「防炎物品」とは、消防法で定められた防炎性能の基準を満たしているものです。
似ている言葉に「防炎製品」があります。どちらも防炎品ですが、全く異なるものです。
今回は、防炎製品についても取り上げながら、防炎物品について詳しく解説します。
身の周りの物を防炎品にすることで、火事の延焼を防ぐことが可能になります。ぜひ最後までご覧ください。
防炎物品と防炎製品の違い~性能基準とラベル~
防炎物品を解説するまえに「防炎」について確認しておきましょう。
「防炎」とは「燃えにくい・燃え広がりにくい」性質のことです。決して「燃えない」ではないので注意しましょう。
では、防炎品である防炎物品と防炎製品には、どのような違いがあるのか、見てみましょう。
防炎物品と防炎製品は防炎基準の根拠が異なる
繰り返しますが、防炎物品は「消防法で定められている防炎性能の基準」を満たしたものです。
一方、防炎製品は「“防炎製品認定委員会が定めた”防炎性能の基準」にしたがい、公益財団法人日本防炎協会(以下、日本防炎協会)が認定したものです。
どちらにも防炎性能はあるのですが、防炎性能基準の根拠が異なるのです。
防炎物品には、対象物に着火してから消えるまでの時間(残炎時間)など、5つの基準が定められています。詳しい防炎物品の基準は日本防炎協会のサイトから、防炎製品の基準はこちらから見ることができます。
防炎物品と防炎製品はラベルの違いで見分けられる
防炎性能の基準が異なる「防炎物品」と「防炎製品」ですが、取り付けられているラベルの違いで簡単に見分けることができます。
防炎物品には「防炎ラベル」が、防炎製品には「防炎製品ラベル」が取り付けられているのです。言い換えると、防炎ラベルが付いていない物は、防炎物品ではありません。
◆防炎物品に付いている防炎ラベル(例)
◆防炎製品についている防炎製品ラベル(例)
なお、日本防炎協会のサイトでは、防炎物品と防炎製品のいずれについても、取り扱い店舗を検索することが可能です。都道府県と防炎品の種類を組み合わせた検索もできるので、簡単に探すことができて便利です。
防炎物品の使用義務がある所と種類~防炎製品は種類が多い~
火災の延焼を防ぐ防炎物品ですが、その使用が義務づけられている所があります。
ここでは、防炎物品を使うことが義務づけられている場所と、防炎物品および防炎製品の種類について解説しましょう。
防炎物品の使用が義務づけられている場所
防炎物品の使用を義務づけているのは、消防法および消防法施行令です。
高層建築物とは、高さ31メートルを超える建築物、おおむね11階以上とされています。したがって、高層マンションに入居予定の方は、防炎物品を使わなければいけません。
これには、入居階数は関係ありません。たとえ1階であっても防炎物品の使用義務があるので、注意しましょう。
これらは、不特定多数の人が出入りする、避難・消火活動が通常よりも困難、避難にはサポートが必要な人たちがいる、といった場所です。
私たちが日常生活で火災に注意するのはもちろんですが、これらの場所においては、より一層の注意と対策が求められていると言えるでしょう。
防炎物品は7種類、防炎製品は26種類
ここでは、どのようなものが防炎物品、防炎製品になっているのかお伝えしましょう。
◆防炎物品の種類
1.カーテン
2.布製ブラインド
3.じゅうたん等
4.展示用合板
5.舞台において使用する幕及び大道具用の合板
6.暗幕・どん帳
7.工事用シート
日本防炎協会「防炎物品の種類と防炎規制の対象となる防火対象物」
先ほど、高層マンションに入居の際には、防炎物品を使わなければならないとお伝えしました。防炎物品の種類でみると、カーテン・布製ブラインド・じゅうたん等が対象になるでしょう。
一方、防炎製品は防炎物品よりも多い26種類が指定されています。一例をご紹介しましょう。
◆防炎製品の種類(一例)
・ 寝具等側地(ふとん側地、ふとんカバー、枕カバー など)
・ ふとん類(座ぶとん、ベッドパッド、マットレス など)
・ 衣服類(パジャマ、エプロン、アームカバー など)
・ 祭壇
・ 襖紙・障子紙等
・ マット類(キッチンマット、バスマット、灰皿マット など) 他
防炎製品には、わたしたちの生活に身近な、より多くのものがありますね。このほかの防炎製品は、日本防炎協会のサイトから確認することができます。
たとえば、防炎製品には「エプロン」がありますが、着衣着火によって毎年約100人の方がなくなっているとして、消費者庁が注意をうながしています。
