火山大国と呼ばれる日本をはじめ、世界には多くの活火山が存在します。活火山については漠然とした認識はあるものの、詳しくどういったものかよくわかっていないという方は少なくありません。
今回は活火山とはどういった火山を指すか、そして噴火が起こるとどうなるかなどを説明します。また、世界・日本の有名な活火山を一覧でご紹介していますので、火山について興味のある方、噴火の際にできる対処法などを知りたい方はぜひ最後まで読んでみてください。
活火山とは「1万年以内に噴火した火山」のこと
活火山とは、「概ね過去1万年以内に噴火した火山」や「現在活発な噴気活動がある火山」をさします。かつては過去に噴火したものの現在噴火していない火山を「休火山」、歴史時代の噴火記録がない火山を「死火山」と読んでいました。
しかし、1960年代から徐々に定義が変化し、2003年に火山噴火予知連絡会が現在のような定義に変更。定義に当てはまる日本の活火山は111存在します。
火山が噴火するとどうなる?
火山が噴火すると、登山中の方はもちろん、火山周辺の地域に住んでいる方にも大きな被害が及びます。さらに、火山灰は遠く離れた地域にもさまざまな被害をもたらす可能性があるので注意が必要です。
火山噴火による主な被害には、次のようなものがあります。
・火山灰:噴火で噴出した灰。家屋の倒壊や交通機関の乱れ、人体への影響もある
・噴石:火口から噴出した石。数十センチ級の大きなものもあるため非常に危険
・火砕流:火山灰や岩、水蒸気などが混ざり火口から噴出。土砂のように押し寄せる
・火山ガス:硫化水素などの有害物質を含んだガス。吸い込むとさまざまな害がある
ほかにも、火山泥流や溶岩流など、火山噴火により噴出されるものは多くあります。
近くの活火山や登山中の活火山が噴火したらどうする?
活火山の近くに住んでいる方は、いつ火山噴火が起こっても正しく避難できるよう、日頃から防災について知っておく必要があります。また、もし登山中に活火山が噴火した場合にも、危険から身を守れるよう、火山噴火への知識を身につけたうえで登山に臨むようにしましょう。
火山灰から身を守る
小さな火山灰は、吸い込むと肺の奥にまで入り込み、咳や息苦しさを引き起こします。また、目に入り充血する、肌に触れて皮膚炎症を起こしてしまうこともあるため、注意が必要です。
火山灰から身を守るには、防塵マスクやゴーグル、長袖の服が有効でしょう。活火山周辺の住民の方は防災グッズにこうしたアイテムを追加する、登山の際も登山バッグに入れておくことをおすすめします。
また、火山灰には視界を遮る、車のブレーキがききにくくなるといった影響もあるので、車で避難する際には安全に注意しながら運転することも忘れてはいけません。
安全な場所へ避難する
火山噴火が起こったら、危険から身を守るために安全な場所へ避難します。特に、登山中の噴火の際は近くの山小屋などにすぐに入り、噴石が当たるといった被害を避けるようにしましょう。
近隣住民の方は避難所へ行くのもよいですが、自宅に大きな被害が及んでいなければ、無理に外に出ないで自宅内で待機するのも1つの手段です。特に、呼吸器系の疾患のある方は火山灰を吸い込むと非常に危険ですので、周囲の様子が落ち着くまで自宅で様子をみるようにしてください。
火山ガスにも注意する
毒性の強いさまざまな成分が含まれている火山ガスは、吸い込むと人体に影響を及ぼし、最悪の場合死に至ります。最近は火山灰と火山ガスを同時にシャットアウトして身を守れるマスクも販売されているので、防災用品としてチェックするのもよいでしょう。
もしマスクがない場合は、湿らせたタオルやハンカチを鼻と口に当てることで、火山ガスを大量に吸い込むことを避けられます。火山ガスも火山灰同様、呼吸器や循環器系の疾患がある方には特に危険ですので、持病のある方は充分に対策をするようにしてください。
世界の有名な活火山
ここからは、世界の活火山についてご紹介します。アメリカのスミソニアン自然史博物館のデータによると、世界にはおよそ1500もの活火山があるといわれており、その多くが分布しているのは、環太平洋地域です。
多くの活火山のなかから、有名な活火山についてみていきましょう。
バヌアツ共和国・マラム火山
バヌアツ共和国は、オーストラリアの東に位置しています。地震発生時の法則として謳われている「バヌアツの法則」でも有名なバヌアツ共和国にあるマラム火山は、現在も活発に活動しており、山頂には巨大なカルデラがあるのも特徴です。
また、マラム火山は世界に5つしかないといわれる溶岩湖が火口の底に存在します。溶岩湖のなかは700~1200度もあるといわれており、煮えたぎる溶岩はGoogleのストリートビューでも見ることが可能です。
インドネシア・アグン山
