応急修理制度を徹底解説~災害で住宅が被害をうけた方は必読!

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災害で自宅が被害を受けた方、業者への修理依頼チョット待ってください! 自治体が修理費を支援する「応急修理制度」があります。

この記事では「制度の対象者」「支援額」「申請に必要な物」を解説していますよ。修理を依頼する前にぜひチェックしてみてくださいね。

目次

応急修理制度の基礎知識 ~住宅の修理費は自治体が負担

応急修理制度とは災害救助法で定められた被災者支援のひとつです。①自宅が一定程度の被害を受けた場合②日常生活に支障がある部分を修理する際、③自治体が修理費を負担するものです。

それでは、①から③について応急修理制度の基礎知識を解説しましょう。

①罹災証明書の被害認定が「準半壊以上」の世帯が利用できる制度

災害によって生じた住宅等の被害程度を公的に証明したものが「罹災(りさい)証明書」。応急修理制度を利用できる人は、この罹災(りさい)証明書の被害認定が「準半壊」以上の世帯になります。(準半壊は、令和元年8月28日から認定区分の一つとして追加されました。)

自然災害の場合、罹災(りさい)証明書は自治体が発行します。応急修理制度を使って自宅を修理したいと考えている人は、まず自治体で罹災(りさい)証明書の発行を申請しましょう。

◇関連記事「罹災証明書とは?手続きの手順や写真の撮り方などを解説」 https://bousai.nishinippon.co.jp/1617/

罹災証明書による被害の程度は6段階

自治体は内閣府が定めた「災害に係る住家の被害認定基準運用指針(以下、運用指針という)」にもとづいて被害認定します。

運用指針は令和3年3月に改定され、以下の6区分になりました。

◇罹災(りさい)証明書の被害区分

被害区分 住宅被害全体に占める被害割合 応急修理制度の対象可否
全壊 50%以上 修理することで居住が可能となる場合のみ対象
大規模半壊 40%以上 50%未満 対象
中規模半壊 30%以上 40%未満 対象
半壊 20%以上 30%未満 対象
準半壊  10%以上 20%未満 対象(令和元年8月~)
準半壊に至らない(一部損壊) 10%未満  対象外

※内閣府「災害に係る住家の被害認定」を元に独自に作成

②修理対象は日常生活に必要な最小限度の部分

応急修理制度の対象となるのは、居室、台所、トイレ等の「日常生活に必要な最小限度」の部分です。

修理しないと日常生活に支障がある部分なので、単に古くなった壁紙の交換や、ガスコンロからIHヒーターへの交換といった家電製品のグレードアップなどは対象外となります。

◆応急修理制度の対象

Q:住宅の応急修理の範囲はどこまでか

A:屋根等の基本部分、ドア等の開口部、上下水道等の配管・配線、 トイレ等の衛生設備の日常生活に必要な部分

※内閣府「災害救助法による住宅の応急修理に関するQ&A」より

③自治体の負担額には上限あり

応急修理制度を利用したい人が自治体へ申請すると、自治体が修理業者と契約を結びます。

自治体が負担する金額には上限があるため、それ以上の修理費が生じたときは申請者が差額分を支払います。

 

自治体が負担する修理費用の限度額

①大規模半壊、半壊の世帯・・・59万5千円以内

②準半壊の世帯・・・30万円以内

申請の注意点 ~被害部分の写真を撮っておく&直接契約はしない!

応急修理制度の申請は各自治体の窓口でおこないます。申請に必要なものは後述しますが、ここではそれに関連して注意すべき点をお伝えします。

被災後は気持ちも動揺しており、落ち着いて対応できないかもしれません。慌てずにできるよう、注意点や必要なものはメモで残しておくと良いですね。

申請するにあたっての注意点

➊被害部分の写真を撮っておく(スマホで撮っても問題ありません)

❷修理業者とは直接契約を交わさない(自治体がおこないます)

もし、申請前に業者と契約、修理費用を支払った場合は自治体に確認しましょう(自治体によって対応は異なります)。

申請に必要な書類 ~被災したら罹災証明書

応急修理制度が利用できるかどうかは、罹災(りさい)証明書の被害程度によることは既にお伝えしたとおりです。 

自治体から「罹災証明書を発行します」とホームページなどでお知らせがありますが、ご自分でも「被災したら罹災証明書をとる」ことを意識しておきましょう。

応急修理制度の申請に必要なものは次のとおりです。自治体によって追加書類が必要な場合もあるので、申請先の自治体に確認することをおすすめします。

応急修理制度の申請に必要なもの ※書類は自治体で入手できます

 1. 罹災(りさい)証明書

 2. 施工前の被害状況が分かる写真 

 3. 住宅の応急修理申込書(様式1号)

 4. 資力に関する申出書(様式2号) 

