干害は水不足による災害|世界(日本)の事例から水問題を考える

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二十四節季のひとつ立夏(りっか)も過ぎ、暦のうえでは夏となりました。これからは梅雨や豪雨といった、雨が降ることによる被害が懸念されますが、反対に「雨が降らない」ことでおこる災害もあります。それが「干害」です

似た言葉には「干ばつ」があり、干害とおなじ読み方のものには「灌漑」もあります。今回は、これらの言葉の意味を解説しながら、世界そして日本における干害の事例をご紹介します。

日本でも「水不足による災害」が発生しています。事例をとおして、わたしたちの生活に不可欠な『水』を取り巻く環境について、知ることができます。ぜひ最後までご覧ください。

目次

「干害」とは干ばつによる災害のこと。では「灌漑(かんがい)」は?!

「干害」と言われてピンとこなくても、「干ばつ」は聞いたことがあるかもしれませんね。干ばつは、長期間雨が降らず、水不足になっている状況のことです。

そして「干害」とは、この干ばつによっておこる被害・災害のことを指します。ほぼ同じような意味であり、干害とは言わず「干ばつの被害」として伝えている文献も多くあります。

そのため本記事では、干ばつについて取り上げながら、干害とはどのようなものか解説していきましょう。

干害は気象災害のひとつ

はじめに、干害の意味をもう少し詳しく確認してみます。

気象庁「気象災害に関する用語」によると、干害は、気象災害の一つであり『長期間にわたる降水量の不足によって農作物などに起こる災害』とされています。

同じく、気象災害とは『大雨、強風、雷などの気象現象によって生じる災害』のことであり、干害のほかにも大雨害や冷害、霜害などがあります。

「灌漑(かんがい)」も水に関する用語

水路などを人工的に作り農地に水を入れることを「灌漑(かんがい)」と言います。灌漑は、水不足対策としても、昔から農地には欠かせないものでした。

干害と同じ読み方なうえに、灌漑も水に関する用語なので、合わせて知っておくのも良いですね。

農林水産省のサイトでは「世界かんがい施設遺産」となっている、日本国内44カ所の灌漑施設を知ることができます。これは、建設100年以上の歴史があり技術的・社会的にも価値がある施設が登録されたものです。

サイトでは、各施設の詳細を写真つきで見ることができるほか、日本以外の国ごとの登録数も知ることができます。興味のある方は、ぜひご覧になってみてください。

干害の事例(海外編)|農作物・人命・水紛争

干害にはどのようなものがあるか、まずは海外の事例からみてみましょう。

小麦は収穫面積の70%以上で干害にあっている

下記は、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(通称:農研機構)が2019年7月1日に発表した、干害をうけた穀物の状況です。

過去27年間(1983-2009年)に1回以上の干ばつで収量被害を受けた穀物の栽培面積は、コムギ1.61億ヘクタール(世界の収穫面積の75%)、トウモロコシ1.24億ヘクタール(同82%)、コメ1.02億ヘクタール(同62%)、ダイズ0.67億ヘクタール(同91%)でした。

※農研機構:プレスリリース「(研究成果) 干ばつによる世界の穀物生産被害をマップ化」概要 より

ここで取り上げられている穀物は、いずれも高い割合で干害が見られています。
日本が輸入している穀物が干害をうけることで、私たちの食生活・食費にも、当然影響が及びます。海外の出来事だから関係ないとは言えません

アフリカでは干害で多くの命が犠牲に

次は、世界気象機関(WMO)が2021年8月31日に公開した、気象災害に関する記事です。

上位10の災害のうち、期間中に最大の人的損失をもたらした危険は、干ばつ(65万人の死者)、嵐(577 232人の死者)、洪水(58,700人の死者)、および極端な気温(55,736人の死者)でした。

世界気象機関「気象関連の災害は過去50年間で増加し、被害は大きくなりますが、死者は少なくなります」より ※Googleによる翻訳

これは、過去50年(1970年~2019年)に発生した気象災害について述べたものですが、干ばつによる死者65万人のほとんどが、アフリカで占められていると言います。

2022年2月9日NHKの記事では、WFP(世界食糧計画)がアフリカ東部において過去40年で最悪の干ばつが発生し、1300万人以上が深刻な飢餓に陥っていることを発表したと伝えています。