インドネシア・バリ島にあるアグン山は1964年に噴火して以来、活動が止まっています。当時の噴火では溶岩はもちろん、すさまじい爆風が周辺地域を襲い、数千人の方の命が失われました。
また、アグン山の噴火の影響はこれに留まらず、噴煙の影響で世界中の気温が下がるといった異常事態も発生。歴史に残る大噴火だったといえます。
イタリア・エトナ山
シチリア島東海岸にあるエトナ山は、ヨーロッパ最大の活火山です。火山噴火の歴史はなんと50万年前。現在も「世界で最も活発な火山」と呼ばれており、標高の高い場所では辺り一面から水蒸気が出ているのが確認できるほどです。
火山、そして山の斜面は1987年よりエトナ公園となり、雄大な自然を楽しむことができます。このエトナ公園は、2013年には世界自然遺産にも登録されました。
アメリカ・キラウエア火山
ハワイ島にあるキラウエア火山は、ハワイ有数の人気観光スポットとしても有名です。キラウエア火山のあるハワイ火山国立公園は、世界自然遺産にも登録されています。
キラウエア火山は1983年に噴火して以来、断続的に噴火を継続していましたが、2018年の大規模噴火からは活動が収束している状態です。
メキシコ・ポポカテペトル山
標高5790mと、メキシコ国内で2番目の高さを誇るポポカテペトル山は、2003年より常に噴火している状態です。数年に一度、中規模な噴火を起こしているため、周辺地域の住民およそ5万人がその影響を受けています。
ちなみに、このポポカテペトル山は形が富士山によく似ていることから、日本では「メキシコ富士」と呼ばれることも。雪化粧をした美しい姿は、とても噴火を起こす火山には見えません。
日本の有名な活火山
現在、日本の活火山は111あります。そのなかから噴火を多く起こしている活火山や有名な活火山を見ていきましょう。
北海道・十勝岳
北海道の十勝岳は、約200万年前に噴火活動を活発に繰り返し、現在の火山群の形になりました。歴史時代になっても噴火を繰り返しており、1926年、1962年の噴火では多くの被害をもたらしたことでも有名です。
1926年の噴火では融雪型泥流により144名が命を失いました。また、その後1962年の噴火では火山岩の落下で5名が死亡。活動が落ち着いている現在も、火山噴火への防災対策が叫ばれています。
東京都・伊豆大島
日本では珍しいサラサラの溶岩が噴き出すことで有名な伊豆大島の火山ですが、直近の噴火は1986年。このとき、島民およそ1万人が島の外へ避難することを余儀なくされました。現在は噴火の兆候などが認められず、活動が落ち着いている状態です。
ちなみに伊豆大島は火山噴火が島を形成しています。もともと3つの別々の火山だった伊豆大島は、別の火山が噴火を繰り返したことにより、1つの島に。その後も何度も噴火し、現在の形になったそうです。
東京都・三宅島
東京都にある三宅島は、たびたび噴火被害が発生していることで有名です。2000年の噴火が記憶に新しい、という方もいるのではないでしょうか。2000年の噴火の際は溶岩の噴出はなかったものの、多量の火山灰や火山ガスが発生。全島民およそ3800人が、4年以上に渡る島外避難をしなければならなくなりました。
三宅島の火山活動はごく小規模ながらも現在も継続中で、年に数回噴火が発生しています。
熊本県・阿蘇山
熊本県にある阿蘇山は、東西約17㎞、南北約25㎞という世界最大級のカルデラが特徴です。過去には100年の間に大規模噴火が14回起こったという歴史もあります。
阿蘇山が危険視されている理由は噴火の頻度で、研究によれば6000年に一度は噴火しているそうです。しかし、直近の噴火がおよそ7000年前であることから、いつ噴火が起こってもおかしくない状態であること、噴火が起これば北海道から韓国といった非常に広範囲に被害が及ぶことが予想されています。
鹿児島県・桜島
日本には多くの活火山が存在するものの、火山噴火といえば桜島、というイメージが強い方も少なくないでしょう。桜島は約26000年前に誕生して以来、17回もの大噴火が起きました。
最後の大噴火は1914年ですが、その後も火山灰の噴出を繰り返す活動が続いており、周辺地域の方に影響を及ぼしています。小規模ながらも毎日のように噴火活動が見られることから入山規制もされており、日本はもちろん、世界中から注目される活火山としても有名です。
活火山が噴火したら正しく避難しよう
日本、そして世界には多くの活火山が存在し、現在も活動を繰り返しています。かつて休火山、死火山と呼ばれていた一見活動の止まっているように見える火山も、突如噴火し大きな被害をもたらすケースもあるため、活火山への登山などには注意が必要です。
火山噴火が発生した場合も正しく防災、避難ができるよう、日頃から知識を蓄えていきましょう。