エプロンを防炎製品にすることで、着衣着火による危険から身を守ることが可能になるでしょう。
そこで次に、防炎物品を使っていたおかげで、大きな被害をおさえることができた事例をご紹介しましょう。
防炎物品が火災を防いだ事例~タバコ・天ぷら油火災~
防炎物品を使っていたことで、火災を避けることができた事例をご紹介します。
事例➀
5階建の住宅にて、タバコの火種がキッチンマットに落下。住人はそれに気付かず外出。タバコは無炎燃焼した後に出火。すぐ近くにカーテンがあったが、防炎物品だったため少し焼けた程度であり、延焼は免れた。
【参考元URL】川崎市消防局「防炎品奏効事例」https://www.jfra.or.jp/summary/news/jirei/196.pdf
事例②
鍋から炎があがっているのを住人が発見。天井付近にまで炎が上がり、近くのロールカーテンに燃え移った。ロールカーテンが防炎物品であったこと、住人の初期消火が効果的におこなわれたことにより、延焼は免れた。
【参考元URL】京都市消防局「防炎品奏効事例」https://www.jfra.or.jp/summary/news/jirei/215.pdf
いずれも一般住宅であり、防炎物品が義務づけられていなくとも、防炎品を使用することの重要性がわかる事例と言えるでしょう。
このほかの事例は、日本防炎協会のサイトで見ることができます。
まとめ~防炎品を取り入れて住宅火災を防ぐ
消防庁防災情報室の資料によると、令和2年に発生した火災のうち建物火災が55.8%を占めています。
防炎物品の使用が義務づけられている場所かどうかに関わらず、防炎品を使うことで火事の延焼を防ぐことが可能になります。
ぜひ一度、日常生活に取り入れられる防炎品がないかどうか、チェックしてみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
e-GOV 法令検索「消防法」https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC1000000186
e-GOV 法令検索「消防法施行令」https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=336CO0000000037
以下、日本防炎協会
「防炎物品、防炎製品とは」https://www.jfra.or.jp/member/index.html
「防炎物品の防炎性能試験基準の要点 」https://www.jfra.or.jp/member/b04_01.html
「防炎製品性能試験」https://www.jfra.or.jp/member/s07.html
「防炎品取扱店検索」https://www.jfra.or.jp/searchmap/index.html
「防炎物品の種類と防炎規制の対象となる防火対象物」https://www.jfra.or.jp/member/b02_01.html
「防炎製品の種類」https://www.jfra.or.jp/member/s05_02.html
「わたし達の暮らしと防炎品」https://www.jfra.or.jp/home/effect.html#:~:text=%E9%98%B2%E7%82%8E%E6%80%A7%E8%83%BD%E8%A9%A6%E9%A8%93%E5%9F%BA%E6%BA%96,%E6%80%A7%E8%83%BD%E3%82%92%E7%A2%BA%E8%AA%8D%E3%81%97%E3%80%81%E9%98%B2
消費者庁「着衣着火に御用心!毎年約 100 人の方が亡くなっています! 」令和3年11月17日https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_055/assets/consumer_safety_cms205_211117_01.pdf
消防庁「防炎の知識と実際 ≪防炎普及用資料≫」https://www.fdma.go.jp/relocation/html/life/yobou_contents/fire_retardant/pdf/bouen_01.pdf
消防庁防災情報室「令和2年(1~12月) における火災の状況(概数)」
https://www.fdma.go.jp/publication/ugoki/items/rei_0307_15.pdf
(以上)