ライターの永野です!
ある日私は、火事に巻き込まれる夢を見ました…。
夢のなかでは隣の家が取り壊しになるとのことで、内装を全部壊していました。が、なぜかそのなかで野焼き的な行事が始まり、火の粉が我が家に…。最初は傍観していたのですが「こりゃやばいのでは」と思い、長男と119番。「火災です」といっても電話の相手は取り合ってくれず、気づけば2時間くらいワープしていました(夢なのでね)。
パジャマだった息子と私はとりあえず逃げられるようにと2階で着替えを探し、1階に降りて脱出しようと思ったのですが、階段の下はすでに火の海でした。仕方なく2階のいちばん端の部屋の窓を開けて近所の方に助けを求めるのですが、もう炎はすぐそこまで迫っているし、野次馬もあたふたするばかりだし消防車は来ないし…。「あ、私裸足じゃん。避難グッズ用意しとけばよかったなぁ~」などと呑気に思っているところで、アラームが鳴って目が覚めました(笑)。
現実で起これば大騒動ですが、夢だったのでどこか客観的だったり冷静だったり。一応、夢占いも調べたところ、火災は炎の度合いやシチュエーションにもよりますが、「吉夢」であることが多いそうです。しかし、やはり「起こらないで欲しい事態」がいつ起こっても大丈夫なように、きちんと備えしておくべきだと反省しました。
というわけで、今回も地震に関するテーマを1つ。地震の多い国として知られるチリでの地震をランキング形式でお届けします。なぜ地震が多いのか、地震大国としてどういった防災に取り組んでいるのかも含め、見ていきましょう。
観測史上最大の地震が起こった国「チリ」
歴史を辿ると世界各地で大きな地震が起こっており、日本でも関東大震災や阪神淡路大震災、東日本大震災など、世界でも知られる大震災は少なくありません。そんななか、観測史上最大の地震を記録したのはチリです。
まずは、過去に起こったチリ地震に関する内容を、解説します。
1960年に起こった「チリ地震」とは
チリ地震は、1960年5月23日に起こりました。南米チリ沖での地震は、現地時間15時過ぎ、日本時間の午前4時過ぎに発生。地震の規模はマグニチュード9.5と、東日本大震災のなんと5倍ものエネルギーで、2023年現在も世界の観測史上最大の地震として記録に残っています。
岩盤が壊れた範囲を見てみると、チリ沖から南北1100km、東西200kmで、これは北海道の根室沖から関東沖の岩盤が一気に動いたのと同等なのだそうです。
ちなみに、本震が起こる前にはマグニチュード7クラスの地震が5~6回あり、余震もマグニチュード7クラスのものが3回ほど起こりました。これによる直接的な死者は1,743名、負傷者は667名。チリの首都サンティアゴをはじめ、全土におよんで街は壊滅状態となりました。
ハワイや日本にも津波の被害が
海沿いの地震で注意したいのが、地震後の津波です。チリ地震では本震発生の15分後に、なんと18メートルにもなる津波がチリ沿岸部を襲いました。平均時速750kmの津波はチリだけでなく世界各地に被害を及ぼし、およそ15時間後にはハワイ諸島へ、その後日本にも到達しています。
特に、三陸海岸沿岸は被害が大きく、最大で6.1メートルの津波が起こっています。チリ地震後の津波による日本での被害は、死者・行方不明者142名、負傷者855名と非常に深刻なものでした。
地震大国チリ、その特徴は
史上最大の地震が起こった地であるチリは、日本と同じく地震大国として知られています。なぜチリでは多くの地震が起こるのか、チリでの地震にはどういった特徴があるのかを、確認しましょう。
チリで地震が多いのはなぜ?
チリは南アメリカ大陸の太平洋岸に位置しています。ここは、環太平洋造山帯の一部となっており、ペルー・チリ海溝やアンデス山脈などの地殻活動が活発な場所です。こうした地形の問題から、地震が起こりやすい土地となっています。
ちなみにチリでは地震だけでなく火山活動も多く観測されており、豊かな自然が多くの災害を引き起こすことから、客観的に見ると「人が快適に住めるとは言い難い環境」という印象も受けるかもしれません。
チリで起こる地震の特徴
チリで発生する地震には、以下の3つの特徴があります。
・大地震は大きな前震を伴うケースが多い
・マグニチュード8~9の巨大地震の発生頻度が高い
・地震による大きな津波が発生することも多い
地震が多く起こる地域はチリに限らず世界にいくつかあります。日本もその1つですが、小さな地震が頻発することはあるものの、甚大な被害を伴う大地震の発生頻度はチリほどではありません。
チリでの大地震は大きな津波を発生させ、チリ周辺はもちろん太平洋諸地域に大きな影響を与えるため、注意が必要です。
チリ地震に関するさまざまなランキング
防災新聞では、過去に世界で起こった地震をランキング形式でご紹介しました。世界で見ても、チリでは大きな地震が複数あることがわかりましたが、チリで過去に起こった地震を、マグニチュード・被害者・被害額ごとに見ていきましょう。
チリ地震ランキング|マグニチュード
まずは、チリで起こった地震をマグニチュードの大きかった順にご紹介します。
発生場所 | 発生日 | マグニチュード |
チリ(チリ沖) | 1960年5月23日 | マグニチュード9.5 |
マウリ沖 | 2010年2月27日 | マグニチュード8.5 |
アタカマ砂漠 | 1922年11月11日 | マグニチュード8.3 |
チリ北部 | 2015年9月16日 | マグニチュード8.3 |
サンティアゴ | 1949年4月10日 | マグニチュード8.2 |
