災害は恐ろしいものですが、“事前の避難”によって守られる命もあります。
たとえば、“地震の揺れ”に対してあらかじめ避難することはできませんが、“地震で発生する津波”からは事前の避難が可能です。
今回ご紹介する「逃げなきゃコール」はこの事前の避難をうながす取り組みです。
それは、離れた場所に大切な家族や知人が住んでいる人が、その家族・知人の命を守るためにできることでもあります。
ぜひご一緒にこの取り組みに参加しましょう。
「逃げなきゃコール」が必要な理由
くり返しますが「逃げなきゃコール」とは、災害の危険がある地域に住む人に避難をうながすための取り組みです。
これは「平成30年西日本豪雨※(以下、西日本豪雨という)」の教訓をもとにうまれたもので、国土交通省等がおこなうプロジェクトの一環です。(国土交通省「逃げなきゃコール」サイトはこちらから)
はじめに、この災害で何があったのか?そして、なぜ「逃げなきゃコール」が必要なのか解説します。
※平成30年西日本豪雨・・・西日本を中心とした広い範囲で記録的な大雨となり、死者237名・行方不明者8名という人的被害が発生。参考:内閣府 防災情報のページ「令和元年版 防災白書|特集 第1章 第1節 1-1 平成30年7月豪雨(西日本豪雨)災害)
災害リスクのある地域でも7割が避難しなかった
西日本豪雨では、土砂災害のリスクがある地域に住む人のうち、およそ74%の人が避難しなかったとするデータがあります。(参考:政府インターネットテレビ「家族の命を守るために『逃げなきゃコール』を活用しよう!)
そこには「この程度ならまだ平気」や「自分は大丈夫」といった気持ちがあったのかもしれません。
このようなことは、西日本豪雨にかぎらず、近年災害がおきた地域ではたびたび聞かれることだと言います。
一体なぜそのような心理になるのでしょう。
「まだ大丈夫」は思い込みかもしれない
大きな事故や災害に遭遇したとき、人間は「正常性バイアス」という心理状態になることがあるとされています。
これは、命の危険が迫っているにもかかわらず「たいしたことない」「まだ大丈夫」といった先入観や偏見(バイアス)によって、正常の範囲内だと思い込むものです。
平常時においては、危険な状況に対して過度にストレスを感じずにいられるために必要だとされています。
しかし、災害時においては、命を守るための避難であっても、それをさまたげる要因になってしまうのです。
あっという間に避難できない状況に・・
「判断を誤ると、もはや避難できない状況をもたらすことがある」このことがよくわかる動画をご紹介します。
それは、政府インターネットテレビ「家族の命を守るために『逃げなきゃコール』を活用しよう!(2分45秒)です。
ここには、西日本豪雨の被災地のひとつ「広島市安芸区」の防犯カメラがとらえた映像が映っています。
はじめは傘をささずに歩く人もいるほどだった雨が、1時間後には車が押し流されるほどの濁流となっているのです。
いかに「早めの避難」が大事かということを、この映像からは知ることができます。
避難行動をうながす人が必要
もちろん、土砂崩れや津波など災害の発生が予想されるとき、気象庁や自治体は避難情報を発表します。
しかし、それらの避難情報が実際の避難行動へとつながらなければ、命を守ることは難しくなってしまいます。
小さいお子さんや体に不自由があるなど、自分の力だけでは避難がむずかしい人もいます。そのような場合『その避難行動をサポートする人』が必要ということは、容易に想像できるでしょう。
これと同じように、避難の必要があるのに行動できずにいる人に対しても『その行動をうながす人』が必要なのではないでしょうか。
そのための取り組みが「逃げなきゃコール」なのです。
逃げなきゃコールの利用方法「アプリの入手」と「地域登録」
ここからは「逃げなきゃコール」で避難をうながすまでの流れやその特徴、対応しているツールをお伝えします。
どうやって命を守るのか?
逃げなきゃコールとは、あらかじめ「地域を登録」し、そこに発生した「避難情報の通知」をもとに、「電話で避難をうながす」ものです。
親御さんと離れて暮らしているお子さんを例に、その流れを確認してみましょう。
◆「逃げなきゃコール」の流れ
➀お子さん/逃げなきゃコールに対応しているアプリ等を入手
↓
➁お子さん/離れて暮らす家族等が住む「地域を登録」する
↓
登録地域に【災害・避難情報】が発生!
↓
③お子さん/アプリに通知がとどく
↓
④お子さん/親御さんに電話をかけて【避難をうながす】
↓
⑤親御さんは避難行動をとり、命を守る!
事前に登録をすませておけば、いざという時には簡単に情報が入手できるので、とくにむずかしい作業もなく取り組むことができるでしょう。
文字ではなく声で避難をよびかける意義
逃げなきゃコールの取り組みは、 “文字”ではなく“声”で避難をうながす点もポイントでしょう。
インターネットの普及でさまざまな情報が“文字”によって発信されています。しかし「インターネットやメールは苦手」という人もいます。
もちろん、文字情報で避難をうながすことも大事ですが、“声”をとおして切迫した状況を伝えることで、より避難行動につながりやすいという面もあるでしょう。
「逃げなきゃコール」に対応するツール(NHK・au・Yahoo!・NTTドコモ)
現在(2023年2月17日時点)、次の4つのツールが「逃げなきゃコール」に対応しています。
もしかしたら、すでに情報収集手段として使っているものがあるかもしれませんね。
ぜひ離れて暮らす大切な人の地域を登録して、災害時にそなえましょう。
まとめ|正しい情報の伝播で助かる命がある!
2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災では、正しい情報の伝播によって、多くの命が守られた事例があります。
それは、津波からの避難として校庭に避難したものの「ここにも津波がくるようだ」という情報が伝わり、校舎の上階に移動したことで助かったというものです。
逃げなきゃコールは、自治体などからの確かな情報をもとにした避難の呼びかけです。
そして、その呼びかけをおこなうのは、災害の危険がある地域からは離れた所にいる人です。だからこそ冷静に情報を受けとり、正常性バイアスにとらわれることなく適切な判断ができているのかもしれません。
近年では日本のあらゆる地域で災害がおきています。正しい情報と判断にもとづいた避難がとれるよう、一人でも多くの方が「逃げなきゃコール」に取り組み、そして大切な人の命を守っていきましょう。
(以上)