宮城県沖地震ではブロック塀による圧死が発生~その教訓はいかされているのか?

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「人口50万人以上の都市をおそったはじめての地震」と言われた宮城県沖地震から、今日(2023年6月12日)で45年目となります。

今回は、宮城県に住んでいる筆者がこれまで耳にしてきたこともふくめ、宮城県沖地震がどのような影響をもたらしたのかを振り返り、その教訓が生かされているのか考察します。

過去の災害を知ることが、備えに生かされることも多くあります

ぜひ本記事をその参考にしていただければ幸いです。

目次

宮城県沖地震(1978年)ではおおくのブロック塀が倒壊

宮城県沖地震は1978年(昭和53年)6月12日17時14分に発生、地震の規模はマグニチュード7.4、最大震度5でした。

この地震の特徴として「ブロック塀の倒壊による被害」があげられています。ブロック塀は住宅の外壁として、防犯やプライバシー確保といった点から使用されているものです。

宮城県ではこの地震を機にブロック塀への地震対策がすすめられたといいますが、発生から45年がたった現状はどうなっているのでしょう。

はじめに、筆者が聞いた当時の様子からご紹介します。

「ブロック塀がたおれていて怖かった」

現在、宮城県に住んでいる筆者ですが、宮城県沖地震は経験していません。しかし、これまで同級生や職場の人から「宮城県沖地震こわかったね」「地震のこと覚えてる?」と、聞かれることが何度もあったのです。

同級生は「お母さんが慌てて幼稚園にむかえにきた」「帰り道、ブロック塀があちこち倒れていて怖かった」と、当時の体験をおぼえている人がほとんどでした。

筆者自身は経験していなくとも、何度も耳にしていることで地震の怖さや備えの大切さを自分ごとのように感じてきたのです。

宮城県では今もなお危険ブロック塀がある

宮城県沖地震では、亡くなった方の大半がブロック塀や門柱などの下敷きとなる圧死でした。そのため、宮城県では宮城県沖地震(1978年)以降、長年にわたり危険ブロック塀についての調査および個別訪問による指導をおこなっています。

その間、東日本大震災はもちろん、岩手・宮城内陸地震(2008年6月14日発生、マグニチュード7.2、最大震度6強)といった大きな地震も発生しています。

しかし、45年が経った現在でも『仙台市で234ヶ所、仙台市以外では51ヶ所』のブロック塀で倒壊のおそれがあり「撤去が必要」とされているのです。【参考】NHK:宮城 NEWS WEB|宮城県沖地震から45年 ブロック塀対策が依然課題に

大阪北部地震(1998年)ブロック塀で小学生が死亡

今年(2023年)で発生5年目となる大阪北部地震(1998年7時58分頃発生、マグニチュードM6.1、最大震度6弱)では、大阪府高槻市において登校中の小学4年生がブロック塀の下敷きとなり亡くなっています。

いかにブロック塀が危険であるかを、あらためて社会に警告するものとなったのです。

その後、高槻市ではブロック塀からフェンスなどへの切り替えをすすめており「小中学校については2022年度中、幼稚園や公民館などは2028年度までに完了予定」とされています。【参考】NHK:関西 NEWS WEB|大阪北部地震4年 学校の塀倒壊で女児死亡 高槻市で黙とう

いつ地震がおきるかわからないなか、子どもをはじめ住民の命をまもる対策は急務といえるでしょう。

宮城県沖地震(1978年)がもたらした影響

宮城県沖地震の発生はその後、全国および宮城県にどのような影響をもたらしたのでしょう。

その一部をご紹介します。

建築基準法の改正へつながった

現在、建物の耐震性を判断する1つの目安となっているのが、その建物の建築年です。それは1981年に建築基準法が改正され、耐震の基準がひきあげられているためです。

1978年宮城県沖地震の発生当時、建築基準法で定めた耐震基準は「震度5の揺れで建築物が倒壊・崩壊しないこと」でした。しかし、家屋の倒壊による被害がもたらされたことで基準の見直しがおこなわれています。

その結果、宮城県沖地震から3年後にあたる1981年に改正され、新しい耐震基準では「震度6強から7でも倒壊・崩壊しないこと」となったのです。

地震保険加入率は宮城県がトップ

一般社団法人日本損害保険協会の資料によると、2021年度における地震保険加入率は、全国で宮城県がもっとも高く52.7%となっています。【参考】一般社団法人 日本損害保険協会|地震保険の都道府県別加入率の推移(損害保険料率算出機構調べ)

この加入率の高さを顕著にしめすこととなる出来事が、2022年に宮城県でおきています。それは、3月16日に発生した地震(最大震度6強)調査のために損害保険会社がタクシーをかりあげたため、県内でタクシー不足となったのです。

それは「多いときには100台ほどが待機しているJR仙台駅のタクシープールで、19日には10台程度」だったほどです。

地震保険は火災保険とセットでなければ加入できません。火災保険では適用外となる「地震が原因による被害」が補償されるため、地震後の生活再建には欠かせない備えといえるでしょう。

宮城県沖地震(1978年)の被害状況

ここではあらためて、1978年に発生した宮城県沖地震の被害状況について各資料をもとにおつたえします。

地震の規模・人的被害

地震の規模と人的被害は次のとおりです。

地震の規模
1978年(昭和53年)6月12日17時14分発生、マグニチュード7.4、最大震度5 

1978年当時の震度階級には、現在の「震度5弱・5強」および「6弱・6強」はありません。1995年1月17日の阪神淡路大震災の発生を機に見直しされ、1996年10月1日にそれまでの8段階から10段階になっています。

