爆弾低気圧の被害は広範囲~強風による影響を詳しく解説!

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冬から春にかけて発生する爆弾低気圧。それは「冬の台風」「春の嵐」と呼ばれることがあるほど、甚大な被害をもたらすことがあります。

今回は、この爆弾低気圧について過去の事例を取りあげながら、特徴の一つ「強風」について「風速○○メートルってどのくらい?」といった疑問から、「強風への備え」「強風による歩行者・自転車・車への影響」まで、詳しく解説します

この記事を読んだ後には、天気予報で使われる言葉が正しく理解できるようになり、爆弾低気圧への備えも進むかもしれません。ぜひ最後までご覧ください。

目次

「爆弾低気圧」と「急速に発達する低気圧」は同じ気象情報

爆弾低気圧という言葉に決まった定義はなく、研究者によって異なっています。そのため一つの目安として「中心気圧が24時間で24hpa(ヘクトパスカル)以上低下する」とされています。

ですが、気象庁では爆弾低気圧と言わず「急速に発達する低気圧」などと言い換えています。したがって、天気予報で「急速に発達する低気圧」と言った場合には、爆弾低気圧のことだと思って備える必要があるのです。

低気圧には温帯低気圧と熱帯低気圧があり、爆弾低気圧は温帯低気圧です。一方、熱帯低気圧の一つに台風があります。爆弾低気圧は「冬の台風」とも言われるほど、大きな被害をもたらすのです。

ちなみに、”爆弾”という言葉は低気圧に関する海外の論文で最初に使用され、以降日本でも使用されているという背景があります。”爆弾”と聞くと、ものすごく勢いがあるものをイメージするのではないでしょうか。そのイメージどおり、爆弾低気圧はこれまで大きな被害をもたらしてきました

爆弾低気圧では強風が吹き、被害は広範囲~過去の天気図から学ぶ

ここで一度「低気圧」について確認してみましょう。低気圧とは相対的なものであり「周辺よりも気圧が低いところ」を意味しています。そして、大気は気圧が高いところから低いところに流れるため、爆弾低気圧が発生すると「強風(暴風)になる」という特徴があります。

後述するように、2012年4月3日から5日にかけて発生した爆弾低気圧では、最大風速が和歌山県友ヶ島で32.2m/s最大瞬間風速が新潟県両津市で43.5m/sという猛烈な勢いでした。

天気図から爆弾低気圧の特徴を確認

2012年4月2日黄海にあった低気圧が爆弾低気圧となり、4月3日から5日にかけて日本海を北東に進みながら日本を横断しました。350人以上が負傷、5名の方が亡くなるという人的被害をもたらしたのです。

当時の天気図が下記のとおりです。中心気圧が24時間で34hpa(ヘクトパスカル)低下しています。等圧線の幅が狭く混み合っているほど風が強いことをあらわしています。

爆弾低気圧を示す天気図(2012年4月3日~4月4日)

ウエザーニュース「爆弾低気圧 知られざる暴風被害の歴史」

ちなみに、爆弾低気圧という言葉は、この年のユーキャン『「現代用語の基礎知識」選 2012ユーキャン新語・流行語大賞トップ10』に入り、「ips細胞」や「終活」など他の言葉とともに話題になったのです。

爆弾低気圧の被害は台風よりも広範囲に及ぶ

爆弾低気圧の特徴の一つに「被害が広範囲に及ぶ」ということもあげられます。先述の事例でも、実に37都道府県において被害が発生したのです。

「政府広報オンライン」では、このときの爆弾低気圧を「春の嵐」と表わし、風の吹き方の違いを台風と比較しているので、ご紹介しましょう。

政府広報オンライン:台風並みの暴風となる「春の嵐」「メイストーム」気象情報や警報・注意報に注意して安全対策を 
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201304/2.html

ピンクの部分が強い風の範囲です。爆弾低気圧を示す左側の天気図のほうが、右側の台風の天気図よりも、はるかに大きくなっているのがわかりますね。
台風は中心付近で強い風が吹きますが、爆弾低気圧では中心から離れているところでも強風となるため、被害が広範囲に及ぶのです。

さらに爆弾低気圧と台風の違いには、発生時期もあげられます。台風は夏に多いですが、爆弾低気圧は「冬から春に多く発生」します

ここまで、爆弾的圧の特徴として「強風(暴風)になる」「被害が広範囲に及ぶ」「冬から春に多く発生」ということをお伝えしました。

では次に、この「強風(暴風)」について詳しく見ていきましょう。

爆弾低気圧から学ぶ「風」の程度とその影響

天気予報で「やや強い風が吹きます」と聞いたとき、「やや強い」がどの程度かはなかなかわかりません。また、私たちは日頃会話のなかで「今日は風が強い」とは言いますが、「今日は風速20m/s以上」とはあまり言わないのではないでしょうか。

爆弾低気圧では「風」による被害も大きいため、しっかり確認しておきたいポイントです。

ここでは「風の強さとその影響」および「強風への備え」について、お伝えします。

風の強さとその影響「風速○○メートル」ってどのくらい?

