2014年9月27日長野県にある御嶽山が噴火し、死者・行方不明者は63名(2022年9月27現在)にものぼり、戦後最悪の火山災害と言われています。
このことは、わたしたちに噴火の恐ろしさを感じさせるとともに、日本が火山大国であることを再認識させました。
そこで今回は、火山についての理解を深めるため、噴火に関する用語「破局噴火」と「山体崩壊」について調べてみました。
知っていると知らないとでは、噴火(火山災害)に対する備えの認識も変わってくるでしょう。ぜひ一緒に学んでみませんか。
破局噴火とは超巨大な噴火のこと
破局噴火とは、一般的な噴火よりもはるかに多くのマグマがたまり続け、それが一気に吹きだされる超巨大噴火のことです。
その規模は後述するように、人類の生活を滅ぼし地球環境に影響をあたえるほどと言われています。
破局噴火はカルデラ噴火ともよばれる
破局噴火ではカルデラとよばれる窪地が形成されるため「カルデラ噴火」ともよばれています。また海外では、破局噴火と同じような意味合いで「スーパーボルケーノ」が使われているようです。
では、破局噴火がどのくらい巨大な噴火なのか過去の事例からみてみましょう。
破局噴火の事例
破局噴火の事例① 鬼界カルデラ(鹿児島県)
鬼界カルデラは、7300年前日本が縄文時代だった頃の破局噴火によってできたものです。薩摩半島から約50km南にある海底火山であり、薩摩硫黄島と竹島はこの一部が海面にでたものです。
その噴火の勢いはすさまじく、九州南部にいた縄文人の生活は破壊され、火山灰は東北地方にまで運ばれたとされています。
鬼界カルデラについては、“過去1万年の間で最大規模の噴火”として注目されており、神戸大学やJAMSTEC(海洋研究開発機構)などによって調査がおこなわれています。
次は、鬼界カルデラよりもはるか昔におきた破局噴火の事例です。
破局噴火の事例➁ トバ火山(インドネシア:スマトラ島)
インドネシアにあるトバ火山は、今から84万年前と7500万年前に破局噴火をおこしました。
7500万年前の噴火にいたっては世界最大級とされており、大量の火山灰が太陽をさえぎり、地球の気温が5度低下したとされています。噴火後6000年にもわたって寒冷期が続き、わたしたちの祖先の一部は絶滅したとされています。
この破局噴火では、広さ約1000平方キロメートル・水深450メートルと巨大なカルデラ湖「トバ湖」が形成され、現在では東南アジア最大の湖になっています。
破局噴火はいつおこる?恐怖を「火山災害への備え」に
日本における破局噴火は1万年に1回
このような破局噴火は、もちろん頻繁におこるものではありませんが、日本では平均1万年に1回程の頻度でおこるとされています。
先述のとおり、7300年前の鬼界カルデラがもっとも最近の噴火とされているため、いつ次の破局噴火がおきても不思議ではないと、専門家は警笛をならしているようです。
イエローストーン国立公園(アメリカ)の事例
一方、破局噴火が迫っているのではと騒ぎになったものの、専門家がその可能性は低いと発表した事例があります。それは、アメリカのイエローストーン国立公園にある火山です。64万年前に破局噴火をおこしており、地下にはマグマが溜まり続けているとされています。
その土地で2018年2月に群発地震が発生したことで、人々の不安が大きくなったのでした。実際に噴火はおこらなかったものの、岩に大きなヒビ割れがみつかり公園の一部が閉鎖されたといいます。
破局噴火はとめられないが「噴火」には備える
現代の技術においても、マグマの量は把握することができても、自然現象である破局噴火そのものを防ぐ術はありません。
破局噴火はとても恐ろしいものですが、止められないのなら噴火に対して、できうる限りの備えをすることが大切でしょう。
日本は火山大国であり111の活火山があります。そのうちの50火山については「常時観測火山」として、24時間体制での観測・監視がなされています。
気象庁では、火山災害をふせぐための取り組みをフローチャートで示したり、登山者向けの火山情報も発信しています。噴火への備えとして、これらを参考にするのもよいですね。
ここまでは破局噴火についてお伝えしました。
山体崩壊は津波被害をもたらすこともある
ここからは「山体崩壊」についてみていきましょう。
山体崩壊とは大規模な山の崩壊
山体崩壊とは「山の一部が崩れる現象」のことで、大規模な土石流などをともなうことが多いとされています。
山体崩壊は噴火のあとに必ずおこるというものではなく、巨大噴火ではおこらず小さな噴火の直後におこることもあると言います。日本では、たとえば富士山や磐梯山(ばんだいさん:福島県)などが山体崩壊をおこしているようです。
そして、地震のあとにおこると思われがちな津波ですが、山体崩壊によっても発生しているというのです。
事例をみてみましょう。
山体崩壊による津波被害
アナ・クラカタウ火山島(インドネシア)のある海域には、1883年の巨大噴火によってカルデラができており、その後も海底噴火を繰り返していました。
そして、2018年6月からも噴火が繰り返され、同年12月22日には山体崩壊がおこりました。山体崩壊がおこるまえには、380メートルだった島の高さが122メートルにまで低くなり、島の半分が消えてしまったといいます。
その結果、崩れ落ちた大量の土砂が海中に流れ込んで津波を引き起こし、死者・行方不明者は447人にものぼったのです。
山体崩壊にともなう津波は、日本でも発生していました。
駒ヶ岳(北海道)と雲仙普賢岳(長崎)の山体崩壊
1640年北海道の駒ヶ岳で噴火が発生しました。その直後に山体崩壊がおこり、700人以上が津波の犠牲になったと言います。
さらに、長崎県の雲仙普賢岳では、1792年噴火の最中に山体崩壊と津波が発生し、熊本県にまで影響がおよび、死者・行方不明者は1万5千人以上にもなりました。
火山というと噴火に意識が向きがちですが、山体崩壊によって津波が発生することも念頭にいれておきましょう。
まとめ
今回は「破局噴火」と「山体崩壊」について学んでみました。
火山は噴火という災害をもたらす恐ろしいものである反面、自然の恵みをあたえてくれる大切な資源でもあります。
そのため、観光で火山をおとずれる方もいることでしょう。山の魅力を味わうためにも「噴火(火山災害)への備え」を同時におこない、豊かな恵みを存分に味わいたいですね。
【参考文献】
JAMSTEC WEB:巨大海底火山「鬼界カルデラ」の過去と現在
Newsweek日本版「人類の進化に影響を与えた超巨大噴火、スマトラ島のトバ火山の謎」
Sience Portal「超巨大噴火の噴煙は、火口を囲むドーナツ型に」
NHKそなえる防災「第5回 カルデラ噴火! 生き延びるすべはあるか?」
NHKそなえる防災「第17回 山体崩壊がもたらした突然の津波」
AFPBBニュース「米イエローストーン国立公園、大噴火のうわさを専門家が否定」
Forbes Japan:米イエローストーンの巨大火山「大噴火の予兆説」の真実度
(以上)