緊急消防援助隊は、日本国内で大規模な災害や事故が発生したとき、全国各地から被災地・事故現場に集結する消防部隊です。
毎年のように災害が発生する日本では、緊急消防援助隊はなくてはならない存在なのです。
今回は、総務省消防庁の動画をもとに「緊急消防援助隊の活動」と「全国合同訓練」、そして東京消防庁から「熱海市土石流災害」での活動の様子をご紹介します。
また、出動実績をとおして、これまでに発生した災害をまとめています。
災害は非日常の遠い出来事と感じるかもしれませんが、その一方で緊急消防援助隊はわたしたちの命を懸命に救いだそうとしてくれる近しい存在です。
それでは緊急消防援助隊について解説しましょう
緊急消防援助隊は阪神淡路大震災の教訓から発足
ここでは、緊急消防援助隊が発足した経緯・出動のながれ・使用する車両についてお伝えします。
大規模災害では状況の把握さえ簡単ではない
緊急消防援助隊がつくられたのは、戦後日本ではじめて大都市をおそった直下型地震である「阪神淡路大震災(1985年/平成7年1月17日、マグニチュード7.3、最大震度7)」がきっかけです。
この地震はあまりにも大きな災害だったため、状況の把握がむずかしく、各消防部隊への指揮命令も適切に機能させることができなかったといいます。
このような状況をうけて同年に緊急消防援助隊が発足したのです。
救命・行方不明者の捜索をおこなう
緊急消防援助隊は、国内の大規模な災害・事故が発生したとき、他県から現地にかけつけて、救命そして行方不明者の捜索をおこないます。
通常、現地の消防機関だけで対応がむずかしい事故等がおきたときは、近隣市町村や同都道府県内から応援隊員がきます。
しかし、より大規模な災害・事故の場合には、災害の種類に応じた部隊が現地からの要請をうけて駆けつけるのです。
部隊の出動は、次のながれでおこなわれます。
・現地の都道府県知事が、消防庁長官に応援を要請
↓
・消防庁長官が各県知事、市町村に指示
↓
・指示をうけた地域の緊急消防援助隊が出動
特殊車両を駆使して活動
緊急消防援助隊が活動するのは、大規模な災害現場のため通常とは異なる特殊車両がつかわれることもあります。
このような特殊車両があります(一例)
*大型水陸両用車・・がれきの山や水の上を走る
*拠点機能形成車・・資機材の搭載と活動拠点スペースを兼ね備えている
*石油コンビナート火災等に対応する特殊車両 など
普段わたしたちが目にする消防車両は地方公共団体が整備しますが、この特殊車両のなかには、国が整備して地方公共団体に貸し出しているものもあります。
緊急消防援助隊の活動・訓練を「総務省消防庁」の動画でチェック
総務省消防庁では、2つの動画(完全版・ショート版)で緊急消防援助隊を紹介しています。
なかなか目にする機会がない活動だからこそ、このような動画をぜひ活用しましょう。
ショート版(3分)
ショート版(3分)では、コンパクトに緊急消防援助隊の活動がまとめられています。
「訓練・出動」の様子や「隊員へのインタビュー」があるので、ショート版でも十分見応えがあります。
完全版(17分27秒)
完全版は、阪神淡路大震災で対応した隊員が語る当時の状況にはじまり、出動実績や訓練車両の紹介などもまとめられています。
5年に1度の「全国合同訓練(ショート版・完全版)」
緊急消防援助隊は、全国を6つのブロックにわけて各々に訓練するほか、全国の部隊が介しておこなう全国合同訓練(5年に1回)もおこなわれています。
◇これまでに実施した全国合同訓練
・第1回 平成7年11月(東京都)
・第2回 平成12年10月(東京都)
・第3回 平成17年6月(静岡県)
・第4回 平成22年6月(愛知県)
・第5回 平成27年11月(千葉県)
・第6回 令和4年11月12日、13日(静岡県)
昨年(2022年/令和4年)には、南海トラフ巨大地震の発生が懸念されている静岡県において、第6回全国合同訓練が実施されました。
こちらも、ショート版(1分49秒)と完全版(13分14秒)があるので、ぜひご覧になってはいかがでしょう。
第6回全国合同訓練PR動画(ショート版:1分49秒)
第5回までの訓練映像もワンショットずつあるので、あらゆる訓練をしていることがわかる動画です。
第6回全国合同訓練PR動画(完全版:13分14秒)
こちらの動画には、南海トラフ地震を想定し発災後の動きを確認したり、いかに全国各地から迅速に集結するか「部隊参集訓練」の様子などが収録されています。