ここでは、天気予報で使われる「風の程度を表す言い方」と日常生活への影響をお伝えします。

具体的にお伝えする前に、風速の表し方について確認しておきましょう。天気予報では「風速〇〇m/s」と表示されることがほとんどですが、風速の単位を示す「m/s」は「メートル毎秒」と読み「秒速」を意味しています。したがって「風速10m/s」が意味しているのは「秒速10メートル」ということになります。

それでは、具体的な風の強さとその影響を見てみましょう。
すべて覚えておくのは難しいですが、自分が印象に残るレベルだけでも把握しておくと良いでしょう。

風の強さとその影響 
気象庁リーフレット「雨と風(雨と風の階級表)」より一部抜粋

「強風」・・風が強い状態の総称

「やや強い風」・・風速が10m/s以上15m/s未満の風
 *傘がさせない
 *電線が揺れ始める

「強い風」・・ 風速が15m/s以上20m/s未満の風 
 *風に向かって歩けなくなり、転倒する人も出る 
 *看板やトタン板が外れ始める
 *屋根瓦・屋根瓦材がはがれるものがある

「非常に強い風」・・風速が20m/s以上30m/s未満の風 
 *何かにつかまっていないと立っていられない。 
 *飛来物によって負傷するおそれがある
 *細い木の幹が折れたり、根の張っていない木が倒れ始める 
 *(車は)通常の速度で運転するのが困難になる

「猛烈な風」・・ 風速がおよそ30m/s以上、または最大瞬間風速が50m/s以上の風
 *屋外での行動は極めて危険 
 *走行中のトラックが横転する

このほかにもよく聞く言葉の一つに「暴風」があります。気象庁のホームページによると「暴風警報基準以上の風」とあります。暴風警報の基準は地方によって異なるため、気象庁の運用基準では「平均風速がおおむね20m/sを超える場合」とされています。

一言で「風が強い」といっても、さまざまなレベルがあるのがわかりますね。

強風がもたらす被害を想定して備えよう

強風はあらゆる点において被害をもたらします。ここでは、どのような被害が想定されるのかお伝えします。強風が予想された場合には、できるだけ早く必要な対策をとるようにしましょう。

・自宅周りの点検
飛ばされる可能性のある物は、室内に入れるかロープなどで固定します。物干し竿や陶器の植木鉢など、飛ばされると歩行者など他人に危害をもたらす可能性があるものは、しっかりと対策をとりましょう。

・カーテンを閉める
強風で割れた窓ガラスは大怪我のもとになります。ガラスが飛び散らないよう、カーテンを閉めましょう。もちろん、飛散防止フィルムを貼るとより安心でしょう。

・停電や断水に備える 
暴風や豪雨の影響で停電になることもあります。また、集合住宅では停電によって断水になるところもあるため、あわせて対策が必要です。懐中電灯などの電池が切れていないかも忘れず確認しておきましょう。

なお、強風では交通機関への影響もあります。事前に運休が発表されることもありますが、過去には電車内に長時間閉じ込められてしまったケースもあります
爆弾低気圧の発生が予想された際には、普段以上に閉じ込めへの対策をとりましょう。たとえば、携帯トイレや飲み物・栄養補助食品、充電器などをバックの中に入れておくと良いでしょう。

爆弾低気圧の強風による歩行者・自転車・車への影響

爆弾低気圧の発生がわかっていても、リモートワークができない職種や予定の変更ができないなど、どうしても外出しなければならない場合もあるでしょう

そこで最後に、強風による歩行者・自転車・車への影響について、JAFが公開している動画テスト結果よりご紹介します。
いざというときのための備えとして、ぜひご確認ください。

傘は風速10m/sでまともにさせない

強風のなかを歩くことには、転倒や飛来物などによる危険があります。JAFのテストでは傘をさした男性が、強風のなかを歩いています。
風速10m/sの地点で傘は頭上ではなく体の前でさし、風速20m/sでは傘のコントロールが難しくなりました。

他人に危害を与える恐れだけでなく、自分自身にとっても危ない状況です。その後、傘はほどなく飛ばされました。

強風の程度によっては、傘ではなくレインコートを着用するなど状況を見極めて使用することが望ましいでしょう。

自転者は風速20m/sで走ることができなくなる

JAFのテストでは自転車に乗った男性が、風速15m/sで足を地面について漕ぎだし、風速20m/sでは前に進めない状態になりました。
さらに、風速30m/sでは自転車を押さえることができず、自転車は飛ばされてしまいました。

