“異常震域”を2つのキーワードと事例でわかりやすく解説!

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地震には「異常震域」という現象があります。

ただでさえ地震はこわいのに、“異常”と聞くと余計に恐怖心が増すのではないでしょうか。

しかし、異常震域は異常な現象ではなく、地震のタイプとして十分ありえることだと言います。

今回は、そんな異常震域について2つのキーワードを用いながら詳しく解説します。

本記事で地震についての知識を得て、ぜひ備えに生かしてくださいね。

目次

異常震域とは震源から離れた所で揺れがおきること

「震源地の近くは地震の揺れが大きい」、これは誰もが思う自然な考えでしょう。

しかし、異常震域はこのもっともな考えに反する現象です。つまり、異常震域は「震源から離れたところで大きい揺れを感じる」のです。

異常震域をもたらすのは、「深発地震」とよばれるタイプの地震です。そして「海洋プレート」の性質が関係してひきおこされます。

この「深発地震」と「海洋プレート」をキーワードに、異常震域とは何かについて詳しく解説します。

異常震域の原因➀ 震源が深い地震「深発地震」

深発地震とは、震源が地下深いところにある地震のことです。

コトバンク(※百科事典マイペディア)によると、それは『震源の深さが60〜100kmより深い地震』だとされています。

ニュースでも地震がおきると「震源の深さは○km」と伝えられますね。

異常震域をもたらすのは、この深発地震なのです。

深発地震の震源は沈み込んだ“海洋プレート”の内部

深発地震の震源について、もう少し詳しくみていきます。

下の図は、日本でおこる地震のタイプをしめしたものです。震源の場所が黄色と緑色でぬられた四角形で示してあります。

出典:国土交通省四国地方整備局ホームページ「地震はなぜ起こるの?(海溝型地震、直下型地震)」※赤丸は筆者加筆http://www.skr.mlit.go.jp/bosai/bosai/tounannkai/kisochishiki/tunamikankei/jishinnaze/jishinnaze.htm

異常震域をもたらす「深発地震」の震源は、左下の赤丸で囲ってある部分です。

ほかの震源とくらべても、深発地震の震源がもっとも深い場所に位置していることが確認できるでしょう。

さらに、深発地震の震源は海側のプレート(=青色二重線)の内部にあります。

この「海側のプレート(以下、海洋プレートという)」が異常震域の原因を知る2つ目のキーワードです。

異常震域の原因➁ 海洋プレートの性質

地球の表面はプレートとよばれる固い岩盤でおおわれており、プレートには2種類(海洋プレート・大陸プレート)があります。

日本列島も海洋プレートと大陸プレートの上にあるのですが、海洋プレートが大陸プレートの下に沈みこんでいる場所があるのです。

イラストで確認しましょう。

出典:国土交通省四国地方整備局ホームページ「地震はなぜ起こるの?(海溝型地震、直下型地震)」※赤丸・青枠は筆者加筆http://www.skr.mlit.go.jp/bosai/bosai/tounannkai/kisochishiki/tunamikankei/jishinnaze/jishinnaze.html

青い四角形で囲んだ太平洋プレート(=海洋プレート)と、ユーラシアプレート(=大陸プレート)があります

そして、オレンジの丸で示している部分をご覧いただくと、日本列島がのるプレートには、太平洋プレート(=海洋プレート)がユーラシアプレート(=大陸プレート)の下に沈み込んでいる部分があることを確認できるでしょう。

海洋プレートでは地震の揺れが弱まりにくい

出典:国土交通省四国地方整備局ホームページ「地震はどのように伝わるの?」http://www.skr.mlit.go.jp/bosai/bosai/tounannkai/kisochishiki/tunamikankei/donoyouni/donoyouni.html

地震の揺れの伝わり方では、海洋プレートには地震波が弱まりにくい性質があるとされています。

※地震波とは「地中に生じた振動が周囲に伝わる波」のことです。正確にはわたしたちが感じる揺れ地震動とは異なるものですが、今回はわかりやすく解説するため、地震の揺れとしてお伝えします。

そのため、海洋プレート内部を震源とする深発地震のゆれが、さほど弱まることなく海洋プレート内を伝って太平洋側にとどくのです。

これが異常震源の現象です。

異常震域のメカニズムを気象庁のイラストで確認!

