身近な用語の意味を解説する、今回のテーマは「温帯低気圧」。
天気予報では「低気圧が発達して・・・」「台風が温帯低気圧に変わりました」、などと伝えられることがあります。
低気圧も台風も馴染みのある言葉ですが、それらと「温帯低気圧」とはどのように違うのでしょう?
そこで今回は「温帯低気圧」の特徴、そして熱帯低気圧や台風との違いについてしらべてみました。
すると、温帯低気圧にも備えが必要な場合もあることがわかったのです。
ぜひ本記事を参考にして何となくわかる天気予報をしっかり理解できるものに変え、災害に備えていきましょう。
温帯低気圧と熱帯低気圧では発生源が異なる
温帯低気圧の特徴をお伝えするまえに、まずは温帯低気圧と熱帯低気圧の違いを解説します。
これらの違いは、ひと言でいうと「発生源の違い」つまり「何をエネルギーとして発生するのか?」ということです。
温帯低気圧と熱帯低気圧それぞれ2つのキーワードを使い、できるだけ簡単に説明します。
はじめに、温帯低気圧の発生からみていきましょう。
温帯低気圧は中緯度で発生する
気象庁は温帯低気圧について次のように説明しています。
温帯低気圧は、中緯度(ちゅういど)地域で発生し、発達する低気圧です
気象庁|はれるんランド「台風、熱帯低気圧、温帯低気圧は、どうちがうの?」より引用
温帯低気圧を理解するうえでポイントとなるのが、この“中緯度”という場所です。
キーワードは「冷たい空気」と「温かい空気」
温帯低気圧が発生する中緯度は、北からの「冷たい空気」と南からの「温かい空気」が接する場所にあたります。
そして、これらの「冷たい空気」と「温かい空気」という、性質の異なる2つの空気が交わろうと渦を巻くエネルギーによって、温帯低気圧が発生・発達するのです。
異なる性質をもつ2つの空気の境目を「前線」と言います。
温帯低気圧は前線をともなうことが多い
ここで温帯低気圧の特徴をお伝えします。それは「前線をともなうことが多い」こと。
天気図で確認してみましょう。
天気図の北側に2つの低気圧があります。
天気予報で単に低気圧と言った場合には、基本的に温帯低気圧のことを指しています。
右側の低気圧(温帯低気圧)には、寒冷前線(青色)と温暖前線(赤色)が示されています。
低気圧では外側から低気圧の中心にむかって空気が吹きこみ、反時計回りに流れています。そのため、温帯低気圧では北から「冷たい空気」が入ることで南西に寒冷前線ができ、そして南からの「温かい空気」が入る南東には温暖前線ができるのです。
では、話を温帯低気圧と熱帯低気圧の違いに戻しましょう。
熱帯低気圧のキーワードは「多くの水蒸気」と「温かい空気」
熱帯低気圧とは『熱帯または亜熱帯地方に発生する低気圧の総称※』とされています。※気象庁|気圧配置 台風に関する用語より引用。
この地域の海上では「多くの水蒸気」が発生します。そして、この水蒸気をふくむ空気が上昇する動きと、まわりの「温かい空気」の働きによって渦ができ、熱帯低気圧が発生するのです。
ここまでの話をまとめると、次のようになります。
◆発生源の違いで低気圧を分類
- 温帯低気圧は「冷たい空気」と「温かい空気」をエネルギーとして発生
- 熱帯低気圧は「多くの水蒸気」と「温かい空気」をエネルギーとして発生
温帯低気圧と熱帯低気圧の違いは、この2つのキーワードとともに覚えておくと、わかりやすいのではないでしょうか。
次に、熱帯低気圧とともによく聞く言葉でもある「台風」についてみていきましょう。
台風は熱帯低気圧が発達したもの
台風とは簡単に言うと「熱帯低気圧が発達して、風が強くなったもの」です。
気象庁の定義は、次のとおりです。
熱帯の海上で発生する低気圧を「熱帯低気圧」と呼びますが、このうち北西太平洋(赤道より北で東経180度より西の領域)または南シナ海に存在し、なおかつ低気圧域内の最大風速(10分間平均)がおよそ17m/s(34ノット、風力8)以上のものを「台風」と呼びます。
気象庁「台風とは」より引用
つまり台風とは、特定の領域にある熱帯低気圧のなかで「最大瞬間風速が、17メートル毎秒(=17m/s)を超えたもの」と言い換えることができます。
そのため、熱帯低気圧の発生源である「温かい空気」のエネルギ-が衰えた場合には、台風から熱帯低気圧に戻ることもあるのです。
ここまで、台風と熱帯低気圧の関係について解説しました。
台風が温帯低気圧に変わるとどうなるの?
