火砕流の速度は逃げきれないほど~事前にチェックしたい3つの情報源

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「火砕流はものすごいスピードで迫ってくる」

これは前回、火砕流と溶岩流との違いを書いた記事(こちら)で、火砕流の特徴としてお伝えしたことです。

ですが、「具体的にどれくらいの速度で、溶岩流など他に比較できるものはないだろうか?」という疑問がわきます。

そこで今回は、過去の噴火事例や比較検討できる資料をとおして、火砕流の速度について調べた結果をお伝えします。

さらに、観光や登山などで火山にいく機会があるとき「事前にチェックしておきたい3つの情報源」もご紹介するので、ぜひ参考にご覧ください。

目次

火砕流は有毒な火山ガスをふくみ猛烈な速度でせまってくる

はじめに、火砕流の定義を確認しましょう。

火砕流とは、簡単に言うと「噴火で吹き出した固形物(火砕物)が火山ガスとまざりながら一気に流れ下るもの」です。

火山ガスには有毒物質をふくむため、噴火現象のなかでも生命への危機がもっとも高いとされています。

ここでは、気象庁の説明を記載しておきます。

火砕流とは(気象庁ホームページより)

噴火により放出された破片状の固体物質と火山ガス等が混合状態で、地表に沿って流れる現象です。

火砕流の速度は時速百km以上温度は数百℃に達することもあり、破壊力が大きく、重要な災害要因となりえるため、噴火警報等を活用した事前の避難が必要です。

引用:気象庁「主な火山災害」 ※太字は筆者加筆

すさまじい破壊力ゆえに「事前の避難が必要」。

ということで、早い避難につながるよう事前にチェックしたい点については、後述します(こちら)。

火砕流の速度を「過去の噴火事例」と「溶岩流・新幹線との比較」で知る

では早速、火砕流の速度がどれほどなのかみていきましょう。

雲仙普賢岳の噴火

まず、1990年(平成2年)11月17日から約5年のあいだ噴火活動がつづいた雲仙普賢岳(うんぜんふげんだけ:長崎県)をとりあげましょう。

この大噴火では、火砕流によって死者行方不明者44名という被害がもたらされています。

そして、雲仙岳災害記念館(がまだすドーム)「平成大噴火」によると、1991年(平成3年)9月15日に発生した火砕流の流下速度は『時速200km』だったとされています。

さらに、火砕流にふくまれる高温の火山ガスと火山灰は「火砕サージ」とよばれ、より高速度で流れ下るとされているのです。その勢いは『重さ1.4トンの車を空中に浮かせて飛ばすほどの強い勢い』だったと言われています。(参考:西日本新聞me「車吹き飛ばした「火砕サージ」の破壊力 火山灰、熱風…雲仙岳災害記念館が調査」)。

口之永良部島の噴火

次に、2015年(平成27年)5月29日に口永良部島(くちのえらぶじま:鹿児島県)新岳で発生した噴火をみてみましょう。

この噴火では、島の住民および訪れていた人(合計138名)は島外へ避難して無事でしたが、発生した火砕流は『時速115km』だったとされています。(参考:テレ朝news「火砕流は“時速115km”に達す 口永良部島の噴火」)。

口之永良部島は、おなじく観光地として有名な「屋久島(やくしま)」から西へ約12km、屋久島からはフェリーで約1時間40分のところに位置しています。

この事例からは、火山噴火はその土地の住民だけでなく、訪れるすべての人にとって身近な現象になるということが感じられるのではないでしょうか。

溶岩流・土石流・人・車・新幹線と比較

雲仙普賢岳も口之永良部島の火砕流も、どちらも時速100kmを超える速度でした。

このように火砕流の特徴はその速さですが、ほかの噴火による現象(溶岩流・土石流)とくらべて、どのくらい速いのでしょう。

ひとつ資料をご紹介します。

出典/ 防災科学技術研究所:火山ってなぁに?「3.噴火するとどうなるの?」

こちらの資料によると、火砕流は「時速100~300km」であり、溶岩流の「時速1km」よりもはるかに早いことがわかります。

また、新幹線の速度が「時速270km」であることから、火砕流は新幹線並みの速さともいえるでしょう。この点からも、火砕流から人間が逃げ切るのは不可能だということがイメージできるのではないでしょうか。

