要配慮者とは~利用施設の意味と避難確保計画の作成ポイント~

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要配慮者とは体力の衰えた高齢者など「災害時に特に配慮を必要とする人」のことです。

国は水防法・土砂災害防止法の改正をおこない、要配慮者が利用している施設(要配慮者利用施設)に、避難確保計画の作成を義務化しています。

避難確保計画の対象となる利用施設とはどのような施設なのか?、また避難確保計画の作成のポイントは何か?について、参考情報をもとに紹介します。

目次

要配慮者とは防災行政上の言葉で、災害時に特別の配慮を必要とする人のこと

要配慮者については、災害対策基本法(8条2項15号)に規定されていますが、要約すると次のようになります。

 要配慮者とは高齢者などの「特に配慮を必要とする人」であり、災害による被害をふせぐため「必要な対策をとらなければいけない」ということです。

具体的には体力的に衰えのある高齢者、心身障害者、乳幼児、外国人、妊産婦や傷病者のこと

一般に高齢者とは65歳以上の人のことです。災害対策基本法では、高齢者という言葉が冒頭にきていますが、、65歳以上の人たちが全員、配慮を必要とされる人とは限りません。

要配慮者という言葉は、2013年(平成25年)に災害対策基本法が改正されるまで「災害時要援護者」と呼ばれていました。呼び方が変わっても、意味することは変わりません。

「災害時要援護者」を知ることで、要配慮者がどのような人のことなのか確認してみましょう。 

日本赤十字社が発行した「災害時要援護者対策ガイドライン」では、災害時要援護者(災害弱者)を次のように規定しています。

①心身障害者(肢体不自由者、知的障害者、内部障害者、視覚・聴覚障害者)

②認知症や体力的に衰えのある高齢者

③日常的には健常者であっても理解力や判断力の乏しい乳幼児

④日本語の理解が十分でない外国人

⑤一時的な行動支障を負っている妊産婦や傷病者

【引用】日本赤十字社:災害時要援護者対策ガイドライン  

要配慮者それぞれに異なる特性、配慮すべき内容を知ることが大切

要配慮者と一言で言っても、身体面で避難への配慮が必要な人と、日本語への理解が十分ではない外国人に対しては、支援者がおこなう配慮も当然違ってきます。

日頃から、要配慮者といわれる人たちが、どのような困りごとを抱えているのかを意識してみることが、いざというときの支援につながる最初のステップかもしれませんね。

高知県では、要配慮者を下記の14タイプに分け、それぞれの特性や避難所における適したスペースづくりなどを記載した冊子を作成しています。

  • 「避難所における 要配慮者支援ガイド」における、14タイプの要配慮者の方

➀高齢 ➁認知症 ③肢体不自由 ④視覚障害 ⑤聴覚、音声・言語障害 ⑥盲ろう ⑦精神障害 ⑧知的障害 ⑨発達障害 ⑩内部障害 ⑪難病 ⑫妊産婦 ⑬乳幼児 ⑭化学物質過敏症

【引用URL】高知県「避難所における 要配慮者支援ガイド」 https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/010201/files/2020082500159/shien-gaido.pdf

要配慮者利用施設とは

要配慮者が利用する施設を要配慮者利用施設と言い、具体的には社会福祉施設、学校、医療施設があります。災害時に配慮を必要とする人が利用しているがゆえに、いざというとき適切に避難できるよう事前に備えておかなければなりません。

しかし、2011年(平成23年)東日本大震災では、障害者手帳を持つ人の死亡率が、全住民の死亡率の2倍であったという事実や、2016年(平成28年)台風第10号による被害で、岩手県岩泉町にあるグループホーム利用者9名が命をおとしています。

【引用URL】NHK ハートネット「災害・誰も取り残さない」 https://www.nhk.or.jp/heart-net/topics/19/

要配慮者利用施設と福祉避難所の違い

一方、災害時に要配慮者の人に向けた避難先となる「福祉避難所」をご存知でしょうか?