アリカ付近 | 2014年4月1日 | マグニチュード8.2 |
1900年代初め頃から2000年代以降まで、マグニチュード8を超える地震が多く発生していることがわかります。
チリ地震ランキング|死者・負傷者
続いて、チリで起こった地震を、死者・負傷者数でランキングにしました。死者や行方不明者、負傷者の数が不明なところもありますが、総合してランキングをつけています。
発生日 | マグニチュード | 死者・行方不明者 | 負傷者 |
1960年5月23日 | マグニチュード9.5 | 1,655人 | 3万4千人以上 |
2010年2月27日 | マグニチュード8.5 | 802人 | 200万人以上 |
1922年11月11日 | マグニチュード8.3 | 1,000人以上 | 不明 |
1949年4月10日 | マグニチュード8.2 | 数百名 | 数千名 |
2015年9月16日 | マグニチュード8.3 | 15人 | 数百名 |
やはり1960年のチリ地震では多くの方が亡くなっていますが、負傷者は2010年の地震が圧倒的に多い結果となっています。2015年にも大きな地震が起こっていますが、亡くなった方は15名と上位4つの地震よりも大幅に減少傾向です。
チリ地震ランキング|被害額
最後に、チリで起こった地震を被害額の多い順にランキングにしました。日本円は、2023年3月末現在のレートで換算しています。
発生日 | マグニチュード | 被害額(米ドル) | 被害額(円) |
2010年2月27日 | マグニチュード8.5 | 約3,400億ドル | 約45兆円 |
1960年5月23日 | マグニチュード9.5 | 約2,280億ドル | 約30.2兆円 |
2015年9月16日 | マグニチュード8.3 | 約1,000億ドル | 約13.2兆円 |
1985年3月3日 | マグニチュード7.8 | 約3.5億ドル | 約463.7億円 |
2014年4月1日 | マグニチュード8.2 | 約2.5億ドル | 約331.2億円 |
1960年に起こった世界最大のチリ地震よりも、2010年に起こった地震での被害額のほうが多くなっています。大きな揺れはもちろん、大津波により首都サンティアゴで多くの建物が倒壊するなどの被害もあり、被害額に影響したと考えてよいでしょう。
地震大国チリの防災事情
地震が多く起こる国では、日本のように地震対策や防災に注力していることも多くあります。大地震の発生頻度が高いチリでは、どういった防災への取り組みを行っているのでしょうか。
「耐震」よりも「津波対策」に注力
チリでは地震による被害だけでなく、津波の影響を深刻視しています。2010年に起こった地震でも、津波により建物などに影響がありました。また、津波警報が発令しているなかでも避難する人が少なく、より死者や負傷者を増やす結果となったことなどが、課題として挙げられています。
国や自治体は地震は避けることができなくても、その後の津波は正しい知識や認識があれば被害を最小限に抑えることができると考え、津波対策の強化を図っているようです。海岸や港のインフラ整備で、津波が街に到達して被害を与えることもできるだけ避けられるようにするなど、さまざまな視点から津波対策に注力していることがわかります。
自治体での取り組み
地方自治体でも、緊急時の行動計画を立てたり、防災のための設備を強化したりと、さまざまな取り組みを行っています。しかし自治体ごとに経済状況は異なり、使える予算はまちまちであることから、取り組みに差が出ていることが課題だといえるでしょう。
各自治体がコミュニティでの活動や都市計画、港湾の整備などさまざまな観点から防災を強化するには、防災に関する幅広い知識はもちろん、実現のための資金を用意することも重要です。
チリ地震の被害は深刻!日本でも防災強化を
チリ地震をさまざまなランキングで見てみると、深刻な被害が定期的に及んでいることがわかります。地震による死者は世界で起こった大震災による犠牲者と比べると非常に多いわけではなく、むしろマグニチュードが大きな割には少ないといえるレベルです。
チリはそもそも人口が2,000万人弱と少なく、国土も広いことが理由の1つとしてあげられますが、やはり地震が頻発する国として、1人ひとりの意識が高いことも事実でしょう。
日本も地震大国で、過去に起こった地震では2万人を超える死者・行方不明者が出たこともあります。今後いつ起こるか分からない大地震で、1人でも多くの方の命が救われるよう、国や自治体はもちろん、1人ひとりの防災意識も高めていきたいですね。
編集後記
被害総額をランキングにまとめていて、「数千億ドル」というよくわからないケタの数字に驚きました。しかし、トルコ・シリア地震でもトルコだけで13兆円を超える被害が出ていたので、これだけ大きな地震が起これば、多額の被害額になるのは当然か、と納得しました。
ちなみに、東日本大震災の被害総額は10兆円弱と報告されています。日本の地震対策はすごいと世界からも認められていますが、大地震に強い建物などが多いことも、被害額に影響していそうです。
「地震」という1つのテーマでも、さまざまな視点で調べていくと知らないことはまだまだたくさんあります。防災新聞を通して、私が学んだことをこれからも皆さんと少しでも共有できればうれしいです。
参考サイト
・津波に強い地域づくり技術の向上に関する研究詳細計画策定調査・実施協議報告書
・観測史上最大「チリ地震」から60年 地球の裏側からの津波が怖い3つの理由