仮設住宅とはどんなところ?~災害救助法と実体験からご紹介~

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仕方なく住むことになる仮設住宅。どんな生活になるのだろう?と不安に感じるかもしれませんね。今回は仮設住宅について定めた[法律]を解説し、さらに[実体験]をもとに仮設住宅の暮らしをご紹介します。「知ることでできる備え」にぜひお役立てください。

目次

仮設住宅のもとになる「災害救助法」の基礎知識

日本で災害対策の中心となる法律は「災害対策基本法」。この法律では、災害予防・応急期の対応・復旧復興の3ステージを網羅的にカバーしています。

そして、応急期の対応を定めている法律の一つが「災害救助法」であり、仮設住宅について定められています。

災害救助法はすべての災害に適用されるとは限らない

災害救助法は、すべての地震や台風といった自然災害に適用されるとは限りません。

被災した市町村からの要請にもとづき、都道府県が状況を把握し次の適用基準にしたがって決定します。

適用基準

○災害が発生している状況で、次の場合。(法第2条第1項)

 ・住宅へ被害が生じた場合(1号~3号)

 ・多数の者が生命・身体への危害を受け、又は受けるおそれが生じており、避難して継続的に救助が必要な場合(4号)

○災害が発生するおそれがある場合で、次の場合。(法第2条第2項) ・国が特定・非常・緊急のいずれかの災害対策本部を設置

災害救助法で定めている支援は10種類

災害救助法では、仮設住宅を含む次の10種類の救助を「現に救助を必要とする人」に対しておこなうとしています。なお、都道府県は、救助の実施に関する事務の一部を、市町村長へ委任することができます。

救助の種類

①避難所、応急仮設住宅の供与 ②炊き出しその他による食品の給与、飲料水の供給 

③被服、寝具その他生活必需品の給与・貸与 ④医療・助産 ⑤被災者の救出 ⑥住宅の応急修理

⑦学用品の給与 ⑧埋葬 ⑨死体の検索・処理 ⑩障害物の除去

これらの救助をまとめた資料を、内閣府がイラストつきで作成しています(被災されたみなさまへ  災害時の「住まい」と「生活」の再建に向けて)。

申請に必要な書類や注意点なども記載されているので、一度目を通しておくと良いですね。

    仮設住宅の基礎知識~種類と費用・対象・入居期間

    ここからは、仮設住宅の入居にあたり具体的な項目「種類と費用」「対象者」「入居期間」についてお伝えします。

    種類と費用

    わたしたちが一般に「仮設住宅」と呼んでいるのは、正式には「応急仮設住宅(以下、仮設住宅)」といいます。

    応急仮設住宅の種類

    建設型応急仮設・・・プレハブや木材などで建てられるもの

    ②賃貸型応急仮設(「みなし仮設」と呼ばれているもの)・・・既存の民間住宅を借上げたもの

    ①②ともに家賃は無料ですが、光熱費などは自己負担になります。

    入居の対象者

    災害救助法によると、「住家が全壊、全焼又は流失し、居住する住家がない者であって、自らの資力では住宅を得ることができない者」と決められています。

    また「半壊であっても、住み続けることが困難な程度の傷みや避難指示の長期化が見込まれるなどの、全壊相当を含む」としています。

    自治体によって異なりますが、被災した当時に住んでいた所、被災した場所がどこかなども、入居できるか否かの要件になる場合もあります。

    入居期間

    最長2年とされていますが、「特定非常災害(※)の指定がある場合のみ、1年を超えない期間ごとの延長が可能」としています。

    (※)特定非常災害:著しく異常かつ激甚な非常災害

    ここまでは、仮設住宅について定めている「災害救助法」をもとにお伝えしました。

    次は、私の実体験をもとに、仮設住宅の暮らしについてご紹介いたします。

    [体験談] 仮設住宅での子育ては孤独とは無縁だった 

    私は、2011年に発生した東日本大震災によって、自宅アパートが全壊になりました。

    妊娠中ということもあり、民間のアパート(みなし仮設)をじっくり探すことよりも、仮設住宅(プレハブ型)に住むことを選びました。

    室内は想像以上に狭く、向かい側の棟との距離がとても近く、リビングのすぐ近くを人が通るといった環境でした。

    しかし、決して暗い毎日ではなかったのです。

    私が体験談を話す理由

    わたしがお話する体験談は、つらかったことではありません。むしろ、仮設住宅でよかったとさえ感じた出来事です。

    仕方なく住むことになった場所に、明るいイメージをもって住みはじめる人は、なかなかいないのではないでしょうか?

