知っておきたい電車の非常停止ボタン・ドアコックの注意点と安全対策

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電車内には必ず非常停止ボタンとドアコックがあります。ですが、消火器のように、私たちが訓練に参加をして、操作方法や操作後にどうなるかを知る機会はめったにありません。

今回は、車内の非常停止ボタンは押すとどうなるのか、ドアコックはどのように扱えばよいのかについて、国土交通省が示している手引きや対策とあわせてお伝えします

帰省や旅行などで電車を利用する際にはぜひ知っておきたい「非常停止ボタンとドアコックの注意点」。

最後までご覧いただき、ぜひ電車内の緊急事態から身を守る一つの手段として覚えておいてくださいね。

目次

緊急事態!非常停止ボタンの使用は積極的に

2021年(令和3年)10月31日京王線で乗客が刺され車内で火を発生させるという事件がおきました。これを受けて2021年(令和3年)12月3日に国土交通省が示した対策には「利用者への協力呼びかけ」として、次のように示されています。

 ・ 乗車時に非常通報装置の位置を確認すること

 ・ 非常時には躊躇(※ちゅうちょ)なく非常通報装置のボタンを押すこと

※引用 国土交通省「京王線車内傷害事件等の発生を受けた今後の対策について」より

車両によって、SOSボタンや緊急通報ボタンなど名称はさまざまですが、非常事態には非常通報装置(※以下、非常停止ボタン)を乗客が押すことが求められているのです。

非常停止ボタンを押した高校生が大人から受けた言葉

2019年(令和元年)5月29日「NHK 生活情報ブログ」には、急病人がでた車内で非常停止ボタンを押すよう他の乗客に協力を求めたものの、誰にも押してもらえず、自ら行動を起こした高校生の事例が掲載されています。

ボタンを押した高校生には、次のような言葉が向けられたと言います。

「子どもが押すなよ」

「あー遅れた!」

「遅延すると困るじゃないかー」

※引用  NHK 生活情報ブログ「緊急時 あなたはボタンを押せますか」より

その後、インターネットでは高校生の行動を賞賛する声とともに、「倒れたとき誰も助けてくれなかった」といった声も寄せられたと言います。

車内には、もしかしたら「非常停止ボタンを押してよいのか迷った」という人がいたかもしれません。

いろいろな事情を抱えた人が乗っている電車ですが、緊急事態は「いつ・どこで・誰の身に・起こるか」わかりません。天気のように予報することも不可能です。

「いつ自分の身に起こるかもしれない」電車内での緊急事態。自分が体調を崩す可能性ももちろんですが、自分が事件事故の被害者になってしまう可能性も残念ながらあります。

自分の身を守り被害を最小限にするための手段としても、「緊急時には非常停止ボタンを押す」と認識しておくのは大切ではないでしょうか。

緊急事態の内容は乗務員に伝えないとわからない?!

では、私たちが非常停止ボタンを押したら、すぐ乗務員は車内の状況を把握することができるのでしょうか。それは、電車に設置されている非常停止ボタンが、どのようなタイプかによっても異なります。

マイクが内蔵されているものなら乗務員に直接伝えられますが、そうでないタイプもあります。その場合、乗務員は緊急事態が起きたことはわかっても、それがいたずらなのか、急病人がでたのか、それとも事件の発生なのか「具体的なことはわからない」のです。

車内に防犯カメラがある車両であれば、それを使って把握することが可能かもしれません。ですが、現在すべての車両に防犯カメラが設置されているわけではありません

この点については、先述の国土交通省が示した対策のなかに取り上げられているので、以下に引用します。

◆車内の防犯関係設備の充実 

以下の事項について、費用面も考慮しつつ、必要な基準の見直しや費用負担のあり方も含め検討を開始する。 

・ 車両の新造時や大規模改修時における車内防犯カメラの設置(録画機能のみであるものを含む) 

映像や音声により車内の状況を速やかに把握できる方法等(非常通報装置の機能向上等)

※引用 国土交通省「京王線車内傷害事件等の発生を受けた今後の対策について」より

防犯カメラの設置には、個人情報の観点から懸念する声もあり、鉄道会社ではポスターなどを作成し乗客に理解を求めています。

では次に、非常停止ボタンを押したら電車はすぐに止まるのか?についてみてみましょう。

非常停止ボタンを押しても、すぐ止まらないこともある

各鉄道会社では当然、緊急事態を想定した訓練をおこなっています。ですが、私たち乗客が訓練に参加をして非常停止ボタンを押してみる、という機会はめったにありません。

そこで、非常停止ボタンを押したら電車はすぐ止まるのか調べてみました。すると、全ての鉄道会社に共通したルールはなく「非常停止ボタンが押されたときの対応も、鉄道会社によって異なる」ということがわかりました。

さらに、国土交通省が2010年(平成22年)3月に作成した「鉄道の安全利用に関する手引き」には、次のように記載されています。

車内非常通報装置(車内非常通報ボタン)には、乗務員と通話可能なタイプと乗務員室に表示が出るのみで通話ができないタイプとがあります。装置のタイプがいずれであるかにかかわらず、

これが使用されたときには、トンネルや橋りょう区間を除き列車を直ちに停止させることとしている事業者が多いです。しかし、装置のタイプがいずれであるかにかかわらず、

次駅まで走行してから対応するという事業者や、通話機能がある場合には通話によって内容を確認した後に対応を決めることとしている事業者もあります。

※引用 第2章 第2節ー6 「車内にある安全装置等(1)車内非常通報装置(車内非常通報ボタン) 」 より

つまり、「非常停止ボタンを押しても、すぐに電車が止まるとは限らない」ということです。

このことがわからないと「何で止まらないんだ!」とパニックになってしまい、冷静な行動がとれなくなってしまう可能性もあります。そうならないためにも、この点もしっかり頭に入れておきましょう。

