ラハールは火山災害をもたらす危険な現象~日本でおきた2つの事例

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災害用語を解説する、今回のテーマは「ラハール」です。

火山がもたらす災害といえば、まず「噴火」を思いうかべる方も多いでしょう。

しかし「ラハール」も噴火にともなって、もしくは噴火直後でなくとも発生する可能性がある危険な現象なのです。

今回は、ラハールとはなにかを確認したのち、日本で実際にラハールがみられた2つの事例をご紹介します。

あらたに知る用語「ラハール」について、ぜひいっしょに学びましょう。

目次

ラハールとは火山地帯における土石流

はじめに、ラハールの定義と特徴を確認します。

火山の噴出物が水分とまざりあっている

ラハールとは「火山泥流(かざんでいりゅう)や土石流」をあらわす用語で、インドネシア語に由来します。

火山泥流は、火山噴出物(噴火によって地上にふきでた物質)が水分とまざり、地表を流れくだる現象です。

水と土砂がまじったものを土石流といいますが、ラハールは「火山で発生する土石流」とかんがえるとイメージしやすいでしょう。

ラハールがおきる原因と特徴

ラハールはおもに次の3つが原因でおこるとされています。

➀高温の火山噴出物が雪や氷を急速に溶かす
➁火口湖があふれだす
③雨によって火山噴出物がながれだす

➁の火口湖とは噴火口に水がたまってできた湖です。これらの原因をみると、すべてに“水分”が関係していることがわかります。

さらに噴火直後にかぎらず、山肌に堆積した火山噴出物が雨によってながれでることでも、ラハールは発生するのです。

ラハールは時速数十㎞になることもあるとされ、火山災害のなかでは大きい被害をもたらすとされています。

火砕流とのちがい

火山噴出物が流れだす現象には“火砕流(かさいりゅう)”もあります。

火砕流は噴火にともなって火山噴出物が火山ガスなどとともに高速で流れくだる現象です。

さきほどラハールの原因でもおつたえしたように、ラハールは何かしらの水分をふくみながら流れていきます。しかし、火砕流はそうではありません。

さらに、火砕流は噴火にともなっておきる現象ですが、ラハールがおきるのは噴火だけに限らないのです。

融雪型火山泥流(ゆうせつがた かざんでいりゅう)

ラハールをひきおこす原因のなかで、高温の火山噴出物が雪や氷を溶かしたことで発生するラハール(原因➀)を「融雪型火山泥流(ゆうせつがた かざんでいりゅう)」といいます。

溶けた雪は大量の水分となり、地表の土砂などをまきこみながら遠くはなれた地域にまで達することがあるのです。

そのため、その被害は甚大なものであり、山に積雪のある時期に発生した噴火では、融雪型火山泥流がおきる可能性を念頭におく必要があるでしょう。

ラハールの事例を写真と映像でみてみよう 

過去日本では実際にラハールがおきています。

ここでは、北海道の十勝岳で発生した融雪型火山泥流の事例、そして箱根山大涌谷でとらえたラハールの映像をご紹介します。

十勝岳(北海道)で融雪型火山泥流

出典:北海道美瑛町「十勝岳噴火の記録」

北海道美瑛町(びえいちょう)にある十勝岳(とかちだけ)は、過去5回(1857年、1887、1926年、1962年、1988)の噴火活動が記録されている活火山です。

1926年5月24日の噴火では融雪型火山泥流が発生し、『爆発後わずか25〜26分で火口から25キロメートル の上富良野原野に達した』とされています(北海道美瑛町「十勝岳噴火の記録」より引用)。

噴火後30分ほどで、遠くはなれた土地まで火山噴火物が泥のように流れついており、冒頭の画像からもそのすさまじさを知ることができるでしょう。

現在(2023年6月2日)、十勝岳は「噴火警戒レベル1(活火山であることに留意)」のもっとも低い警戒レベルとなっています。

箱根山大涌谷でラハール発生(2015年)