    日本各地で災害が発生しており、仮設住宅に住まざるを得なくなった方たちが、これからも出てくる可能性があります。

    だからこそ、わたしはあえて「仮設住宅でよかったこと」を話し、災害にあった方が前を向いて歩き出す、ほんの少しのお手伝いができることを願っています。

    仮設のおじいちゃん、おばあちゃんがたくさんできた

    わたしは、生後2ヶ月の我が子と住み始めました。夫は仕事で不在のため日中は子どもと2人で、不安を抱えていました。

    ですが、ほどなくその不安は消えたのです。

    100世帯以上が暮らす仮設住宅だったこともあり、敷地内はお散歩にちょうどよい広さでした。「あらぁー!」「何ヶ月?」「女の子?男の子?」と会う人たちが、声をかけてくれたのです。

    こちらをなんとなく見ている方には、勇気をだして私から「こんにちは」と挨拶をしました。ほとんどの方が、笑顔で接してくれたのです。

    ある高齢の男性は、「おれは仮設のおじいちゃんだからな」と言ってくださり、災害公営住宅に移ってからも、声をかけていただく仲になりました。

    いつしか私には、いつも誰かが見守ってくれている安心感がうまれていました。いまでは仮設住宅にいたから、孤立せずに子育てができたとも感じています。

    険しい表情がいまでも忘れられない 

    住み始めて間もない頃、お隣の方と洗濯物を干すタイミングが重なったのです。「おはようございます」と挨拶した私に、その高齢の男性は、チラッと見たものの無言で作業へと戻りました。

    その一瞬の表情に、私は怖さを感じてしまいました。

    とても険しくて、人を寄せつけない印象だったのです。しかし、この方がさきほどお話した「仮設のおじいちゃん」なのです。

    入居の挨拶にうかがった際には、娘の泣き声を心配する私に「大丈夫だから」と言ってくださり、笑顔はなかったものの怖さはまったく感じなかったのです。

    おなじ方が、ここまで違う表情を見せることに驚きを覚えつつ、言葉にしなくとも、ここに住んでいる人たちはつらい想いを抱えながら生きている、そのことをわたしは痛感したのです。

    その後も、わたしは顔を合わせるたびに挨拶をしつづけ、その方は軽く会釈を返してくれていました。

    ある日、仮設住宅内でおこなわれた支援イベントに我が子を抱いて参加しました。その日はじめて会う方も多く、ふたたび「あらー何ヶ月?」と声をかけていただいていたのです。

    その時、私に声をかけてくれた方にお隣に住んでいる方が「俺んちの隣なんだよな」と満面の笑顔で説明されたのです。お二人は、お知り合いだったようです。

    このようなことが幾度かあり、「おとなりの方」は「仮設のおじいちゃん」として、私の子育てを見守ってくれたのです。

    <音> ~大きな音の玄関チャイムにはメモで対応

    わたしの住んでいた市では、仮設住宅の管理業務を民間企業に委託していました。そこのスタッフの方が、毎日見まわりに来てくださったのですが、ひとつ困ったことがありました。

    玄関の呼び出し音が大きかったため、娘がお昼寝をしていると、その音で起きてしまうことが何度かあったのです。

    そのため、ドアに「お昼寝中なので、音は鳴らさずノックでお願いします」とメモを貼りました。

    お隣の生活音は、窓が閉まっているとまったく聞こえませんでした。むしろ、繰り返しになりますが、娘の泣き声が迷惑になることを心配しました。

    入居するとき、前後左右の方へご挨拶に伺ったのですが、どなたも快くわたしたちを迎えてくださりました。

    もし、この方たちのご理解がなければ、仮設住宅での子育てはとてもつらいものになったと感じています。

    <洗濯物> ~雨の日だけの特別なできごと

    室内に洗濯物が干されている仮設住宅は、いつにも増して窮屈感がありました。

    ところがある日、ご近所の方から「今日は七夕飾りだね」と言われたのです。私は一体なんのことを言っているのか、さっぱりわかりませんでした。

    その方は続けてこうおっしゃったのです。「うちは今日は大量に飾っているよ」と。そこでやっと、洗濯物のことだと気付いたのです。

    私はその発想の転換に驚くとともに、勇気をもらったのでした。「雨の日の嫌な点」と感じていたことが、「雨の日だけの特別なできごと」と思えて、憂鬱だった気持ちが少し軽くなりました。

    まとめ

    日本で最初となった仮設住宅の建設が関東大震災。いまではプレハブ、木造、移動式コンテナハウスと、さまざまなタイプがうまれ、災害救助法の見直しもおこなわれてきました。

    しかし、どんなに歴史をさかのぼっても、人間が災害に苦しんできたことに変わりはありません。備えるのは、非常食や防災グッズだけではありません。

    「災害がおきたときの状況を知っておく」ことも大切です。

    「実際に仮設住宅を見学・体験する」ことが、2021年10月から岩手県陸前高田市で可能になりました(3.11仮設住宅体験館)。

    家具などが再現された室内、体験談が掲示された展示室を見学、宿泊体験することもできます。機会があれば訪ねてみるのも良いですね。

    今回は、仮設住宅に関する一部分についてお話しました。まだまだ「備えのための情報」があるので、これからも、みなさんのお手伝いができればと思っています。

     

    【参考文献】

    内閣府「災害救助法の概要(令和2年度)」 http://www.bousai.go.jp/taisaku/kyuujo/pdf/siryo1-1.pdf

    内閣府 防災情報のページ「災害救助法」 http://www.bousai.go.jp/oyakudachi/info_saigaikyujo.html

    (以上)

    備えておこう!おすすめの防災グッズ

    これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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    この記事を書いた人

    東北出身&在住フリーライター。
    広告代理店・NPO・行政で勤務後、在宅ワーカーに転身。
    妊娠中に東日本大震災に遭い、津波から避難・仮設住宅で子育てをする。
    本サイトでは「命を守るために知っておきたいこと」「日常に潜むリスクへの備え」などについて発信します。
    詳しいプロフィールはこちら

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