震度5を記録した地域
 ・岩手県大船渡市
 ・宮城県石巻市・仙台市
 ・山形県新庄市
 ・福島県福島市

仙台管区気象台「宮城県に影響を及ぼした地震・津波の被害」より引用

津波は茨城県でも観測された

宮城県沖地震ときくと、東北地方だけに影響があったと思うかもしれませんが、そうではありません。

茨城県でも津波が観測されているのです。

津波の高さ(一部)
北海道:釧路17cm、函館10cm
青森県:八戸22cm
岩手県:宮古14cm、大船渡24cm
宮城県:鮎川20cm、仙台新港30cm
福島県:小名浜15cm
茨城県:日立港18cm、大洗17cm、鹿島港16cm など

仙台管区気象台「宮城県に影響を及ぼした地震・津波の被害」より引用

死亡者は10歳未満と60歳以上が多数

この地震で亡くなった方は29人であり、このうち『10歳未満が9人(31%)・60歳以上が12人(41%)』となっています。

死亡原因
・ブロック塀の下敷(12人)
・コンクリート塀、石塀の下敷(2人)
・門柱、石碑の下敷(4人)
・家屋倒壊の下敷(4人)
・ショック死(4人)
・がけ崩れ(1人)
・その他(2人)

国立防災科学技術センター『1978年宮城県沖地震による災害現地調査報告』昭和53年10月 6頁より引用

家屋以外の下敷となって亡くなった方が18人であり、全体の半分以上をしめています。

建物等被害
・家屋全壊(580戸)
・ 〃半壊(5185戸)
・ 〃一部損壊(57179戸)
・道路損壊(769ヶ所)

国立防災科学技術センター『1978年宮城県沖地震による災害現地調査報告』昭和53年10月 5頁より引用

先ほどおつたえしたように、建築基準法改正の見直しにつながるほど、家屋への被害も顕著なものでした。

45年前の宮城県沖地震の経験を備えに生かす

宮城県では「次の宮城県沖地震の発生」が話題になることもあり、事実「今後マグニチュード7.4前後の地震がおきる可能性は、30年以内に70%~80%」だとされています。【参考】地震本部|宮城県沖

それほど地震が多いところであり、たとえば、今から15年前の2008年6月14日には「岩手・宮城内陸地震(マグニチュード7.2、最大震度6強)」が発生、大規模な土砂崩れなどにより18人の方が亡くなっています。

そして、2011年3月11日東日本大震災(マグニチュード9.0、最大震度7)が発生。

東日本大震災は海底を震源とする「海溝型地震」ですが、岩手・宮城内陸地震は地面真下が震源の「内陸型地震(直下型地震)」です。それぞれに被害をもたらす要因は異なりますが、わたしたちの命が危険にさらされることに変わりはありません。

宮城県は東北地方の中心として、就職や転勤等によって来られる方が多いところでもあります。また、日本各地で地震が頻発している現状でもあり、備えの大切さを実感されている方も多いことでしょう。 

経験を語りつぎ、過去の地震でなにがおきたかを知ることが、備えに生かされることも多くあります

宮城県沖地震から45年目を機に、河北新報では体験談を募集・公開しています。そこには、当時3歳・4歳だった方の記憶もあり、いかに大きな地震だったのか知ることができます。

ぜひ「過去の災害を知る」という取りくみをおこなってみてはいかがでしょう。

河北新報オンライン
宮城県沖地震45年 語り継ぐ「わたしの記憶」<アンケート詳報 40~50代編>
宮城県沖地震45年 語り継ぐ「わたしの記憶」<アンケート詳報 60~80代以上編>

【参考文献】
*NHK 宮城 NEWS WEB|宮城県沖地震から45年 ブロック塀対策が依然課題に
宮城県公式サイト|宮城県の危険ブロック塀対策について
*NHK 関西 NEWS WEB|大阪北部地震4年 学校の塀倒壊で女児死亡 高槻市で黙とう
*近畿地方整備局|2018年(平成30年)大阪北部地震
*khb5|震度6強の余波 仙台でタクシーがつかまりにくい状況続く 損保会社が被害調査で多数借り上げ
*YAHOO!JAPANニュース|【解説】“都市型災害”宮城県沖地震から44年 この地震をきっかけに日本の「耐震基準」が変わる
宮城県公式サイト|平成20年 岩手・宮城内陸地震からの復旧について(栗原管内)

(以上)

備えておこう!おすすめの防災グッズ

これから用意しようと思っている方におすすめなのが「Defend Future」の防災士が監修した防災グッズ。自分でリュックに詰められるようになっていたり、簡単に手に入りやすい紙皿などは除いているなど、個人が防災にきちんと向き合えるようになっています。

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この記事を書いた人

東北出身&在住フリーライター。
広告代理店・NPO・行政で勤務後、在宅ワーカーに転身。
妊娠中に東日本大震災に遭い、津波から避難・仮設住宅で子育てをする。
本サイトでは「命を守るために知っておきたいこと」「日常に潜むリスクへの備え」などについて発信します。
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