要配慮者利用施設は、要配慮者の人たちの、日常的な生活の場として利用される所ですが、

「福祉避難所」は、災害発生時に行政が必要と判断したときに開設されるものです。

自治体が、事前に地域の要配慮者利用施設と協定を結び、災害時に要配慮者の受け入れ先として想定しています。しかし、実際の運用には課題があります。

たとえば、自治体のなかで要配慮者と福祉避難所を対応する部署が違うために、福祉避難所の利用までに数週間かかってしまったり、設備が不十分な福祉避難所よりも、やはり自宅のほうが適切なケアを受けられるといった問題などです。

【引用URL】NHK ハートネット「避難所生活への不安 ~誰も取り残さない防災(2) ~」 https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/289/

要配慮者利用施設に求められる避難確保計画

要配慮者利用施設の利用者が、災害の犠牲になっている状況をうけ、国は2017年(平成29年6月)水防法・土砂災害防止法を改正しました。この改正により、要配慮者利用施設に対して、避難確保計画の作成および避難訓練の実施が義務化されたのです。

避難確保計画の作成が義務となる要配慮者利用施設とは

国土交通省は、避難確保計画の対象となる要配慮者利用施設を、「自治体の地域防災計画に掲載された施設」であり、具体的にどのような施設とするかについては「それぞれの自治体において個別具体的に判断していく」としています。

 自治体によっては、ホームページに地域防災計画が掲載されているところもあるのでチェックしてみましょう。

 以下、2017年(平成29年)に国土交通省が各地方整備局等にあてた文書より一部引用します。

 【引用URL】 国土交通省「水防法等の一部を改正する法律の施行について(国水政第12号、平成29年6月19日付) https://www.mlit.go.jp/common/001189346.pdf

  • 対象となる要配慮者利用施設

(3頁)

「市町村防災会議又は市町村長(以下「市町村長 等」という。)が市町村地域防災計画にその名称及び所在地を定めた施設である(水防法第15条第1項第4号ロ)。

具体的にいかなる施設を市町村地域防災計画に定めるかは、予想される浸水や施設の構造、利用状況等の地域の実情を踏まえて各市町村長等において個別具体的に判断していくこととなる。」

(23頁) 

「土砂災害警戒区域内 に位置する社会福祉施設、学校、医療施設その他の主として防災上の配慮を要する者が利用する施設であって、

急傾斜地の崩壊等が発生するおそれがある場合におけるその利用者の円滑かつ迅速な避難の確保を図る必要があると認められるもの」

ステップをふんで避難確保計画を作る!

避難確保計画を作らなければならない施設がわかったところで、次は計画作成です。

いざ計画を作ろうと思っても「なにから始めればよいのかわからない」または「思うように計画作りが進まない」ということはないでしょうか?

ここでは、国土交通省の「要配慮者利用施設の避難確保計画の作成について」という動画をもとに、作成のポイントを確認してみます。

計画を作成するにあたり確認しておくべき4つのポイント

 計画作成にあたって確認すべきポイントは4つあります。それぞれについて分かりやすい動画があるので、確認してみてください。

1.避難確保計画の必要性

法改正によって要配慮利用施設に義務化された内容、被災事例、適切に避難できた施設の事例を紹介しています。

【参考文献】 動画約4分

2.洪水時の施設の危険性の把握と避難先の決定

 「利用者の命を守る3つのポイント」として、➀降水時の施設の危険性を知る ➁避難先(施設内外)を決める ③避難開始のタイミングを決める、ことをあげています。

さらに、想定される浸水深を知ることができる、国土交通省のハザードマップポータルサイト「重ねるハザードマップ」の紹介もあります。

【参考文献】 動画約3分

3.避難に必要な時間の把握と避難開始のタイミングの判断

3時間先までの雨量予測を用いて、洪水警報の基準に到達したかどうかを表示する、気象庁ホームページ「洪水警報の危険度分布」の紹介もあります

【参考文献】 動画約7分

4.避難確保計画の作成様式の説明 

洪水・内水・高潮、土砂災害、津波と分かれていた手引きを統合した『避難確保計画作成の手引き』にそって解説しています。

【参考文献】 動画約10分

【引用URL】 要配慮者利用施設の避難確保計画の作成について https://www.mlit.go.jp/river/bousai/main/saigai/jouhou/jieisuibou/youtube/index.html

避難確保計画作成に役立つ情報を活用しよう

記載例や施設の事例集などを生かして、自分たちに合う避難確保計画を作りましょう。

国土交通省「避難確保計画作成の手引き 解説編」 https://www.mlit.go.jp/river/bousai/main/saigai/jouhou/jieisuibou/pdf/kaisetsu.pdf