ここまで火砕流がいかに速くて恐ろしいものなのか、その速度についてみてきました。

火山噴火に備える|事前にチェックしておきたい3つの情報源

火砕流の威力は恐ろしいものですが、同時に火山そして周辺の地域には素晴らしい景観や温泉など、そこにしかない資源ももちあわせています。

そこで次に、観光や登山などで火山のある場所をおとづれるときには、ぜひ「事前にチェックしておきたい3つの情報源」をご紹介します。

火山周辺の警戒すべき範囲を知る(各火山のリーフレット)

気象庁「各火山のリーフレット」は、噴火警戒レベルを運用している火山について、警戒が必要な範囲が地図上で示されたものです。火山によっては、火砕流・火砕サージの影響がおよぶ範囲も示されています。

どこに危険があるのかをあらかじめ知っておくことは、噴火への備えと素早い避難につながる大切な準備と言えるでしょう。

またサイトでは、各噴火警戒レベルごとに過去事例(そのレベルにおける噴火事例があったかどうか・その発生はいつどの程度だったのか)も記載されています。

たとえば、鳥海山(ちょうかいさん:秋田県)の“噴火警戒レベル5(避難)”の過去事例には、『1800~04年の噴火:新山形成、火砕物降下、噴石、泥流、死者8名』と記載されています。

ぜひチェックしてみましょう。

1週間以内および発表中の噴火警報(火山登山者向けの情報提供ページ)

気象庁「火山登山者向けの情報提供ページ(全国)」では、「最近1週間以内に情報を発表した火山」と「噴火警報が発表中の火山」を知ることができます。

たとえば、執筆時点(2023年1月27日)においては、1月26日(04時24分)に発表された「諏訪之瀬島(すわのせじま:噴火警戒レベル2)」の情報があります。クリックしてみると「現在の警戒事項等」として、次のように記載されています。

御岳火口中心から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。
風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。

引用:気象庁「諏訪之瀬島の活動状況」 ※太字は筆者加筆

警戒すべき具体的な内容が記されているので、ぜひ事前にチェックしておきたいところです。

火山情報と気象情報をダブルで入手(気象庁ツイッター)

ツイッターを利用している方そしてご検討中の方は、気象庁のツイッター(「火山情報/爆発観測報と風向き情報」)があります。

出典:気象庁「火山情報/爆発観測報と風向き情報」

ここでは、3つの火山・噴火情報(噴火に関する火山観測報」「火山の状況に関する解説情報」「噴火警報・予報が自動的にながれ、かつ、その時点での気象・風向き情報が入手できるリンク先がお知らせされます。

インターネット上に点在している各情報がここから入手できるので、便利に使えるのではないでしょうか。

ツイッターを利用されていない方は、気象庁のホームページや防災アプリで火山・噴火情報を入手する方法があります。詳しくは、こちらの記事『噴火速報は「あなたの街の防災情報」やアプリで確認できる!』をご参照ください。

火砕流の脅威を知り、火山に行くまえには火山情報をチェック

火砕流の速度は時速100km以上にもなるとされており、とても逃げ切れるものではありません。

この火砕流から命を守るには、その恐ろしさを認識するとともに、火山情報を適切に入手することも重要です。

山が身近にある人であれば、チェックしておくべき情報やその情報源も承知していることでしょう。

しかし、観光などでその地域に足を運ぶ人が、同じ火山情報を把握できているとは限りません

ぜひ今回ご紹介した情報源を活用しながら火山情報を入手し、火山がもたらす恵みを存分に味わっていきましょう。

【参考サイト】
雲仙岳災害記念館(がまだすドーム)「平成大噴火」

西日本新聞社:車吹き飛ばした「火砕サージ」の破壊力 火山灰、熱風…雲仙岳災害記念館が調査

テレ朝news「火砕流は“時速115km”に達す 口永良部島の噴火」

内閣府 防災情報のページ:災害復興対策事例集 事例コード201501「2015 年(平成 27 年)口永良部島噴火による災害」

鹿児島県「口永良部島(くちのえらぶじま)の概要」

防災科学技術研究所火山ってなぁに?「3.噴火するとどうなるの?」

【関連記事】溶岩流と火砕流の違い~関連動画をチェックして理解を深めよう

(以上)

備えておこう!おすすめの防災グッズ

これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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この記事を書いた人

東北出身&在住フリーライター。
広告代理店・NPO・行政で勤務後、在宅ワーカーに転身。
妊娠中に東日本大震災に遭い、津波から避難・仮設住宅で子育てをする。
本サイトでは「命を守るために知っておきたいこと」「日常に潜むリスクへの備え」などについて発信します。
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