ヒートショックとは、急激な温度差が原因で生じる体のダメージです。
雪国と言われるような寒さが厳しい地域では「寒さへの備え」が十分であっても、そうでない地域では意外と温度差を気にしない方もいるのではないでしょうか。
今回は「ヒートショックの症状と対処法」「ヒートショックがおこりやすい日常の場面」、さらに「ヒートショックを防ぐために今すぐできる5つの対策」をお伝えします。
ヒートショックは、条件がそろうと年代も地域も問わず引き起こされます。最悪の場合は死に至る危険なものです。
ぜひ事前にできる対策をとり自分そして大切な人の命を守りましょう。
ヒートショックとは急な温度変化によって体が受けるダメージのこと
繰り返しますが、ヒートショックとは、急激な温度差が原因で生じる体のダメージです。急激な温度差は、急な血圧の乱高下(らんこうげ)をもたらすため命にも関わる危険なものです。
身近な例をあげてみましょう。温かい場所から寒い所へ移動したとき、自然と体が身震いしますね。実はこれもヒートショックによるものです。
身震い程度であれば問題ないですが、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす場合もあるため、体の機能が衰えている高齢者や糖尿病・動脈硬化といった持病がある方は、特に注意が必要とされています。
若い人にもヒートショックは起きる
ヒートショックは若い人であっても注意が必要です。普段は何事もなくやり過ごしていた温度差でも、不規則な生活習慣やストレスによって血圧が影響を受けているなど、条件がそろえばヒートショックは起こり得るのです。
ヒートショックが原因で20代の家族を亡くした方が、その怖さを知ってほしいとSNSで対策を呼び掛けたこともあります。
ヒートショックは決して他人事ではなく「誰にでも起こり得る」ということを、頭に入れておきましょう。
ヒートショックの症状と対処法を知る
血圧は健康な体でも交感神経の働きによって、一日のなかで上下しています。ゆるやかな上下であれば自然なことですが、ヒートショックを引き起こすほどの急激な血圧の上下は危険です。
ヒートショックを起こすと、次のような症状が現れます。
- たちくらみ
- めまい
- 呼吸困難
- 嘔吐
- 激しい胸の痛み
- 頭痛
- ろれつが回らない
- 身体に力が入らない
- 意識を失う
このように、ヒートショックは軽度から重度まで幅広い症状があるため、ヒートショックを引き起こさないよう注意して過ごすことがとても大切です。
では、このような症状がでた場合、どうすれば良いのでしょうか。
ヒートショックが起きた場合の対処法
たちくらみ程度であっても転倒して骨折や頭を打つ可能性があり油断できません。無理に立ち上がろうとせず、できれば水分を取り体勢を低くして様子をみましょう。
呼吸ができず苦しい・胸が締めつけられるように痛むといった症状は、心筋梗塞の可能性があります。さらに、ろれつが回らない・頭痛がある・身体に力が入らない場合は脳卒中の可能性があります。このような場合は、ただちに救急車を要請しましょう。
心筋梗塞や脳卒中では嘔吐の症状も見られます。嘔吐物が喉につまらないよう、顔を横向きにしましょう。
もし、家族が浴槽のなかでもうろうとしていたり意識を失っていた場合は、口・鼻からお湯が入るのを防ぐため、浴槽から身体を引き上げます。難しい場合は浴槽のお湯を抜きましょう。
一人暮らしの方は、万が一に備えて、入浴やトイレの時にも携帯電話やスマートフォンを近くに持っていくよう意識しましょう。
ヒートショックが起こりやすい日常の場面
では次に、日常生活のどういった場面でヒートショックが起こりやすいのか解説しましょう。
温度差が原因のヒートショックは、入浴時に起こりやすいとされていますが、それだけではありません。私たちが普段何気なくおこなっている行動にも、ヒートショックの危険が隠れているのです。
浴室|寒い脱衣所や浴室と暖かい浴槽
住宅の構造にもよりますが、一般的に脱衣場や浴室はリビングよりも寒いことが多いものです。そのため、脱衣所や浴室は家の中で温度差が発生しやすく、ヒートショックが起こりやすい場所と言うことができます。
暖かいリビングで安定している血圧が、寒い脱衣所や浴室では血管は縮まり血圧が上がります。さらに、その状態で浴槽の温かいお湯の中に入ると体は温まるため、一気に血管が広がり血圧が下がるのです。その結果、ヒートショックを起こします。
食事や飲酒直後の入浴
食後は消化器官に多く血流が回るため、血圧が下がりやすい状態にあるとされています。先述のとおり入浴時には血圧が激しく上下しやすいため、食後の低血圧の状態での入浴は非常に危険です。
また、飲酒後も血圧は下がった状態のため、飲酒後の入浴もヒートショックを引き起こしやすくなります。
トイレ|排便にともなう血圧の上下にも注意
浴室と同様、家の中で温度差が生じる場所にはトイレもあげられます。それほど長くいる場所ではないため、危険への認識が薄れがちですが、トイレでヒートショックを起こした事例はあります。
実は、トイレには温度差だけではない危険があります。それは、排便時にいきむと血圧は上がり排便後は下がることです。この血圧の上下によっても、心筋梗塞や脳卒中の危険があるため、「トイレは温度差だけでなく排便時にも注意が必要」ということも頭に入れておきましょう。
温かい布団から急に寒い部屋へ
寒い冬の時期には温かい布団から出るのが嫌になりますね。このような日常の何気ない場面にもヒートショックの危険があります。
温かい布団の中から急に寒い部屋に起きると、体を温めようとして筋肉が縮まり血圧が上がるのです。
布団から出たとき身震いをすることがありますが、身震いもヒートショックの一つです。寒い日の朝におきる身震いは、ヒートショックを実感する身近な例と言えるでしょう。
室内外の温度差が10℃以上になる寒い日の朝
「ちょっとゴミをだすだけだから」と何も羽織らずにゴミを出しに行っていませんか?