では、天気予報で聞く「台風が温帯低気圧に変わる」とは、一体どういうことでしょう。
台風の移動にともない「冷たい空気」が入りこむ
くりかえしますが、温帯低気圧とは「冷たい空気」と「温かい空気」の温度差にともなうエネルギーによって発生、そして、台風(熱帯低気圧)は「多くの水蒸気」と「温かい空気」をエネルギー源とします。
つまり、温帯低気圧であるためには「冷たい空気」の存在が不可欠です。
したがって、台風が移動して「冷たい空気」が流れこむ場所まで到達すると、徐々に台風(熱帯低気圧)から温帯低気圧の構造へと変わっていくのです。
専門的な話を抜きにして簡単に言うと「温かい空気だけでできていたものに、冷たい空気が交ざり、性質が変わった」という感じになります。
温帯低気圧に変わっても強風になる
温帯低気圧と聞くと、おだやかなイメージをもつかもしれませんね。
しかし、温帯低気圧では台風とは異なる点で注意が必要なのです。
それは「温帯低気圧では中心から離れた所でも強風となる」こと。
イメージしやすいように、天気図で確認してみましょう。
左の図が台風、右が温帯低気圧です。そして、矢印の色は「緑→オレンジ→赤」の順で風速が強くなっています。
これを見ると、台風では中心付近の風速が強くなっています。
それに対して、温帯低気圧ではより広範囲で強い風が吹いていることを確認できるでしょう。
したがって、台風が温帯低気圧に変わったときには、台風よりも広い地域において強風への備えが必要なのです。
まとめ|気象庁こども向けサイトで気象について学ぼう!
本記事では「温帯低気圧の特徴」と「熱帯低気圧や台風との違い」、そして「台風が温帯低気圧に変わったときの影響」について簡単に解説しました。
以下に、主な内容をまとめます。
- 1.温帯低気圧と熱帯低気圧の違い
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種類 発生域 発生源 温帯低気圧 中緯度 「冷たい空気」と「温かい空気」による温度差 熱帯低気圧 熱帯地域 「温かい空気」と海上から上昇する「多くの水蒸気」 - 2.温帯低気圧の特徴
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「冷たい空気」と「温かい空気」が接するため、前線(寒冷前線・温暖前線)をともなうことが多い。
- 3.台風は温帯低気圧や熱帯低気圧とはどう違う?
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台風とは熱帯低気圧が発達し、特定の領域において「風速17メートル毎秒(=17m/s)以上」になったもの。
- 4.台風が温帯低気圧に変わるとどうなる?
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台風は中心付近で強風が多く発生するが、温帯低気圧は中心付近にかぎらず広範囲で強風となる。
天気予報は日々見聞きするため、私たちは自然と専門的な気象用語にふれています。ですが、気象予報士(本サイト内関連記事)などの専門家でなければ、その用語の意味は“なんとなくわかる”という感じでしょう。
そこで最後に、参考サイトをご紹介します。気象庁ではこども向けサイトとして、きっずコーナー「e-気象台」を開設しています。
そのなかの「はれるんライブラリー」では、天気や気象・地震や地球環境などに関するさまざまな質問に答えています。たとえば「どうして高気圧や低気圧ができるの?」など、あらためて知って確認しておくと、より日々の天気予報が理解しやすくなるような質問がたくさんあります。ぜひこちらも参考にご覧ください。
【参考文献】
*気象庁|気圧配置 気圧・高気圧・低気圧に関する用語
*気象庁|はれるんライブラリー「気温・湿度・気圧」
*気象庁|はれるんランド「なぜ台風が発生するの?」
*気象庁|台風の一生
*気象庁|台風とは
(以上)