災害は、自然災害・人為災害・特殊災害の大きく3つに分類されます。自然災害についてはイメージがつきやすいという方も多いでしょうが、人為災害、特殊災害については具体的にどういったものをいうのかわからない、ということもあるのではないでしょうか。
今回は、3つの災害のなかの特殊災害について、どういった災害なのか、災害の種類や具体例、特殊災害にはどのような対策ができるのかなどを解説していきます。
特殊災害とは自然現象以外が要因となる災害
特殊災害は、自然災害、人為災害以外の災害のことをいいます。ちなみに自然災害は地震や台風、水害など自然現象によるもので、人為災害は電車や自動車などの交通事故、大気汚染などの都市災害といった、人為的な要因によるものです。
対して特殊災害は、化学物質が漏洩して起こる災害など、自然災害、人為災害に当てはまらない災害を指します。具体的には化学系、爆発系、生物兵器、放射性物質、核などを使った災害などです。
NBC災害と呼ばれることも
特殊災害は核(Nuclear)と生物(Biological)、化学物質(Chemical)の英語の頭文字を取って「NBC災害」と呼ばれることもあります。
また、放射性物質(Radiological)と爆発物(Explosive)の2つも加え、「CBRNE災害」ということもあるので覚えておきましょう。
特殊災害の種類と具体例
特殊災害は前述の通り、化学系、爆発系、生物兵器、放射性物質、核によるものの大きく5種類に分類されます。
ここからは、それぞれの特殊災害の特徴や具体例を見ていきましょう。
化学系の災害
化学系の災害は、化学兵器による深刻なテロだけでなく、有害物質の漏洩などによっても引き起こります。
化学系の有害物質による災害は、化学物質によってもさまざまです。ビルの解体工事で配管の運搬中に亜鉛中毒になる、アセチレンガスを用いた作業で出火・爆発する、配管工事中に硫化水素中毒になるなど、多くの入院・死亡事故が起こっています。
爆発系の災害
爆発系の災害は、事故やテロなどによって起こる爆発に多くの人が巻き込まれるものです。
前述の化学物質を原因とする事故でも、爆発が起こることはあります。また、人為的なテロによる爆発も特殊災害とされる場合があり、爆発系の災害では多くの死傷者が発生するのも特徴です。
生物兵器による災害
生物兵器による災害は、人体に有害なウイルス、病原体などを原因として起こります。
生物兵器を用いた特殊災害で代表的なのは、2001年のアメリカ同時多発テロ直後のものでしょう。炭疽菌(たんそきん)を用いた2度のバイオテロは、炭疽菌の封入された容器をテレビ局や出版社、上院議員に送りつける、というものでした。
このテロでは5名が死亡、17名が負傷し、アメリカはもちろん世界中で大きな話題となりました。
放射性物質による災害
放射性物質による災害は、原子力事故などにより、放射性物質が漏洩することで起こります。
2011年の東日本大震災では、大地震の影響で福島にある原子力発電所が被災、原発事故が起こりました。放射性物質は目には見えませんが、人体への影響が非常に強いです。
被ばくすると身体の細胞やDNAが傷つき、白血球の減少やがんの発生率上昇などさまざまな症状があらわれるため、東日本大震災の際も「原発事故の影響が最も大きい」と判断した人が多くいました。
核による災害
核による災害は、核兵器を使用し、原子爆弾や水素爆弾など、核爆発を伴うテロなどを指します。
核による特殊災害の代表例といえば、第二次世界大戦中の広島、長崎への原爆投下です。当時の被害は非常に甚大かつ残酷でした。爆心地から離れた場所におり生き残った方のなかにも被ばく者はおり、現在も原爆の放射線による後遺症に悩まされる方は少なくありません。
特殊災害の対策はできるのか
特殊災害の大半はテロや事故ですが、もしも身近な場所で前述のような災害が起こった場合、対策をすることはできるのでしょうか。
特殊災害を避けるのは難しい
結論からいいますと、特殊災害を避けることは非常に難しいです。人為災害しかり、不慮の事故というのはとっさに避けようと思ってもなかなか避けることはできません。
事故やテロがいつ、どの場所で起こるのかを予期することも難しく、今いる場所で特殊災害が起こったら巻き込まれて負傷する、最悪の場合死亡するという可能性は高いです。
とはいえ、「いつ、どこで何が起こるかわからない」「特殊災害は自分にとって無関係な話ではない」という意識をもって生活をすることはとても大切です。一方、こうした事故やテロが起こる確率は決して高いわけではありません。
特殊災害の際に役立つのは…
特殊災害を避けることは難しいですが、万一のときを想定してできること、また特殊災害のときに活躍してくれる人たちについて知っておくことは大切です。
最後に、特殊災害の際に備えてできること、特殊災害の際に活躍する特殊災害対策隊について解説します。
災害を想定した訓練の実施
地域や学校、幼稚園などでは、地震や火事、不審者の侵入などを想定した避難訓練が定期的に実施されます。こうした自然災害、人為災害に備えた訓練のほかにも、今回ご紹介したような特殊災害が起こったことを想定した訓練を実施することが大切です。
また、化学物質を扱う会社などでは、特殊災害が起こった場合にどういった対応を取り被害を最小限に留めるか、そして迅速に復旧に向かうかということを社内で共有するためのマニュアルを用意しておくこともおすすめします。
マニュアルは定期的に見直し、適宜修正を加える、また訓練もパターン化させず、さまざまな事故やテロを想定して実施するといった工夫をすると、高い効果を発揮するといえるでしょう。
特殊災害対策隊が活躍
核や化学物質、生物兵器といった目に見えないものの人体に恐ろしい影響を与えるものが原因となる特殊災害を目の前にしては、一般の人たちができる対策、対応は限りなく少ないといえます。
特殊災害の際に活躍してくれるのは特殊災害対策隊です。通称「HAZMAT」とも呼ばれ、特殊な防護服を身に着けて作業をします。
特殊災害対策隊の特徴
特殊災害対策隊は大都市の消防機関に設置されている機関です。
特殊な防護服の1つは陽圧式化学防護服で、外からの空気を完全に遮断してくれるため、バイオテロや放射能などからも身を守ってくれます。狭い場所では陽圧式化学防護服よりも身動きが取りやすい毒劇防護服を着用し、作業をする場合も。
特殊災害対策隊は、自身が安全に活動できるための防護服を身にまといながら活動するだけでなく、日々さまざまな特殊災害が起こった場合にどういった活動で被災者の救済や被災地の復旧に当たるかなどを勉強しています。
特殊災害の際には、特殊災害対策隊が迅速に作業に当たれるよう、身動きが取れる人たちは部隊の邪魔をしない、指示に従うということを徹底しましょう。
まとめ
特殊災害は化学物質や生物兵器、放射性物質といった、我々が対処することが難しいものが原因で起こる事故やテロです。特殊災害の際には、消防機関にある特殊災害対策隊が活躍してくれます。
特殊災害に巻き込まれる可能性は決して高くはありませんが、どういった種類があるかを知り、日頃から特殊災害が起こったことを想定したマニュアル作り、訓練の実施などの備えをすることは大切です。
ぜひさまざまな災害について知識を深め、正しく恐れ、対策をしていく姿勢をもって過ごしましょう。