寒い日の朝は室内外の温度差が大きくなるため注意が必要です。ヒートショックは温度差が10℃以上になると起こりやすいとされています。普段は何ともなくても、その日の体調や環境条件によっては、ヒートショックを引き起こす危険性も十分あります。
冬の朝は気温が低いので、なおさら注意が必要です。
このように、朝起きるときから夜寝るまで日常の何気ない場面において、ヒートショックを引き起こす危険があるのです。
ヒートショックを防ぐ!今すぐできる5つの対策
では、ヒートショックを防ぐにはどうずれば良いのでしょうか。ここでは、今すぐできる5つの対策をご紹介します。
対策1 「ヒートショック予報」をチェックする
一般財団法人日本気象協会では「ヒートショック予報」を発表しています。気象予測情報にもとづき、5段階(油断禁物・注意・警戒・気温差警戒・冷え込み警戒)で家の中におけるヒートショックの危険度を表しています。
寒い季節には天気予報だけでなく、この「ヒートショック予報」もチェックして、次にお伝えしていく具体的な対策をとっていくと良いでしょう。
対策2 室内の寒い場所は温めて・室外には温かい服装で
ヒートショックの原因である「温度差」をできるだけ低くすることが必要です。場面ごとの対策をご紹介しましょう。
お風呂の脱衣所
- お風呂に入る前に暖房器具で温めておく
暖房器具を使用する際は、衣服など燃える物が熱源に触れないよう注意しましょう。
浴室内
- 浴槽にお湯を入れるときフタせずにお湯をはる
- シャワーの高い位置からお湯をためる
トイレ
- 窓からの冷気を防ぐためカーテンを取り付けたり断熱フィルムを貼る
- 便座暖房や便座カバーを使って便座を温かくする
- 換気扇をつけっぱなしにしない
- 暖房器具で温める
寒い日の朝|起床時・ゴミ出し時
- 布団の中で手足を動かすなどの軽いストレッチをおこない、体を温めてから出る
- 寝る時、手の届くところに靴下や羽織るもの置き、朝はそれを身に着けてから起きる
- 暖房器具のタイマー機能を使い、朝の室内が暖かくなるようにする
- 朝のゴミ出しは、たとえ近くてもマフラーや上着など温かい服装で出かける
対策3 食後は1時間以上の休憩をとってから入浴
食後は消化にともない血圧は下がっていくので、最低でも1時間は空けてから入浴するようにしましょう。「仕事で夜遅く帰宅、慌ただしく食事と入浴をしている」という生活リズムの方は、食事の時間をできるだけ早くして休憩時間を確保するよう意識することも大切です。
対策4 お風呂の温度は41℃以下で10分以内
熱い温度や長時間の入浴は心臓にも負担がかかります。「熱いお風呂にじっくり入るのが好き」という方は、入浴剤を活用して低い温度にも慣れていく、入浴後の楽しみを見つけて入浴時間を短くするなどの工夫をしてみましょう。
対策5 入浴するときは家族に声をかけてから入る
家族と一緒に暮らしている場合、お風呂に入る前にひと声かけてから入浴するようにしましょう。そうすることで「知らない間にお風呂の中で溺れていた」といった事態を防ぐことができます。
いかがでしょうか。ヒートショックが引き起こされるのは入浴中が多いため、対策も入浴時のものが多くなります。
ですが、何度もお伝えするように、ヒートショックは入浴時以外でも起こるものです。トイレや起床時・ゴミ出し時における温度差も意識して、対策をとっていきましょう。
まとめ(Q&A)
今回お伝えした内容をQ&Aでまとめます。ぜひご家族やお友だちにも教えて、日常に潜むヒートショックの危険に備えてくださいね。
- ヒートショックとは何ですか?
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急激な温度差が原因で生じる体へのダメージのことです
- ヒートショックには、どのような症状がありますか?
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たちくらみ、めまい、呼吸困難、嘔吐、激しい胸の痛み、頭痛、ろれつが回らない、身体に力が入らない、意識を失うなどがあります。
- ヒートショックはなぜ危険なのですか?
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ヒートショックの原因である急激な温度差は、血圧を急に上下させるため、心筋梗塞や脳卒中になる危険があるためです。
- ヒートショックはどんな場面で起こりやすいですか?
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温度差が発生しやすい浴室やトイレ、食事や飲酒直後の入浴時にヒートショックを起こす危険があります。さらに、温かい布団から急に寒い部屋へ起きた時、室内外の温度差が10℃以上の時もヒートショックは起こりやすいとされています。
- ヒートショックを防ぐ対策はありますか?
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脱衣所・浴室・トイレなどの寒い場所を温めること、食後は1時間以上の休憩をとってから入浴すること、寒い外に行くときは暖かい服装をすることが有効です。また、入浴中はお湯の温度を41℃以下にし、長湯はせず10分~15分ほどで上がりましょう。日本気象協会が発表している「ヒートショック予報」をチェックして対策を講じるのも良いでしょう。
(以上)