ドアコックの使用は慎重に~外への避難は安全な状況下で

ドアコックとは、手動でドアを開けられるようにするための装置です。電車やバスのように自動ドアのある車両では、ドア付近に設置されています。

ドアコックの使用も緊急時に限られますが、先ほどの、国土交通省 2010平成22年)3月に作成した 「鉄道の安全利用に関する手引き」から、ドアコックに関する記載をみてみましょう。

・列車内で不審者や不審物の発見、急病人、けんかなどを見つけたとき、荷物がドアに挟まったときなどは、非常用ドアコックを使ってはいけません。

※引用 第2章 第2節ー6 「車内にある安全装置等(2)非常用ドアコック 」 より

特に、電車が走行中にドアコックを操作し外に出ようとする行為は危険であり二次被害の危険性も生じます。

電車内から外に出る際には、そこが安全に降りられる場所であるか、他の列車がくる危険性はないのかなど十分に注意しなければなりません。

このことを示すひとつの事例を取り上げてみましょう。

ドアコックを操作し外に避難したが、対向列車にひかれて亡くなる

1962年(昭和37年)5月3日常磐線三河島駅構内で3重衝突事故が発生し、160名の方が亡くなった「三河島事故」。

事故当初は軽傷者だけですんでいたのですが、ドアコックを操作し外にでて、線路上を避難していた乗客が列車にはねられてしまったのです。

被害が拡大した原因のひとつには、対向列車に発車の停止を告げる連絡が適切におこなわれなかったこともありますが、同時にドアコックを操作して外に避難する際の安全確保が不十分だったとも言えるでしょう。

同じく、国土交通省「鉄道の安全利用に関する手引き」には、次のような記載もあります。

・列車外に脱出するときは、他の列車や高電圧の設備などがあり、大変危険ですので、十分に注意しましょう 

※引用  第2章 第2節ー6 「車内にある安全装置等(2)非常用ドアコック 」 より

身の危険が迫っていれば当然、一刻も早く逃げなければなりませんが、乗務員の指示や周りの状況をふまえて、悲劇を繰り返すことがないよう行動しなければなりません。

非常停止ボタン・ドアコックの表示は電車によってさまざま

非常停止ボタンとドアコック、どちらもその見た目や仕様は電車によってさまざまです。

国土交通省が示した「京王線車内傷害事件等の発生を受けた今後の対策について」では、これらの表示に関して「各種非常用設備の表示の共通化 」として、次のように示しています。

非常通報装置に加え、車内の非常用ドアコックやホームドアの取扱い装置についても、路線の特性や装置の機能に応じ、ピクトグラムも活用した表示方法の共通化について検討・実施する。  

※引用 国土交通省「京王線車内傷害事件等の発生を受けた今後の対策について」 より

ゆくゆくは共通化された表示方法で目にすることになりそうですが、今後電車に乗る際には、これらがどこにあるのかぜひ一度確認しておくと良いですね。

私たちができる安全対策とは~手荷物検査の実施

電車内の緊急事態に使用する非常停止ボタンとドアコック。どちらも各車両には必ず設置されているものです。ですが、その使用については、それぞれに知っておくべき点、注意すべき点があります。

非常停止ボタンは、すぐに電車が止まらない可能性だけでなく、乗務員が瞬時に状況を把握できるとも限りません。

また、ドアコックは使用できないケースや、使用して外に避難する際の安全確保は不可欠です。もちろん過去には、ドアコックを使ったことで、乗客の命が守られたケースもあるため、適切に使うということが大切と言えるでしょう。

国土交通省が2021年(令和3)12月3日に示した「京王線車内傷害事件等の発生を受けた今後の対策について」では、「手荷物検査の実施に関する環境整備」として、次のように示されています。

「(中略)危険物の持込みを防ぐために必要に応じて手荷物検査を実施することについて旅客等に対し理解と協力を求める

※引用 国土交通省「京王線車内傷害事件等の発生を受けた今後の対策について」より

海外では、飛行機だけでなく、電車においても手荷物検査が当たり前におこなわれている国もあります。お国事情も異なり日本での実施には課題もあると思われますが、手荷物検査は私たちの安全が守られるための対策の一つになり得るでしょう。

このように、鉄道会社が対策をするのはもちろんですが、私たち乗客が「非常停止ボタンとドアコックについて理解する」ことも、私たちにできる対策の一つになるのではないでしょうか。

【参考文献】

国土交通省「鉄道の安全利用に関する手引き」平成22年3月 https://www.mlit.go.jp/common/000128837.pdf

国土交通省「京王線車内傷害事件等の発生を受けた今後の対策について」 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001444153.pdf

NHK 生活情報ブログ「緊急時 あなたはボタンを押せますか?」https://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/1100/368254.html

特定非営利活動法人 失敗学会 失敗知識データベース「桜木町の列車火災」http://www.shippai.org/fkd/cf/CA0000603.html

Wikipedia「三河島事故」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%B2%B3%E5%B3%B6%E4%BA%8B%E6%95%85

(以上)

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この記事を書いた人

東北出身&在住フリーライター。
広告代理店・NPO・行政で勤務後、在宅ワーカーに転身。
妊娠中に東日本大震災に遭い、津波から避難・仮設住宅で子育てをする。
本サイトでは「命を守るために知っておきたいこと」「日常に潜むリスクへの備え」などについて発信します。
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