都心に雪が降る?l)
南岸低気圧の予報は難しい
日々の予定を組むうえでも、雨か雪いずれになるか早く知りたいところですが、実は、南岸低気圧に伴う予報は、気象庁が「予報が難しい現象について(太平洋側の大雪)」として取り上げるほど、難しいとされています。
そのため、天気予報で南岸低気圧が取り上げられた際には、雪の可能性もあることを念頭におき、天気予報をこまめにチェックすることも大切です。
南岸低気圧で雪!雪道を歩く・運転するときの注意点
関東地方に大雪を降らせる原因となる南岸低気圧ですが、あまり雪が降らない地域では、雪道を歩くことだけでも非常に大変です。そこで、ここでは雪道を歩くとき・車を運転する時の「最低限これだけは知っておきたい」という注意点をお伝えします。
雪道を歩くときの注意点
普段は何気なく歩いていても、雪の日にはそうはいきません。靴はブーツや裏の凹凸が大きい物など滑りにくい物を選び、転倒した時に備えて帽子をかぶることも対策として必要でしょう。もし「雪が降る機会は多くないから、わざわざブーツは買いたくない」という場合には、靴に装着する滑り止め用バンドの購入を検討してはいかがでしょう。
◆雪道を歩くときの注意点
歩幅が大きいとバランスが崩れやすく、転倒につながりやすくなります。
また、かかとから着地することは滑りやすく危険なため、足の裏全体で着地するように意識しましょう。
急いで歩くと凍っている所に気付かず、転倒してしまう可能性があります。
面倒に感じるかもしれませんが、大ケガをして後悔することがないよう、雪道の状況を確認しながら歩くことを意識すると良いでしょう。
慎重に雪道を歩けば、当然いつもよりも時間がかかります。また、雪の影響で交通機関に遅れや運休が生じる可能性もあります。
焦る気持ちがあると周囲への注意も散漫になりがちなので、余裕をもって行動できるようにしましょう。
階段や横断歩道、お店の出入口など人が多く歩く場所では、雪が踏み固められたことで滑りやすくなっています。
雪が溶け出した状態でも、雨で濡れた時に滑ることがあるのと同様の危険があります。
車を運転する時の注意点
慣れない雪道の運転は、スリップなどによる交通事故にもつながりやすく危険です。
ノーマルタイヤでの走行は、もちろん雪道には適せず危険すぎますが、スタッドレスタイヤを装着していても雪道に適した運転が必要です。
「急ブレーキ・急発進はしない」「車間距離を長くとる」ことをはじめ、交差点や橋の上、トンネルの出入り口などは滑りやすい(凍結しやすい)ということを認識して運転しましょう。
また路面によっては、雪がないように見えても実は凍っている、ということもあるので注意が必要です。
雪道での運転は、いつも以上に余裕をもっておこなうようにしましょう。
ちなみに、大雪特別警報が出された場合などにはスタッドレスタイヤに加えて、チェーンの装着がないと運転できない「チェーン規制」が特定の区間に発令されることもあります。国土交通省「チェーン規制 Q&A」で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
南岸低気圧では雪解け時にも注意が必要
南岸低気圧によって降り積もった雪は、その後、気温が上がると溶けていきます。
大雪が降った地域では、道路の冠水や河川の増水、除雪中の事故などに注意が必要です。
一方、それほど多く雪が降らなかった地域でも「屋根からの落雪」や雪崩などには注意が必要となります。
自宅の軒下はもちろん、通勤通学途中の思わぬ場所で、屋根から雪が落ちてくるかもしれません。
雪が溶けて路面も歩きにくい状態のため、つい下ばかり注意しがちですが、上からの雪にも気をつけましょう。
南岸低気圧は予報が難しいが、雪の情報は詳しく得られる!
気象庁のホームページでは、それまで「現在の雪」として雪の状況を伝えてきましたが、2021年(令和3年)11月に「今後の雪」へとリニューアルしました。
積雪の深さや降雪量が1時間ごとに更新され、6時間先までの予報を知ることができるようになりました。
南岸低気圧は雨か雪かの予報が難しいとされますが、気象庁では「今後の雪」も含めた「大雪・暴風雪に関する最新の防災気象情報」を提供しています。ここでは、今後の見通しや大雪に関する普及啓発の資料なども入手することができます。
さらに、「今後の雨」や「雨雲の動き」では降水量や大雨災害の危険情報などを知ることができるので、ぜひ一度チェックしてみてはいかがでしょう。
まとめ
南岸低気圧によって、雨か雪いずれになるかの予報は難しいとされています。
雪道の歩き方や運転の仕方を知っておくことは、雪による被害に備えることにつながるでしょう。
雪に慣れている地域であっても、雪による大きな被害が出ることがあります。
ましてや、冬でもあまり雪が降らない地域であれば、その備えはより一層必要となるでしょう。
ぜひ、今回お伝えした「雪道での歩き方・運転する時の注意点」を事前の備えとしてご活用ください。
また、南岸低気圧は発達すると、暴風雪をもたらす爆弾低気圧となることもあります。
爆弾低気圧は冬から春にかけて発生するとされています。天気予報などをこまめにチェックし、最新の情報を得て、被害を生まないよう備えていきましょう。
【参考文献】
気象庁「予報が難しい現象について (太平洋側の大雪)」https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yohokaisetu/ooyuki.html#nangan
NHK“南岸低気圧”で都心に雪が降る?https://www3.nhk.or.jp/news/special/saigai/select-news/20220209_01.html
ウエザーニュース「首都圏の雪の原因 南岸低気圧とは?」https://weathernews.jp/s/topics/201712/300055/
政府広報オンライン:気象庁「今後の雪」で6時間先までの雪を予報!https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202112/2.html
(以上)