DHEAT(災害時健康危機管理チーム)は支援の伴走者として被災者をまもる

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災害発生時には助けを求める人・助けようと懸命に活動する人、それぞれが混乱下におかれます。

そして、避難生活のなかにもあらゆる困難があります。

このような状況のなか、DHEAT(ディーヒート)は、被災自治体(都道府県・保健所・市町村)の業務をサポートし、ともに被災者の命と健康をまもるために取り組むチームです。

今回は「DHEATとは何か?」について、DHEATがサポートする都道府県・保健所の役割を確認しながら解説します。

混乱下のなかあらゆる支援がおこなわれる被災地において、DHEATの存在は欠かすことができません。ぜひDHEATについて学びましょう。

目次

DHEATの概要~直接的支援ではなく全体のマネジメント支援

はじめに「DHEATはなにをするのか?」そして「活動期間とチームメンバーは?」といった基本事項を解説します。

DHEATは災害時の「健康危機管理」をおこなう

DHEAT(Disaster Health Emergency Assistance Teamの頭文字)は、「ディーヒート」と読み、正式名称を「災害時健康危機管理チーム」といいます。

この「健康危機管理」が何かを知ることで、DHEATを理解しやすくなるため、まずはこの点を確認しましょう。

コトバンクには、次のように記されています。

◆「健康危機管理」とは(コトバンクより)

医薬品・食中毒・感染症・飲料水など何らかの理由で国民の生命健康の安全を脅かす事態が生じた場合に、厚生労働省の所管で行われる、健康被害の発生予防拡大防止治療等に関する業務。
また、自然災害・犯罪・事故・テロなどで不特定多数の国民に健康被害が発生・拡大する可能性がある場合に、公衆衛生を確保するためにとられる対応をいう。

出典:コトバンク デジタル大辞泉「健康危機管理」 ※太字は筆者加筆

つまり、簡単に言い換えるなら、健康危機管理とは“国民の生命・健康に危機が生じたときにおこなわれる対応”です。

被災地の調整本部・保健所をサポートする

DHEATの活動は、被災者の健康をまもるため、災害時に都道府県が設置する「保健医療調整本部」と公的機関である「保健所」を応援することです。

くわしくは後述しますが、DHEATは被災者を直接支援するのではなく「支援体制をととのえたり、支援者が適所で活動できるよう調整」します

DHEATの活動期間・メンバー

DHEATの活動は、急性期から慢性期までの1週間以上が標準とされていますが、数週間から数ヶ月にわたることもあります。

また、DHEATのメンバーは、専門的な研修と訓練をうけた都道府県(おもに保健所)の職員で構成されます。具体的な資格は、多種多様で次のとおりです。

DHEATの構成メンバー

医師、歯科医師、薬剤師、獣医師、保健師、臨床検査技師、管理栄養士、精神保健福祉士、環境衛生監視員、食品衛生監視員、その他の専門職及び業務調整員など 

被災地のニーズによってメンバーを招集し、5名ほどが「1班」となって編成されます。

DHEATの活動内容~災害時におこりえる混乱と健康への影響とは?

被災地支援は市町村が中心でおこなわれるが・・・

被災地での支援活動は、その地域を熟知している市町村が中心となって行われます。

被害状況や支援ニーズをいち早く把握・分析し、支援者や支援物資等の調整をおこない、すみやかに支援につなげなければいけません。

しかし、大規模な災害であればあるほど、職員みずからも被災するなど現場は混乱下におかれます。

もちろん、被災地支援は市町村だけでなく都道府県(保健所)もおこないますが、被災自治体だけでは客観的かつ迅速な判断が困難になることもあります

そこで活躍するのが、DHEATです。

あらゆる情報が錯綜・支援団体の対応も負担

大規模な災害時には、都道府県に災害対策本部が設置され、その下に保健医療調整本部(以下、調整本部)がおかれます。DHEATはこの調整本部の業務をサポートします。

災害時には、体制面において次のことがおこりえます。

◇災害時におこりえること(体制面)

・多くの情報が点在し、全体像がつかみにくい
・健康危機に対応する組織は多様であり、指揮系統があいまいになりがち
・支援を必要とする人や場所にたいして、提供できる支援が不足 
・被災地にきた支援組織への対応が、被災自治体の負担になる
・支援組織の活動場所が、支援ニーズにもとづかない所になる

これらの状況をふまえ、調整本部では下記の活動をおこないます

現地のニーズや情報を収集、集約して分析
保健医療活動に関する全体的な指揮、連絡
支援の需給バランスを把握、横断的に活動できるよう全体調整 など

住民の健康をたもつのが困難になる

さらに、避難生活をおくる被災者は次のような状況下におかれます。

◇災害時におこりえること(医療・保健・衛生面)

・病院が被災し、適切なケガの治療や分娩が難しくなる
薬や食料が入手しにくくなる
・運動不足や慣れない避難生活によるストレスの発生
・食中毒やトイレの環境悪化、手洗い不足による感染症発生リスク
・ペットや動物の飼育環境が悪化 など

