わたしたちの生活には、その日の気温や天候によって影響をうけることも多々あり、天気予報のチェックは欠かせません。
しかし、気温や天候に影響をあたえているものの、天気予報ではあまりつかわれない言葉があります。
それは「気団」です。「気団」は報道発表資料などで用いられるものの、天気予報で耳にすることはありません。
そこで今回は「気団とはなにか?」そして、日本周辺にある「気団の種類」と「四季との関係」についてお伝えします。
「気団」は中学校で習いますが、大人になると忘れている方も多いかもしれません。
いままさに「気団」について勉強中の方はもちろん、あらたに学びたい方もぜひご覧ください。
気団とは
さっそく気団の定義を確認しましょう。
性質がほぼ同じ「空気の塊」
気象庁では次のように定義しています。
広い範囲にわたり、気温や水蒸気量がほぼ一様な空気の塊。
気象庁|気圧配置 気団・前線・気圧配置・天気図・気圧系の発達、移動に関する用語より引用 ※太字は筆者加筆
「気団=空気の塊」ですが、その空気の特徴によって気団はいくつかの種類に分けられるのです。
地表面の影響の有無で分類
まず、気団は「地表面の特性の影響」をどの程度うけているかによって、2つに分類されます。
影響を強くうけているものを「地表気団」、直接影響はうけずに発生したものを「上層気団」といいます。
【参考文献】コトバンク「気団」
発生地域(発源地)で分類
そして、気団はそれがつくられた地域(=発源地)によっても分類されます。
気団が発生しやすいのは「大陸上」または「海洋上」です。そのなかでもさらに「高緯度」または「低緯度」に分けられるのです。
では、日本列島周辺にあって日本の天候に影響をあたえる気団には、どのようなものがあるのでしょう。
日本周辺にある気団の種類
日本列島の周辺には、季節におうじて4つの気団(シベリア気団、揚子江気団、オホーツク気団、小笠原気団)がつくられます。
気団の違いを見分けるポイント
これらはすべて異なる空気の性質をもっており、次のポイントで見分けることができるのです。
- ●発源地
-
⇒発生したのは大陸上か、海洋上か?
- ●気温
-
⇒高緯度で発生したものは冷たく、低緯度では暖かくなる。
- ●水蒸気量(湿度)
-
⇒乾燥しているのか、湿っているのか?
では、これらのポイントにそって、日本の四季に影響をもたらす4つの気団を表にまとめてみましょう。
4つの気団の特徴を“表”にまとめてみる
それぞれの気団における「発源地・気温・水蒸気量(湿度)」の特徴は、次のとおりです。
気団名 | 発源地 | 気温 | 水蒸気量(湿度) |
---|---|---|---|
シベリア気団 | 大陸上 | 冷たい | 少ない(乾燥している) |
揚子江気団 | 大陸上 | 暖かい | 少ない(乾燥している) |
オホーツク気団 | 海洋上 | 冷たい | 多い(湿っている) |
小笠原気団 | 海洋上 | 暖かい | 多い(湿っている) |
大陸上でつくられる気団は「乾燥」しており、海洋上では「水蒸気量が多く」なります。
そして、北の高緯度で発生したものは「冷たい空気」となり、南の低緯度では「暖かく」なるのです。
なお、気団名は気団がつくられた地域の名称からつけられているので、地図上で確認するとより理解が進むでしょう。
4つの気団と日本の四季との関係
では、これらの気団と日本の四季はどのように関係しているのでしょうか。
春夏秋冬それぞれについて解説します。
春|揚子江気団
春は「暖かくて・乾燥した」揚子江気団の影響をうけます。
この気団は、西から東へと向かう風にのって日本にやってきて、春や秋にみられる移動性高気圧の発生に関わっているのです。
移動性高気圧はその名のとおり“移動する”ことが特徴であり、天気は周期的に変わります。
そのため、春には晴れの天気が続いたあと天気の悪い日がおとずれるのです。
梅雨|オホーツク気団・小笠原気団
梅雨の時期は、まず海洋上でつくられる「冷たくて・湿っている」オホーツク気団の影響があります。
そして、オホーツク気団がくる時期には「暖かくて・湿っている」小笠原気団もあらわれるため、この2つの気団はぶつかりあうのです。
つまり、冷たい空気と暖かい空気が接するため前線がうまれます。
このときにできる前線は停滞前線です。2つの気団の勢力はほぼ同じであり、進まず停滞しているように見えます。
天気予報では停滞前線ではなく梅雨前線(ばいうぜんせん)と言われますが、梅雨前線は停滞前線の一種であり、日本に雨をもたらすのです。
夏|小笠原気団
梅雨も終わりが近づくと、さきほどの「暖かくて・湿っている」小笠原気団の勢いが増してきます。
そして、小笠原気団は小笠原高気圧の発生に関わっています。
小笠原高気圧とは太平洋高気圧の一部であり日本列島の南東に位置し、その張り出しの強さが夏の暑さに影響するのです。
秋|揚子江気団・オホーツク気団
秋には「暖かくて・乾燥している」揚子江気団が発達し、西から東へと吹く風にのって日本にやってきます。
そしてこの時期には、「冷たくて・湿っている」オホーツク気団も発達しやすいのです。
そのため、梅雨時期と同様、性質の異なる2つの気団がぶつかりあって前線を発生させます。
このときの前線も停滞前線ですが、秋雨前線(あきさめぜんせん)です。梅雨の頃にできる梅雨前線より雨量は少ないものの、長引くことがあります。
冬|シベリア気団
日本の冬は寒くて日本海側を中心に大雪が降ります。これは、日本列島の北西にある「冷たくて・乾いている」シベリア気団の発達と関係しています。
大陸で発生したシベリア気団は風にのって日本海上を通過しますが、このとき海上の暖かい空気と水蒸気を含むのです。
そのため、海上の空気は暖かく湿っているものの上空は冷たく乾燥したままなので、大気は不安定となり雪雲が発達して雪が降ります。
まとめ|気象に関するテーマを深掘りしてみよう
今回は「気団とはなにか?」そして、日本周辺にある「気団の種類」と「四季との関係」についてお伝えしました。
簡単にまとめると、次のとおりです。
- 気団とは、気温や水蒸気量(湿度)がほぼ同じ「空気の塊」
- 地表面の影響をつよくうけているものを「地表気団」と言う。
◆日本周辺にある「4つの気団」と「四季との関係」
気団名 | 発源地 | 気温 | 水蒸気量(湿度) | 影響をあたえる季節 |
---|---|---|---|---|
シベリア気団 | 大陸上 | 冷たい | 少ない(乾燥している) | 冬 |
揚子江気団 | 大陸上 | 暖かい | 少ない(乾燥している) | 春・秋 |
オホーツク気団 | 海洋上 | 冷たい | 多い(湿っている) | 梅雨・秋 |
小笠原気団 | 海洋上 | 暖かい | 多い(湿っている) | 夏 |
日々の天気予報では詳しく解説しませんが、あたりまえだと思っていることに疑問をむけてみると、新たな知識や発見が得られるでしょう。
本サイトでは、気候に関するさまざまなテーマについて解説しています。(各記事はこちらからご覧いただけます)
ぜひ興味のあるテーマについて、深掘りしてみてはいかがでしょう?
【参考文献】
*コトバンク「気団」
*家庭教師のやる気アシスト|【理科】日本の気象 ~4つの気団と四季・梅雨の関係性~
*テラコヤプラス|気団とは?日本周辺の4つの配置や四季との関係をわかりやすく解説【中学理科】
(以上)