 5. 修理見積書(様式3号)※後日、提出可だが工事決定までに必要

修理に1か月以上かかるときは仮設住宅への入居が可能

ここで、応急修理制度と仮設住宅への入居の関係についてお伝えしましょう。

応急修理制度を利用した場合は「自宅を直して住み続ける」ことを想定しているため、当初、仮設住宅への入居はできませんでした

しかし、2020年7月から条件を満たした場合に限り、仮設住宅への入居が可能になりました。入居できる期間は、災害発生日から最長6ヶ月間です。

応急修理制度を使った場合であっても、仮設住宅に入居できる条件

・半壊以上で自宅に住むことができない

・自宅の修理期間が1ヶ月を超える

入居が可能となった背景には、修理期間中は避難所生活を続けざるを得なかったり、修理業者不足で修理期間の長期化などがあげられます。

たとえば、2019年秋に発生した台風15号19号では、応急修理制度を申請したうちの2割が、翌年8月になっても修理が終わっていませんでした(東京新聞TOKYO Web「台風から1年…遅れる住宅修理 千葉南部、応急制度申請も」より)。

条件付きではありますが、家賃の負担がない仮設住宅に入居できることで、経済的負担の軽減にもつながるでしょう。

なお、ここで言う仮設住宅とは、プレハブなどで建てられる建設型応急仮設だけでなく、行政が借り上げた民間アパートいわゆる「みなし仮設」も対象です。

◇関連記事「仮設住宅とはどんなところ?~災害救助法と実体験からご紹介~」 https://bousai.nishinippon.co.jp/460/

被災した人を支援する制度はたくさんある

応急修理制度は「災害救助法」にもとづく救助の一つです。この法律には被害の程度によって、寝具類や日用品といった生活必需品の支援等についても定められています。

実は、被災した人が自立した生活を送れるようになるための制度や相談窓口は、たくさんあります

内閣府が作成した『被災者支援に関する各種制度の概要(令和2年11月1日現在)』のなかには、「住まいの確保・再建のための支援」だけでも15の制度が掲載されています。すべてを理解しておくことは、とても難しそうですね。

内閣府が災害後の支援をまとめたリーフレット被災されたみなさまへ  災害時の「住まい」と「生活」の再建に向けて)を作成しています。

被災後は気持ちも動揺して制度についてじっくり確認することが難しくなります。「またいつ起こるかわからない災害」への備えとして「災害後の支援」を確認し、少しでも早く日常生活に戻れることを願っています。

 

【参考文献】

内閣府 防災情報のページ「災害に係る住家の被害認定」http://www.bousai.go.jp/taisaku/unyou.html

内閣府「被災者⽣活再建⽀援法の⼀部を改正する法律の概要」<4D6963726F736F667420506F776572506F696E74202D2089FC90B396408A549776837C839383608A4781698E7B8D7393FA92C789C1816A2E70707478> (bousai.go.jp)

内閣府「災害救助法による住宅の応急修理に関するQ&A の送付について」令和元年11月 21日付 http://www.bousai.go.jp/oyakudachi/pdf/siryo_50.pdf

内閣府 TEAM防災ジャパン【防災施策】災害救助法の応急修理対象一部損壊住宅に拡大へhttps://bosaijapan.jp/news/%e3%80%90%e9%98%b2%e7%81%bd%e6%96%bd%e7%ad%96%e3%80%91%e7%81%bd%e5%ae%b3%e6%95%91%e5%8a%a9%e6%b3%95%e3%81%ae%e5%bf%9c%e6%80%a5%e4%bf%ae%e7%90%86%e5%af%be%e8%b1%a1-%e4%b8%80%e9%83%a8%e6%90%8d%e5%a3%8a/

内閣府「災害救助法による住宅の応急修理制度の拡充~一部損壊(損害割合10%以上20%未満)への対象拡大~」http://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/r01/97/news_04.html

NHK政治マガジン「台風15号での住宅被害ー一部損壊も国の支援対象に拡大」https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/23995.html

東京新聞TOKYO Web「台風から1年…遅れる住宅修理 千葉南部、応急制度申請も」https://www.tokyo-np.co.jp/article/51984

日本経済新聞「自宅修理でも仮設入居可 7月豪雨から適用」https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61625840X10C20A7CE0000/

朝日新聞デジタル「(社説)被災住宅 「半壊」への支援確実にhttps://www.asahi.com/articles/DA3S14582984.html

リスク対策.COM「もしも大災害で社員が被災したら?災害救助法の応急修理、利用は見通し持って」https://www.risktaisaku.com/articles/-/21831

内閣府「被災者支援に関する各種制度の概要」令和2年12月発行http://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/pdf/kakusyuseido_tsuujou.pdf

内閣府「被災されたみなさまへ  災害時の「住まい」と「生活」の再建に向けて」令和3年6月作成http://www.bousai.go.jp/oyakudachi/pdf/kyuujo_d2.pdf

(以上)

 

備えておこう!おすすめの防災グッズ

これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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この記事を書いた人

東北出身&在住フリーライター。
広告代理店・NPO・行政で勤務後、在宅ワーカーに転身。
妊娠中に東日本大震災に遭い、津波から避難・仮設住宅で子育てをする。
本サイトでは「命を守るために知っておきたいこと」「日常に潜むリスクへの備え」などについて発信します。
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