では次に、緊急消防援助隊の出動実績をみてみましょう。
緊急消防援助隊の活動実績~ほぼ年1回出動している
緊急消防援助隊は、1985年(平成7年)の発足から2022年(令和4年)1月末までのあいだに、合計43回出動しています。
単純計算すると37年間で43回となり、1年に1回は出動しているという状況になります。
のべ16,546部隊・約6万人が活動(平成14年~令和2年7月の出動災害一覧)
ここでは、さきほどの総務省消防庁「緊急消防援助隊PR動画(完全版)」から、緊急消防援助隊が出動した災害に応じた「出勤部隊数」と「出動人数」、そして「活動日数」をご紹介します。
災害名(発生日) | 出動部隊数 | 出動人数 | 活動日数 |
---|---|---|---|
*有珠山噴火災害(平成12年3月29日) | 14隊 | 65人 | 40日 |
*出光興産北海道製油所ナフサ貯蔵タンク火災(平成15年9月28日) | 381隊 | 1,417人 | 24日 |
*新潟県中越地震(平成16年10が23日) | 480隊 | 2,121人 | 10日 |
*平成17年JR西日本福知山線列車事故(平成17年4月25日) | 74隊 | 270人 | 4日 |
*東日本大震災(平成23年3月11日) | 8,854隊 | 30,684人 | 88日 |
*豪雨による広島市土砂災害(平成26年8月20日) | 399隊 | 1,296人 | 17日 |
*御嶽山噴火災害(平成26年9月27日) | 547隊 | 2,171人 | 21日 |
*平成27年9月関東・東北豪雨(平成27年9月10日) | 255隊 | 1,001人 | 8日 |
*平成28年熊本地震(平成28年4月14日) | 1,644隊 | 5,497人 | 14日 |
*平成28年台風台10号による災害(平成28年8月31日) | 257隊 | 1,041人 | 10日 |
*平成29年7月九州北部豪雨(平成29年7月5日) | 1,179隊 | 4,203人 | 21日 |
*大分県中津市土砂災害(平成30年4月11日) | 31隊 | 135人 | 4日 |
*平成30年7月豪雨(平成30年7月6日) | 1,383隊 | 5,385人 | 26日 |
*平成30年北海道胆振東部地震(平成30年9月6日) | 197隊 | 827人 | 5日 |
*令和元年8月の前線にともなう大雨による災害(令和元年8月28日) | 43隊 | 146人 | 4日 |
*令和元年東日本台風(台風19号)令和元年10月13日 | 276隊 | 1,038人 | 6日 |
*令和2年7月豪雨(令和2年7月4日) | 532隊 | 1,999人 | 12日 |
日本は災害が多いとたびたび耳にしますが、この出動状況からもそれを知ることができるでしょう。
熱海市土石流災害での活動「東京消防庁」の動画
2021年(令和3)年7月3日、静岡県熱海市で大雨による大規模な土石流が発生し、28名(災害関連死含む)の方が犠牲となりました。
東京消防庁はこの災害に緊急消防援助隊として出動し、行方不明者の捜索をおこなっています。
そのときの状況を記録した2つの動画をご紹介します。
東京消防庁「熱海市土砂災害での活動状況①(緊急消防援助隊)」4分37秒
東京消防庁「熱海市土砂災害での活動状況➁(緊急消防援助隊)」2分16秒
動画には、胸近くまで泥につかりながら活動する隊員の姿や、災害救助犬・ドローンによる状況確認など、現場の緊迫した様子が映し出されています。
この動画からは、2次災害のリスクがあるなか、緊急消防援助隊が懸命に行方不明者を捜索する現場の状況を知ることができます。
まとめ|災害に向き合い今できることをする
緊急消防援助隊は、大規模な災害・事故において、現地の消防機関だけでは対応がむずかしいとき、他県から駆けつけてくれる消防隊です。
発足以降、平均すると年1回の出動になるほど、日本は大規模な災害が多発しています。
いつおこるかわからない災害にはもちろん不安になりますが、緊急消防援助隊の姿からは災害に向き合い「今できることをする大切さ」をも感じられます。
今回ご紹介した動画をとおして、ぜひその姿をご覧になり、災害にそなえる力へつないでいただけると幸いです。
【参考文献】
総務省消防庁:全国各地から駆けつける「緊急消防援助隊」
消防防災博物館「緊急消防援助隊」
静岡朝日テレビ「熱海市土砂災害関連特設ページ(関連情報&ニュース)」
(以上)