ここまでお伝えしたことをおさらいしながら、異常震域のメカニズムを確認しましょう。

まず、気象庁では異常震域について次のように説明しています。

震源が非常に深い場合、震源の真上ではほとんど揺れないのに震源から遠くはなれた太平洋側の場所で揺れを感じることがあります。
この現象は、「異常震域」という名称で知られています。

引用:気象庁「震度・マグニチュード・地震情報について」 ※太字は筆者加筆

『震源の真上ではほとんど揺れない』とは、どういうことでしょう。

震源の真上にあるマントルでは地震の揺れが弱まりやすい

下のイラストは、同じく気象庁ホームページのものです。

出典:気象庁「震度・マグニチュード・地震情報について」https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq27.html#12

すでにお伝えしたとおり、異常震域をひきおこす地震(深発地震)の震源は、地中の奥深く大陸プレートの下に沈み込んだ海洋プレート内にあります。

そして、この「海洋プレートは地震の揺れが弱まりにくい」という性質があります。

一方、震源の真上には「マントル(上のイラスト黄色い部分)」そして「大陸プレート」があります。

海洋プレートとは異なり、マントルは地震の揺れが弱まりやすいとされているのです。

そのため、深発地震の震源の真上ではほとんど揺れず、震源から離れた太平洋側で揺れを感じるという現象がおきるのです。

異常震域の事例~日本海側が震源で太平洋側で揺れを観測

NHK『「異常震域」とは・・・何が異常?』には、2003年から2022年に発生した7つの事例が掲載されています。

ここでは、そのなかからひとつの事例をご紹介しましょう。

深さ394km・太平洋側で震度3

2021年9月29日、日本海中部を震源とする地震(マグニチュード6.1)が発生、震源の深さは約400キロメートルと深く、異常震域がおきました。

出典:NHK『「異常震域」とは・・・何が異常?』
https://www3.nhk.or.jp/news/special/saigai/basic-knowledge/basic-knowledge_20220513_01.html

上の画像からわかるように、日本海側ではほとんど揺れが観測されず、太平洋側に揺れが集中しています。

この地震では『北海道・青森県・岩手県・福島県・茨城県・埼玉県』で震度3を観測したとされています。

平面上だけからこの現象をとらえると、とても不思議に感じるものです。

しかし、異常震域をもたらす「深発地震の震源は奥深いところ」にあり、そこでは「地震の揺れが伝わりやすい海洋プレートが、大陸プレートの下に沈み込んでいる」ということをイメージすると、理解できるのではないでしょうか。

異常震域は異常ではない~地震について正しい知識を得よう~

今回は、震源地と地震の揺れを観測する場所がはなれている現象「異常震域」について解説しました。

言葉のイメージからすると、なにか“異常”な現象のように思えてしまいますが、そうではありません。

言葉の意味をただしく理解していないと、過剰な不安や心配をもたらしてしまうこともあるのです。

とは言え、地震について学ぼうとしたとき、どの視点からみるかによって用いられる用語も変わってきます。

たとえば、今回お伝えした“沈み込んでいる海洋プレート”は「スラブ」とよばれています。そのため、スラブ内を震源とする地震は「スラブ内地震」や「プレート内地震」と言われるのです。

また、発生のメカニズムや震源の位置から「内陸型地震(直下型地震)」と「海溝型地震」にわけることもできます。

本サイトの“地震”タグには、「内陸型地震と海溝型地震の特徴」や「日本で地震が多い理由」といった地震そのものについての解説から、「災害用ブルーシート」の種類と使い方、そして、アニメ「東京マグニチュード8.0」の作品レビューまで、実に33本の記事があります。

ぜひこちらもご覧になって、地震についての知識を得て備えにいかしてくださいね。

【参考文献】
*気象庁【防災メモ】~異常震域~
*気象庁「震度・マグニチュード・地震情報について」
*地震調査研究推進本部「スラブ内地震」

(以上)

備えておこう!おすすめの防災グッズ

これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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この記事を書いた人

東北出身&在住フリーライター。
広告代理店・NPO・行政で勤務後、在宅ワーカーに転身。
妊娠中に東日本大震災に遭い、津波から避難・仮設住宅で子育てをする。
本サイトでは「命を守るために知っておきたいこと」「日常に潜むリスクへの備え」などについて発信します。
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