自転車は、徒歩よりも速く目的地に到着できるため便利ですが、強風時には便利に使えないばかりか危険が伴うことを、念頭に入れておきましょう。

車の横転やホワイトアウトにあう危険|車のドアは子どもに開けさせない

爆弾低気圧が発生するなかでの運転は、強風による車の横転や、豪雪時には視界が利かなくなる「ホワイトアウト」が発生し重大な事故につながる危険性があります。

強風時にはスピードを出しすぎず危険を感じたらハザードランプをつけて停車道路上で動けなくなったら「♯9910」道路緊急ダイヤルに電話するといった対応をとりましょう。

歩行者や自転車の横を通る際には「強風によって人・自転車が道路に飛び出てくるかもしれない」といった危機意識を持つことも大切です。

JAFのテスト「強風時のドア開け(JAFユーザーテスト)」 では、「強風時、車のドアはどの程度押えられるか」を検証しています。テストは子ども(6歳男児・10歳女児)、30代女性、40代男性を被験者としておこなわれました。

その結果、子どもはいずれも風速20m/sですでにドアを押さえることはできず、大人では30代女性が風速40m/s、40代男性が風速30m/sでそれぞれ押さえることができなくなりました。

さらにホームページでは、強風時における車からの降り方を次のように示しています。

●大人の場合
➀ドアレバーを引きながら少しだけドアを開け、風の強さや後方を確認。その際、右手でドアを持ち、大きく開かないように押さえる
➁両手でドアを押えながら、少しずつドアを開けて、ゆっくり車外に出る。(一気に開けるとドアがあおられるので、必要最低限だけ開ける)

●子どもの場合
子供が自分でドアを開けてしまわないよう「チャイルドプロテクター(チャイルドロック)」をかけておく。
大人が先に車から慎重に降り、外から子供が乗った座席のドアを開けて子供を下ろす(その際も大きく開けず、必要最低限だけどあを開ける)。

JAF「強風時のドア開け(JAFユーザーテスト)」より

子どもの場合、強風によって子ども自身が車外に飛ばされてしまう危険性があると言います。

強風の中は大人でも大変ですが、子どもの命を守るため必ず大人が対応するようにしましょう。

爆弾低気圧がもたらす被害

爆弾低気圧の発生は、大きな被害を生みやすい状況になってしまいます。

今回は、強風にポイントを絞ってお伝えしましたが、このほかにも「豪雨」「大雪」「高波」などにも十分注意が必要です。

さらに、爆弾低気圧では気圧が急速に下がるため、頭痛・耳鳴り・めまいなど、いわゆる「天気痛」や「気象病」と言われる症状をもたらすこともあります。

爆弾低気圧による被害を最小限におさえるため、天気予報で使われる言葉や事象を正しく理解して、必要な対策をとっていきましょう。

 

【参考文献】

ウエザーニュース「冬の嵐をもたらす”爆弾低気圧”とは?」https://weathernews.jp/s/topics/201812/050175/

ウエザーニュース「爆弾低気圧 知られざる暴風被害の歴史」https://weathernews.jp/s/topics/202004/110075/

政府広報オンライン:台風並みの暴風となる「春の嵐」「メイストーム」気象情報や警報・注意報に注意して安全対策を」https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201304/2.html

気象庁「温帯低気圧」https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/conf/TY-ENQ2006/tropextrop.html

爆弾低気圧情報データベース「爆弾低気圧データ 2012年4月2日発生の低気圧」http://fujin.geo.kyushu-u.ac.jp/meteorol_bomb/view/detail.php?id=2012-04-02-15

一般財団法人 日本気象協会 JWA Information「気象災害について考える。春の嵐 暴風について考える 」2016.3 Vol.71 https://www.jwa.or.jp/wp-content/uploads/2019/06/JWA_Information_Vol71.pdf

NHK「“ホワイトアウト” その時どうする?対策と注意点は」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220221/k10013494501000.html

JAF Channel「ドアが壊れる!?車や自転車、歩行者への影響は?【JAFユーザーテスト】」https://www.youtube.com/watch?v=hZJ7iUpRKU0

JAF「強風時のドア開け(JAFユーザーテスト)」https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/windy/door-open

ユーキャン「“「現代用語の基礎知識」選 2012ユーキャン新語・流行語大賞”トップ10発表!」2012年12月03日 https://www.u-can.co.jp/company/news/1193292_3482.html

Qikeru「風向きも完璧!高気圧・低気圧とは何かわかりやすく説明してみた」https://media.qikeru.me/low-high-pressure/

(以上)

備えておこう!おすすめの防災グッズ

これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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この記事を書いた人

東北出身&在住フリーライター。
広告代理店・NPO・行政で勤務後、在宅ワーカーに転身。
妊娠中に東日本大震災に遭い、津波から避難・仮設住宅で子育てをする。
本サイトでは「命を守るために知っておきたいこと」「日常に潜むリスクへの備え」などについて発信します。
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