災害用語を解説する今回のテーマは「シェイクアウト」です。
シェイクアウト(ShakeOut)とは地震の一斉(いっせい)防災訓練のことで、アメリカでつくられた造語です。
自宅や職場などそれぞれの場所で訓練に参加でき、かつ、いっせいに同じ行動をとって地震から身を守ります。
わざわざ訓練会場までいかなくても、訓練に参加できることがメリットの1つです。
今回は「一般的な訓練とシェイクアウトの違い」や「シェイクアウト訓練のメリット」について解説します。
さらに、「プラス1(ワン)訓練」とよばれる災害への備えについてもお伝えするので、ぜひ本記事をよんで防災対策を一歩すすめてくださいね。
シェイクアウトは新しい形の地震防災訓練
さっそく、シェイクアウトがどういったものか詳しく解説しましょう。
ロサンゼルスを中心に広がった訓練
シェイクアウト(ShakeOut)は「新しい形の地震防災訓練」として、2008年アメリカのロサンゼルス(カリフォルニア州)を中心にはじまりした。カリフォルニア州はアメリカのなかでも地震の多い地域として知られています。
多くの人がシェイクアウト訓練に参加をし、第1回(2008年)訓練には約570万人、そして第4回(2011年)では950万人が参加するほど、社会的に大きな動きとなったのです。
日本では2011年11月はじめて実施
現在、日本におけるシェイクアウトの普及・情報発信などをおこなうのが「日本シェイクアウト提唱会議」です。
会長をつとめる林春男氏(国立研究開発法人 防災科学技術研究所 理事長)は、当時アメリカでシェイクアウトが普及している状況を体験し、日本版シェイクアウトの普及にむけて動きだしたのです。
そして、2012年3月9日東京都千代田区において、第1弾となるシェイクアウト訓練がおこなわれました。
シェイクアウトと一般的な訓練とのちがい
地震を想定した防災訓練なら、これまでも各地でおこなわれています。
このような一般的な訓練とシェイクアウトが違う点は、おもに次の3点です。
➀ 1ヶ所に集まっておこなう訓練ではない
➁ 参加者は全員同じ行動をとる
③ 個人で参加するときも事前に申込が必要
それぞれ解説します。
どこにいても参加できる
これまでの防災訓練は、決められた訓練会場に参加者が出向いておこなわれます。
しかし、シェイクアウトは自宅や職場など参加者それぞれがいる場所で訓練に参加することができます。
地震はどこにいるとき起こるかわかりませんし、訓練会場まで行くのは大変という方もいます。
このような点で「その場で参加できる」シェイクアウトは、多くの方が参加しやすい防災訓練だといえるでしょう。
いっせいに同じ体勢をとる「DROP・COVER・HOLD ON」
シェイクアウトでは参加者が「いっせいに同じ体勢」をとります。
それは、3つの安全確保行動とよばれるもので「姿勢は低く(DROP)・頭を守り(COVER)・動かない(HOLD ON)」です。
小学校の避難訓練で「机の下にもぐりなさい!」と言われた記憶がある方も多いのではないでしょうか。まさに、これは安全確保行動といえるでしょう。
地震の揺れでバランスをくずしてたおれないよう「姿勢は低く」し、固定された机があれば下にもぐって「頭を守り」ます(固定されていなければ机の足を両手でもってささえる。もぐるものがないときは、荷物や腕で頭をまもります)。
そして、揺れがおさまるまでこの体勢のまま「動かない」のです。
訓練はたった「1分間」
シェイクアウトでは、この体勢を「1分間」おこないます。
この“短時間”にすることでも、より多くの人が参加しやすくなることをめざしているのです。
そして、大きい地震が発生したとき、とっさに安全を確保する行動がとれるよう、シェイクアウトを通じて身につけることが期待されています。
事前申込で防災の意識をたかめる
シェイクアウト訓練への参加は、企業や学校など団体のほか個人であっても参加申込(事前登録)が必要です。
これは「シェイクアウトに参加する」というみずから意思表示することが、防災対策の普及には大切であり効果的だと考えられているためです。
その意思をサポートするため、日本シェイクアウト提唱会議では事前に防災対策を学習できる資料を提供しています。
また、訓練をおこなう主催者にとっては、日本シェイクアウト提唱会議がさだめる訓練基準の認定をうけることで、ホームページへの情報掲載や音源が提供されるのです。
シェイクアウトをおこなうメリットとは?
シェイクアウトは安全確保の行動をとるだけではありません。
参加申込にはじまり事前学習をふまえた訓練への参加、そして訓練のふりかえり(報告や情報発信)までを総称して、シェイクアウトだとしています。
ここでは、このようなシェイクアウトに参加することでえられるメリットについておつたえします。
過去の災害を知るキッカケにもなる
日本シェイクアウト提唱会議では、基準をみたし認定をうけた主催者の訓練情報をホームページでおしらせしています(こちらからどうぞ)。
たとえば、2023年6月15日にシェイクアウト訓練をおこなう京都府八幡市では、いまから5年前(2018年)の6月18日、大阪北部地震において震度5強の揺れを観測しています。
また、富山県と千葉県酒々井町は、今年で100年目となる関東大震災の発生日(9月1日)に実施します。
このように、かつて経験した大地震にちなんでおこなうシェイクアウト訓練は、過去の災害について学ぶとともに防災対策をみなおすよいキッカケにもなるでしょう。
この「防災対策のみなおし」は、シェイクアウト訓練に参加することでえられる大事なメリットでもあるのです。
「プラス1(ワン)訓練」でさらに地震に備える
シェイクアウトには「プラス1(ワン)訓練」とよばれるものもあります。
これは、安全確保の行動を1分間とったのち、さらに防災につながる行動をとることで、災害の備えにつながるものです。
「プラス1(ワン)訓練」に決められた行動はありません。ここでは、その一例となる行動を本サイト内の関連記事とあわせて、ご紹介します。
◆「プラス1訓練」でとりくみたいこと(一例)
家具の配置の見直し(圧死をふせぐ)
食料や日用品など備蓄品のチェック(最低3日、できれば1週間分)
連絡手段の確認(WEB171など)
このほか、避難場所の確認や避難リュックの点検などもあるでしょう。
まとめ
シェイクアウトは地震から身を守るための訓練です。
事前登録をした参加者は、訓練開始とともに1分間「姿勢は低く(DROP)・頭を守り(COVER)・動かない(HOLD ON)」といった体勢をとります。
その後は「プラス1(ワン)訓練」として、家具の配置や備蓄品のみなおしなどをおこい、防災対策をさらにすすめるのです。
『災害時には、訓練したことしか役立たない』と言われることもあります。
自宅でも参加できる訓練「シェイクアウト」をつうじて、さらに一歩、防災対策をすすめてみてはいかがでしょう。
【参考文献】
*日本シェイクアウト提唱会議
*近畿地方整備局|2018年(平成30年)大阪北部地震
(以上)