これらは、持病を悪化させるだけでなく、あらたな病気の発生(二次的健康被害)へとつながる危険があります。

平時における住民の健康をまもるための取り組みは、保健所が市町村と連携しておこなっています。DHEATは災害時、この保健所の機能をサポートします。

そこで次に、保健所がどのようなことをしているのか確認しましょう。

保健所は「保健・医療・福祉」を広域かつ専門的にカバー

保健所は「保健・医療・福祉」各分野において、住民の健康に関するさまざまな業務をおこなっています。

出典:厚生労働省 健康医療「地域保健」

心身の健康相談から食品衛生や水質調査にいたるまで、その範囲は実に幅広いものです。

災害時には、これら1つひとつに影響がおよびます

そのため、保健所はDHEATの応援を得ながら、被災者が二次被害で苦しむことが極力ないよう支援活動をおこないます

DHEAT(災害時健康危機管理チーム)の現状を各通知と資料に学ぶ

DHEATは平成23年東日本大震災での教訓をふまえ、平成28年熊本地震や平成30年7月豪雨などで活動しています。

おなじく被災地で活動するDMAT(ディーマット:災害派遣医療チーム)は、平成7年に発生した阪神淡路大震災がきっかけで発足しました。

DMAT(災害派遣医療チーム)とくらべると、DHEATの体制や運用については整備段階にあると推測できます。そのためここでは、DHEATの現状を知るため、厚生労働省がだしたおもな通知と研究成果物をご紹介します。

活動要領およびDHEAT事務局の設置

厚生労働省は平成30年3月20日『災害時健康危機管理支援チーム活動要領以下、活動要領)を通知しています。

ここでは活動理念にはじまり、用語の定義・国や都道府県の役割などDHEATの活動内容等について規定されています。

その後、この活動要領は令和4年3月29日に一部改正されました(改正内容はこちらから)。

改正点のひとつに「DHEAT事務局の設置」があります。これをうけて、令和4年度から「一般財団法人 日本公衆衛生協会」内に事務局がおかれ、すでにDHEAT基礎編研修が開講されています。

研究の成果物『DHEAT活動ハンドブック』

平成31年3月『DHEAT活動ハンドブック(本編)以下、ハンドブックという』が発行されました。これは、災害時の地域保健支援と受援体制の構築に関しておこなわれた研究の成果物(※)です。(※)平成30年度 厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)「広域大規模災害時における地域保健支援・受援体制構築に関する研究」研究成果物

たとえば、DHEATが被災地で効果的な活動をするためには、サポートをうける「調整本部・保健所が災害発生時なにをすべきか」が、明確になっていることが重要だとされています。

そのため、ハンドブックにはまず、調整本部・保健所それぞれが発災時にすべきことが時系列で示されています。それにつづいて、DHEATがチェックすべき項目が「発災24時間以内・3日以内・3日目以降」にわけて記されています。

このハンドブックには、被災自治体がまとめた各資料および熊本地震で活動したDHEATの活動等をふまえた、DHEATの現状から今後の方向性までが詳細な資料とともに記されています。

保健医療から「保健医療福祉」調整本部へ変更

厚生労働省は令和4年7月22日『大規模災害時の保健医療福祉活動に係る体制の整備についてと題した通知をだしています。

ここでは、これまでの保健医療では福祉の対応ができないため「保健医療福祉調整本部」としたことや各支援チームの連絡窓口をもうけること、保健医療福祉活動にあたって求めることなどが示されています。

まとめ

被災地にはDMAT(災害派遣医療チーム)やDPAT(災害派遣精神医療チーム)など、あらゆる支援活動がおこなわれます。

しかし、いくら専門のスキルをもつ支援であっても、必要とされる人や場所へ速やかにかつ効果的にとどかなければ、その資源は生かしきれません

そのようなことがおきないよう、DHEATは被災自治体(都道府県・保健所・市町村)の調整機能をサポートします

DHEATに求められることは、災害の規模や種類によって異なるのかもしれません。しかし、毎年のように災害がおき、そして巨大地震の発生が予想されている日本において、DHEATが欠かせない存在であることに変わりはありません。

災害から生きのこった被災者の命・健康が失われることがないよう、今後もDHEATをとりまく環境がととのっていくことを願っています

【参考文献】
厚生労働省:災害時健康危機管理支援チーム について「DHEATとは?」
厚生労働省「災害時健康危機管理支援チーム活動要領」
厚生労働省「大規模災害時の保健医療福祉活動に係る体制の整備について」
全国保健所長会「保健所の活用の仕方~どんな時に頼れば良いの?~」
『DHEAT活動ハンドブック(本編)』平成30年度 厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)「広域大規模災害時における地域保健支援・受援体制構築に関する研究」研究成果物

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(以上)

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この記事を書いた人

東北出身&在住フリーライター。
広告代理店・NPO・行政で勤務後、在宅ワーカーに転身。
妊娠中に東日本大震災に遭い、津波から避難・仮設住宅で子育てをする。
本サイトでは「命を守るために知っておきたいこと」「日常に潜むリスクへの備え」などについて発信します。
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