箱根山は文献にのこされるほどの噴火活動はないものの、現在でも噴煙がのぼり土石流も発生している活火山です。

出典:ANNnewsCH「箱根山で“火山泥流” 気象庁発表の半日前に噴火か(15/07/04)」

箱根山大涌谷(おおわくだに)では、2015年4月から火山性地震などの異変がみられ、6月29日には観測史上はじめて振動が継続する「火山性微動」が発生しました。

このとき、火山泥流がおきていた映像がのちにテレビで放映されたのです。

一時、噴火警戒レベルは「3」にまであがりましたが、同年11月には「1」に引き下げられ、現在も「1」となっています。

イラストで活火山・噴火警戒レベルを学ぶ 

ラハールは火山地帯において発生する現象です。

発生の原因は火山噴火だけにかぎらないものの、火山がひきおこす災害から身をまもるためには、噴火について知っておくことも大切でしょう。

ここでは“活火山”と“噴火警戒レベル”についておつたえします。

活火山は2つの条件をみたした火山

活火山とは、次の2つをみたす火山のことを指しています。

➀概ね過去1万年以内に噴火した火山、であり
➁現在活発な噴気活動のある火山

現在(2023年6月2日)、111の火山が活火山に指定されています。

出典:気象庁「活火山とは」

24時間観測・監視している「50」の活火山

活火山のなかには「常時観測火山」とよばれるものがあります。

これは、24時間体制で観測・監視している活火山であり現在「50」の活火山が指定されています。

出典:気象庁「活火山とは」

噴火警戒レベルは5段階

日頃、天気予報で大雨警報といった言葉をきくことがありますが、火山の噴火にもおなじようなものがあります。

警報は「警戒が必要な範囲」によってわけられています。

警戒が“火口周辺”に限られる場合は「噴火警報(火口周辺)」または「火口周辺警報」、“居住地域”までいたるときは「噴火警報(居住地域)」または「噴火警報」となります。

出典:気象庁「噴火警報・予報の説明」

さらに、警報・予報とあわせて「噴火警戒レベル」を運用している火山もあります。居住地域にまで警戒が必要となった場合は「レベル4(高齢者等避難)」「レベル5(避難)」がだされます。

このレベルが示す数値は、大雨や洪水・高潮や土砂災害の危険度をしめす避難情報とは一致しません。気象情報による避難情報では、「レベル3(高齢者等避難」「レベル4(避難指示)」となるので、混同しないよう注意しましょう。

まとめ

今回は火山災害にもつながる「ラハール」について解説しました。

ラハールとは火山泥流(かざんでいりゅう)のことで、噴火によって噴きだしたものが雪などの水分とまざりあい、急速に流れくだる現象です。火山地帯における土石流とも言えます。

土石流をもたらす原因のひとつには大雨があります。大雨がふると土石流への警戒も高まり、天気予報でもたびたび注意がうながされます。

しかし、噴火は大雨のように頻繁におこるものではありません。そのため、火山が身近ではない地域にいると、噴火やそれにともなう危険な現象について学ぶ機会がかぎられてしまうでしょう。

どんな災害もいつおきるかわかりませんが、活火山は富士山をはじめとして日本各地にあります。

本サイト「噴火」タグには、火山用語の解説から富士山の噴火予兆まで、さまざまなテーマをとりあげた記事があります。ぜひ関心のあるテーマについて、掘りさげてみてくださいね。

【参考文献】
*コトバンク|ラハール
*気象庁|主な火山災害
*goo辞書|火山泥流
*箱根ジオミュージアム|2015年の箱根火山の活動について
*仙台管区気象台|火山災害の種類

(以上)

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この記事を書いた人

東北出身&在住フリーライター。
広告代理店・NPO・行政で勤務後、在宅ワーカーに転身。
妊娠中に東日本大震災に遭い、津波から避難・仮設住宅で子育てをする。
本サイトでは「命を守るために知っておきたいこと」「日常に潜むリスクへの備え」などについて発信します。
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