水が原因の紛争がおきている

国土交通省「水資源問題の原因」には「水紛争」について記されています。干害とは異なりますが、世界では「水が原因」の紛争も発生しているのです。

出典:国土交通省「水資源問題の原因」水紛争

この地図上からは、次のような水紛争の原因を知ることができます。

・水源地域の所有と配分
・水の過剰利用と汚染
・ダム建設と環境
・水供給の停止 など

日本ではほかの国と面していないため、他国との水紛争はありません。
ですが、世界では水にともなう紛争が発生していることを知っておくのも大切ではないでしょうか。

干害の事例(日本編)|観測史上もっとも少ない降水量

日本は水に恵まれ、何の問題もないように思われるかもしれませんが、干害が発生しています。

意図的に雨を降らせることができない以上、いつどのように干害の影響をうけるかわかりません。今回は、給水制限がおこなわれた事例と、農作物へ影響が及んだものについて、ご紹介します。

香川県の大干ばつ~1日5時間しか水が使えなくなった

香川県がある瀬戸内地方は、年間を通じて温暖な気候(瀬戸内式気候)であり、雨量が少ないため、古くから水不足に悩まされてきた土地です。

香川県では平成6年に、過去100年以上における統計上、もっとも少ない降水量を記録しました。香川県高松市では給水制限がおこなわれ、1日5時間(16時から21時)しか水が使えないという状況にまでなってしまったのです。

降水量が少ない瀬戸内地方では、ため池をつくって水不足に対応してきた歴史がありますが、この時には、ため池の水さえもなくなるほどだったと言います。水不足はもちろん、農作物にも非常に大きな影響を及ぼしました。

【参考元】玉川学園・玉川大学:平成6年の大干ばつ「人々はどのように干ばつを克服したのか」

2021年北海道でも統計以来もっとも少ない降水量に

日本農業新聞は、2021年8月4日の記事において、北海道で「災害級」の干ばつが発生していることを伝えました。
記事によると、7月の月平均気温と降水量は、1946年に統計を開始した75年間のうちで、もっとも少ない記録とされています。玉ねぎが丸くならずに変形したり、農地自体が水不足で固くなり枯れてしまう作物もでるなど、農作物の生育に大きな影響が及んだのでした。

干害とわたしたちの生活でできる取り組みとは~世界の『水』問題を考える

2015年国連サミットで決められた、世界の課題解決に向けた目標「SDGs(エス・ディー・ジーズ:持続可能な開発目標)」の6番目が『安全な水とトイレを世界中に』です。

日本では、災害時をのぞけば、水に困ることはほとんどありません。ですが、公益財団法人日本ユニセフ協会によると、世界では安全な水を手に入れられない人が22億人と言います。

『水』は「食」だけでなく、「発電」や「工業」にも必要です。たとえば、洋服を作るための材料調達から製造までに必要な水の消費量を、洋服1着あたりに換算すると“浴槽11杯分”にもなると言います(※環境省「サステナブルファッション」より)。

わたしたちの生活は、日本そして世界各地における『水』を使った活動に支えられています。「干害」という気象災害を直接、解決することは難しくても、『水』問題に対して、日常生活でできる取り組みもあるのではないでしょうか。
「現状を知る」ことも、その一つでしょう

今回ご紹介した干害による、海外の事例日本の事例について、詳しく読んでみることも、一つの取り組みかもしれませんね。

【参考文献】

気象庁「気象災害に関する用語」https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/saigai.html

農林水産省「世界かんがい施設遺産」https://www.maff.go.jp/j/nousin/kaigai/ICID/his/his.html

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 プレスリリース「(研究成果)干ばつによる世界の穀物生産被害をマップ化」https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/niaes/131199.html

世界気象機関(WMO)「気象関連の災害は過去50年間で増加し、被害は大きくなりますが、死者は少なくなります」https://public.wmo.int/en/media/press-release/weather-related-disasters-increase-over-past-50-years-causing-more-damage-fewer

NHK「アフリカ東部 1300万人飢餓に直面 過去40年で最悪規模の干ばつ」2022年2月9日https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220209/k10013475841000.html

国土交通省「水資源問題の原因」https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_tk2_000021.html#wrapper

玉川学園・玉川大学:平成6年の大干ばつ「人々はどのように干ばつを克服したのか」http://www.tamagawa.ac.jp/sisetu/kyouken/rice/sanuki/hideri1.html#%E7%9B%AE%E6%AC%A1

日本農業新聞:渇く北海道「災害級」干ばつ 深刻な農作物被害 2021年8月4日https://www.agrinews.co.jp/society/index/17278

公益財団法人日本ユニセフ協会 SDGs17の目標「6.安全な水とトイレを世界中に」https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/6-water/

環境省「サステナブルファッション」https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/

(以上)

備えておこう!おすすめの防災グッズ

これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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この記事を書いた人

東北出身&在住フリーライター。
広告代理店・NPO・行政で勤務後、在宅ワーカーに転身。
妊娠中に東日本大震災に遭い、津波から避難・仮設住宅で子育てをする。
本サイトでは「命を守るために知っておきたいこと」「日常に潜むリスクへの備え」などについて発信します。
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