・国土交通省「社会福祉施設 避難確保計画 記載例」 https://www.mlit.go.jp/river/bousai/main/saigai/jouhou/jieisuibou/pdf/fukushi.pdf

・国土交通省「要配慮者利用施設における水害からの避難の取り組みの成果事例集」 豪雨、台風にみまわれた秋田県、岡山県、埼玉県の3施設について、実際の災害時における避難状況についてもまとめられています。 https://www.mlit.go.jp/river/bousai/main/saigai/jouhou/jieisuibou/pdf/seikajirei.pdf

・内閣府(防災担当)、消防庁、厚生労働省、国土交通省、気象庁「水害・土砂災害からの避難に関する計画作成の事例集」 岩手県、岡山県、兵庫県、山梨県、神奈川県にある5施設について、各災害リスクもふまえた事例を掲載しています。http://www.bousai.go.jp/oukyu/hinankankoku/pdf/hinanjireishu.pdf

 ・国土交通省「川の防災情報」 氾濫危険情報が発表されている河川情報など、雨量・河川水位などの観測情報がリアルタイムに把握できるサイトです。 https://www.river.go.jp/index 

【引用URL】 国土交通省「要配慮者利用施設の浸水対策」 https://www.mlit.go.jp/river/bousai/main/saigai/jouhou/jieisuibou/bousai-gensai-suibou02.html#hinan_tebiki

まとめ

災害による被害を防ぐため、特に配慮を必要とする人(要配慮者)に対しては、必要な対策をとらなければいけない、と法律で定められています。その対策とは、避難確保計画の作成と避難訓練の実施です。

 どのような計画であっても、作成することは大変かもしれません。しかし避難確保計画は「命を守るための行動指針」とも言えます。そして、襲ってくる災害の規模や形態はいつも違うので、施設利用者の身体的精神的状況も異なることでしょう。

 常に変化している日常だからこそ、要配慮者と呼ばれる人たちとの関わりをこまめに図り、「命を守るための行動指針」を一人ひとりが実感できるものになることを願っています。

【参考文献】

「災害対策基本法」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=336AC0000000223

内閣府「災害対策基本法の改正概要」 http://www.bousai.go.jp/taisaku/kihonhou/pdf/r3_01_gaiyou.pdf

国土交通省「土砂災害防止法改正の概要」 https://www.mlit.go.jp/common/001189226.pdf

国土交通省「要配慮者利用施設の浸水対策」 https://www.mlit.go.jp/river/bousai/main/saigai/jouhou/jieisuibou/bousai-gensai-suibou02.html

避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドラインに関する検討会 平成28年12月「平成 28 年台⾵第 10 号災害を踏まえた 課題と対策の在り⽅ ( 報 告 )」

http://www.bousai.go.jp/oukyu/hinankankoku/guideline/pdf/161226_hombun.pdf

内閣府「福祉避難所の確保・運営ガイドラインの改定(令和3年5月)」 http://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/r3_guideline.html

内閣府「福祉避難所の確保・運営ガイドライン(平成28年4月)」 https://www.pref.okinawa.jp/site/kodomo/fukushi/fukushihinanjyo/documents/guideline.pdf

コトバンク「福祉避難所」 https://kotobank.jp/word/%E7%A6%8F%E7%A5%89%E9%81%BF%E9%9B%A3%E6%89%80-891730

水防法等の一部を改正する法律 https://www.mlit.go.jp/common/001189338.pdf

施設の所有者・管理者向けパンフレット https://www.mlit.go.jp/common/001189350.pdf 

NHK:おうちで学ぼう for school/災害時の高齢者・障害者の避難 「2倍の死亡率」を繰り返さないためには」https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/10/

花王プロフェッショナル・サービス https://pro.kao.com/jp/medical-kaigo/topics/business/20200818/

チーム・トイレの自由「地域防災計画一覧/全国市町村」

備えておこう!おすすめの防災グッズ

これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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この記事を書いた人

東北出身&在住フリーライター。
広告代理店・NPO・行政で勤務後、在宅ワーカーに転身。
妊娠中に東日本大震災に遭い、津波から避難・仮設住宅で子育てをする。
本サイトでは「命を守るために知っておきたいこと」「日常に潜むリスクへの備え」などについて発信します。
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